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『道浦TIME』

新・ことば事情

5761「繧繝縁」

 

ゴールデンウイークも仕事で出勤。

仕事の後は、いつもより少し早く会社を出て、京都国立博物館で開かれていた、

『桃山時代の狩野派~永徳の後継者たち』

という展覧会を見て来ました。屏風などの絵が好きなんです。

その中に、屏風ではなく「掛け軸」の人物画がありました。説明を読んでいたら、

「繧繝縁」

という、とっても難しい漢字が。これで、

「うんげんべり」

と読むそうです。何のことを指すかというと、

「極彩色のついた、畳の縁」

なんです。それを見てすぐに思い出したのは、

「小倉百人一首」

です。あの札を使って遊ぶ、

「坊主めくり」

で、縁にカラフルな色が付いた畳に座っている人物の札が出ると、もう1枚引くことができるんです。その札を指して、我が家では、

「台付き」

と読んでいました。「台付き」って、正式には、

「繧繝縁(うんげんべり)」

と言うのだったのか!とまあ、これだけでも、この展覧会を見に来たかいがあるなあと思いました。

家に帰ってから、「小倉百人一首」を出して来て、一枚一枚見て行って、「台付き」が一体、何枚あるのか数えたところ、全部で、

「9枚」

でした。「台付き」の人の名前で言うと、

「崇徳院、三条院、持統天皇、元良親王、順徳院、光孝天皇、式子内親王、

天智天皇、後鳥羽院」

です。辞書を引くと、「繧繝縁」は、

「三宮(天皇、皇后、皇太后、太皇太后)にしか許されないもの」

なのだそうです。位が高いのですね。

大変、勉強になりました!

(2015、5、28)

2015年5月31日 11:23 | コメント (0)

新・ことば事情

5760「袋はご利用されますか?」

先日、コンビニで聞いた店員の言葉。

「袋は、ご利用されますか?」

違和感がありました。正しくは、

「袋は、ご利用になりますか?」

ですよね。

敬語の形としては、

「ご~になる」「~される」

ですが、これが混ざってしまった「混交表現」なのでしょうね。

そんなことを考えている間に、お会計は終わってしまっていました。

(2015、5、28)

2015年5月30日 21:22 | コメント (0)

新・ことば事情

5759「はるな愛の語尾変化」

 

急に思いつきました。

「はるな愛」さんの語尾の口癖についてです。

はるな愛さんと言うと、相槌を打つときに、よく、

「いるよねー」「するよねー」

と言いますよね。これは、実は、

「いるよなー」「するよなー」

という、

「『男言葉』の語尾の『な』を、『ね』に変えることで、言葉を『中性化』している」

のではないでしょうか?完全に「女言葉」にするには、

「いるわよねー」「するわよねー」

となると思いますが、この場合は、

「『わ』と『ね』の2回、変えなくてはならない」

ですが、

「いるよねー」「するよねー」

ならば、それが「1回」で済みます。

関西弁の語尾「やん」を「じゃん」に変えることで、

「『関西弁』が、簡単に『横浜弁』という『関東方言』にできる」

ようなものではないでしょうか?これは、ローマ字で、

「JAN」

と書いた場合に、これを「ドイツ語読み」すると、

「ヤン」

ですが、「英語読み」すると、

「ジャン」

だというのと似ていますね。

なぜか急に、そんなことを考えてしまいました。

(2015、5、28)

2015年5月30日 18:22 | コメント (0)

新・ことば事情

5758「『否決』と『反対多数』」

 

 ご存じのように5月17日に行われた「大阪都構想の賛否を問う住民投票」で、

「賛成49.6%」「反対50.4%」

で、「反対票」が、賛成票を上回り、

「反対多数」

となりました。これを報じた各紙5月18日朝刊1面の見出しは(大阪版)、

 (読売)大阪都 反対多数

 (朝日)大阪都構想 反対多数

 (産経)都構想「反対」

 (毎日)都構想 否決

 (日経)都構想を否決

と、毎日新聞さんと日本経済新聞さんは「否決」を使っており、他社は「反対多数」でし

た。

また、「テレビ」では、5月18日(月)の放送では、

(TBS)『Nスタ』=「都構想」反対多数で(18時台のニュース)

