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『道浦TIME』

新・ことば事情

6072「アボー」

(去年=2015年の春に書きかけて、そのままでした)

(2015年)3月の13日から20日まで、永年勤続休暇(勤続30年)を使って、スペインに行ってきました。19年ぶりのスペイン一人旅。スペインに行くのは4度目です。

今回の目的は「バスク地方へ行くこと」。去年(2014年)、バスク語の曲を歌ったこともあったし、前々から、まだ行ったことのないバスクを訪れてみたいと思っていたのです。

マドリードから、特急でなんと7時間40分!昼の12時20分に出て、「サンセバスチャン」に着いたら、夜の8時でした。それから『地球の歩き方』に載っていたホテル(1泊1万3000円ぐらい、一応「4つ星」)に予約なしで行って荷物を置いてから、旧市街へ。200m四方ほどの旧市街には、バルやレストランがひしめいていて、そこのカウンターバーに並んだ、まるで「京都のおばんざい」のような、

「ピンチョス」

と呼ばれる、「カナッペ」のように、スライスされたフランスパンの上にいろんな具材を載せた料理を味わうことができるのです。どれも1つ1ユーロ~1、5ユーロぐらい(130円~200円)。それにセルベッサ(ビール)が1、5ユーロ(約200円)なので、ピンチョスを3つとビールで6ユーロ(約800円)とお手頃。いくつかのバルを「はしご」するのも楽しい。3軒も行けば、お腹も一杯、酔いも回って、それで2000円ぐらいですから、これはもう、うれしいことこの上ないですね。

「サンセバスチャン」の次に訪ねたのは、サンセバスチャンから高速バスで45分のところにある「ビルバオ」。ここでもまたバル巡り。大阪の行きつけのスペインバルで借りた本に載っていた「ピンチョスの有名なバル」を訪ねました。

そこのカウンターでセルベッサを飲んでいたら、隣にいたおじさん(同じ年回りか)が、なんと日本語で話しかけて来たのです。聞けば、今、日本語の勉強をしているそうで、これまで4回、日本にも行ったことがあるとか。偶然!私もスペインは4回目!ということで、片言の日本語と片言のスペイン語で、話が弾みました。

しかしそのおじさん、妹さんから電話がかかって来て、

「ちょっと、行かなくちゃならない。もう少し、ゆっくりしたかったんだけど・・・」

と、名残り惜しそうに、30分程で帰って行きました。なんとその時、私が飲んでいたセルベッサとピンチョスを、おごってくれました!見ず知らずの私のために!

その彼が帰るときに、それまでサンセバスチャン、ビルバオで、客が店を出る時に交わしていた挨拶の言葉を、投げかけました、

「アボー」

標準スペイン語(カスティーリャ語)では、

「アディオス」

ですが、バスク地方の人たちは皆、「アボー」と言っていたのをマネしたのです。フランス語の「アデユー」みたいな感じかな。すると、そのおじさんの瞳・表情が輝いて、

「アボー!」

と手を振って去って行きました。通じたようです。外国の人が日本・大阪に来て、

「オオキニ!」

などと言ってくれると、こっちも「ごっつ、うれしい」ような感じですかね。

実はあれから1年、ことし(2016年)の3月に、そのおじさん=ホアンさんが日本にやって来て、大阪にも寄ってくれて、1年ぶりの再会を果たすことができたのです。これは、うれしかったですね。あの時のお返しに、今度は私がおごりました!何が食べたいかを聞くと、

「タコヤキ・オコノミヤキ」

だと言うので、お好み焼きを食べたのでした。

「言葉」はまさに「コミュニケ―ションの手段」なんだなあと感じました。

(2016、6、15)

2016年6月17日 12:11 | コメント (0)