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『道浦TIME』

新・読書日記 2016_048

『イタリアからイタリアへ』(内田洋子、朝日新聞出版:2016、2、28)

 

 

この著者・内田洋子さんの名前を初めて知ったのは、ロシア語通訳・作家の故・米原万里さんの親友でイタリア語通訳の、「シモネッタ」こと田丸公美子さんの本の解説を書かれていたのを読んで。その昔、田丸さんが通訳として率いたイタリア人観光ツアーで、田丸さんの助手を務めたのが、学生時代の内田さんであったと。つまり田丸さんにとっては「弟子」みたいな存在ですね。その「弟子」が、大学卒業後はイタリアに住んでもう30数年。イタリアの中でも何回か引っ越しはしたようだが、結局「イタリア」から「イタリア」への移動。まさにイタリアの魅力に取りつかれてしまった人なんですね。特にイタリア南部・ナポリの魅力が、先進的な北部イタリアのミラノなどとは違って、本来のイタリアの良さが残っていると。イタリアの都会人であるミラネーゼを始め、北部の人からは"忌み嫌われている南部の人たちの気質"、それが著者にとっては、何よりも心地よいものになっている。

エッセイでありながら、一つ一つがファンタジーと言うか、小説のようなのだ。宮崎駿の「ジブリの世界」にも共通するような話が、珠玉のように綴られている。

21世紀の現代において忘れられた"心のふれあい"が感じられるのだが、でも実際に「そこに住むか?」と聞かれたら、私は「NO」と答えるだろうなと思いながら、本を閉じたのだった。でも、良い本です!

 

 


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(2016、3、19読了)

2016年3月28日 19:50 | コメント (0)