(CX)決戦敗北で「政界引退へ」1万表の僅差(18時台のニュース)

(NHK)『NEWS 7』大阪住民投票 反対多数(19時のニュース)

と、NHK・テレビ朝日・TBSなども「反対多数」を使っていました。

読売テレビ報道局では、読売新聞大阪本社と話して、

「『否決』は使わないことにした」

とのこと。理由は、

「『否決』(可決)というのは、『議会』で『議案』に対して使われるもので、『住民投票』にはそぐわない」

ということだそうです。

そのあたり、各社は、「住民投票」に「否決を使う・使わない」に関して、何か論議はあったのでしょうか?と、5月21日に北海道・札幌市で開かれた「新聞用語懇談会春季合同総会」で聞いたところ、各社の反応は、以下のようなものでした。

 

→(毎日新聞)大阪本社で議論を重ね「否決」を使った。当初は「反対多数」にしていたが、「否決」のほうが伝わりやすいと判断した。

(日経新聞)東京政治部と大阪社会部で協議した。これまでの「住民投票」は拘束力がなかったが、今回は法的拘束力があった。この結果(決定)により「都構想」の法案が「廃案になる」というイメージを伝えたいと考えたので「否決」を使った。

(読売新聞)見出しは「否決」で作ったが、「否決」では「住民投票」ということが分かりにくいと考えて「反対多数」にした。社内での意見は「反対多数」を使って良かったと。ただ読者からは、「1万票、0,8%の僅差なのに、『反対"多数"』という表現はおかしい!」という意見が十数件届いたのは想定外だった。(「多数」の意味を、読者が理解していなかった。)

(朝日新聞)「否決」「反対多数」どちらも「あり」だが、当日判断で、「住民投票」ということを強調するには「反対多数」が良いという判断。

(産経新聞)大阪本社、見出しは「反対」をカギカッコ付きで使った。議論は特になく、「否決」は使わなかった。「反対」とするのが、一番わかりやすいと考えた。ただし、識者のコメントでは「否決」と言っていたので、それはそのまま直さずに出した。

(秋田魁新聞)共同通信から記事の配信を受けているが、見出しは、「大阪都構想 僅差『NO』」と1面で出した。

(共同通信)「否決」を使った。議論はあったが、以下の3つの理由で「否決」にした。

   住民投票だが、1票でも上回れば「大阪市」が消える決定である。

   究極の民主主義である。

   「否決」というほうが見出しのインパクトが強い。

(熊本日日新聞)共同通信からの記事なので「否決」に。この「住民投票」は、大阪市を解体して5つの特別区にするという「都構想の協定書の賛否」を問うもの。それは「決定力」のある投票なので、「賛成・反対」ではなく、「否決」を使った。

(TBS)テレビは系列のMBSの原稿に従って「反対多数」にしたが、ラジオ原稿は原則「共同通信」の原稿を使うので、「否決」という原稿だった。そこで、「承認」の反対語として「拒否」「否認」「却下」「拒絶」なども考えたが、結局「反対多数」で放送した。

(テレビ朝日)大阪・ABC発の原稿。見出し(スーパー)は「反対多数」で、ナレーション原稿は「反対多数で廃案となりました」。しかし「否決」も間違いではないので、スタジオのトークで出て来ても訂正をしなくても良い、というスタンスだった。

 

この会議の前に、読売新聞大阪本社の井手校閲部長からメールを頂き、それを読んで私ももう一度考えてみました。

従来は、

*「議会の議決」=可決・否決

*「住民投票」=賛成多数・反対多数

という区別がありました。

しかし、結果が「拘束力」を持つものではなかった「従来の住民投票」に対して、今回の「都構想の住民投票」は「投票の結果によって即、法的な拘束力を持つ」という点で決定的に違います。

「法的拘束力持つ」という意味では「議会の議決」と同じだと考えられます。

ですから、「構成員」に着目した場合は、「市民=議員ではない」ので「可決・否決」を用いないが、「決まったことが法的拘束力を持つ」という点に注目した場合は、「直接民主主義における『議決』」と考えて「可決・否決」を用いることもあるのではないでしょうか?

