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『道浦TIME』

新・ことば事情

5940「受刑者か?容疑者か?」

 

 

1月8日の「ミヤネ屋」で、メキシコで麻薬組織撲滅を宣言した新市長がその翌日に殺されるという凄惨な出来事を伝えました。その中で、去年夏に「脱獄」した麻薬王の名前の、

「肩書」

をどうするか、Hディレクターに聞かれました。つまり、その「麻薬王・グスマン」は、捕まった牢屋(刑務所)に入っていたのですが、「脱獄」したので、現在は「刑を受けている」とは言えない。だから、「受刑者」という表現は合わないのではないか?というのです。確かに。そこで私は、

「『脱獄』している最中は、刑の執行は停止しているだろうし、『脱獄』という罪を犯して逃げているわけでから『容疑者』でいいのではないか?」

ということで、この日は、

「グスマン容疑者」

とスーパーを打ちました。

ところが、翌日(1月9日)のお昼のニュースを見て驚きました。きのう報じた脱獄囚・グスマンが、捕まったというではありませんか!なんというタイミング!それを報じていた日本テレビニュースでは、

「グスマン受刑者」

と「受刑者」を使っていました。1月10日の読売新聞と共同通信のともにネットニュースでは、やはり、

「受刑者」

を使っていました。ところが、その翌日の1月11日の日本テレビ「ZIP!」の中では、「容疑者」

になっていたのです!また、その日と翌日(12日)のテレビ朝日のニュースは、ともに、

「受刑者」

でした。更に1月12日朝の日本テレビの会議メモでは、

「麻薬王グスマン容疑者 逮捕時の映像公開」

と「容疑者」を使っていたので、東京の「ミヤネ屋」のスタッフに頼んで日テレの「統一見解」を聞いてもらいました。それによると、

「朝の会議メモでは『容疑者』と表現していたが、昼ニュースの原稿から『グスマン受刑者』になっています。今のところ『受刑者』で統一とのことです。(また、逃走したら変わるかもしれませんが)」

うーん、この「脱獄しているときの、脱獄囚の肩書」については、今度の用語会議で、各社の対応について聞いてみたいと思います。

 

(2016、1、14)

2016年1月17日 12:28 | コメント (0)