つまり「可決・否決」「賛成多数・反対多数」の、「どちらも、あり」なのではないでしょうか?

今回の住民投票は、本当に色々なことを考えさせてくれました。

(2015、5、28)

2015年5月30日 10:35 | コメント (0)

新・ことば事情

5757「再稼働」

 

5月21日に北海道・札幌市で開かれた「新聞用語懇談会・春季合同総会」で出た「言葉に関する議題」に、

「『再稼働』の定義について」

というものがありました。西日本新聞の委員から出されたものです。それによると、

 

『九州電力の川内原発1号機について、九電は7月にも再稼働を目指す方針を明らかにしています。問題がなければ約2年ぶりに国内の原発が動きだすことになるわけですが、原子炉の起動から発電・送電に至る一連の流れの、どの段階を指して「再稼働」と言うのでしょうか。また「再稼働」と「営業運転」とは、どう違うのでしょうか。』

 

ということでした。これに対する各社の回答は、

 

【時事通信】2012年7月頃は(1)原子炉の起動(2)臨界(3)発送電網接続 の3段階に分けて、(3)の段階を「再稼働」としていた。「試運転」「営業運転」も(3)の段階で出て来る。しかしそれから3年が経って、現在は(1)制御棒を引き抜いて原子炉を起動させることをもって「再稼働」とする。

【朝日新聞】2011年7月の段階では「再起動」=原子炉の起動、「再稼働」=営業運転再開、と取り決めていた。しかし現在は「原子炉を動かすかどうか」に焦点が当たっているので、今年(2015年)4月に見直しを行い、「再稼働=原子炉の起動」に変更した。

【西日本新聞】電事連(電気事業連合会)は、「営業運転=再稼働」と規定している。それとはズレることになるが。

【NHK】科学文化部の原子力デスクに聞いた。マスコミの言う「再稼働」は「原子炉の起動」。「営業運転」は、出力を変えながら検査して、発電所としての認可を受けた段階。

 

日本テレビ系列(NNN)で、つい先日行われた「原発勉強会」の報告によると、

「(3)発送電をもって『最稼働』」

という定義だとのことです。

5月27日お昼の日本テレビ「ストレイトニュース」でも、「川内原発・再稼働」のニュースが出て来ましたが、ここでは、

「原発の起動=再稼働」

のようなニュアンスがあったように感じました。

5月27日の各紙夕刊を見たら、

【読売】「1号機を7月下旬に再稼働し、8月から営業運転」

これは明らかに「再稼働」と「営業運転」は「別物」です。ということは、

「再起動=再稼働」

ということのように見えます。一方、

【日経】1号機が7月下旬にも再稼働する」「九電は7月下旬にも1号機の運転を再開する」

 こちらは、「再稼働」と「運転」が同時期なので、

「再稼働=(営業)運転」

に見えます。ほかの新聞は、

【朝日】「7月下旬に1号機、9月下旬に2号機を再稼働させる方針」

【毎日】「1号機は7月下旬、2号機は9月下旬の再稼働を目指している」

【産経】「1号機は7月下旬にも再稼働する」

この3紙は、再稼働が何を示すのか、この記事の中の文章だけでは明確ではありませんでした。今後もこの基準に、注目していきます!

(2015、5、28)

2015年5月29日 21:27 | コメント (0)

新・ことば事情

5756「ガラホ」

5月21日に北海道・札幌市で開かれた「新聞用語懇談会・春季合同総会」で出た「言葉に関する議題」に、

「ガラホ」

というものがありました。私は始めて聞く言葉ですが、ネット上では、既に結構使われているようです。

これは日経新聞の委員から、

『「ガラケー」「ガラホ」の表記についてお聞きします。2015年4月24日付弊紙朝刊1面アタマ記事「従来型携帯の生産終了」で、初版(11版)は、見出しにカギカッコ付きの「ガラケー」の表記を使いました。次版(12版)以降は「従来型携帯」(カギカッコなし)に変えました。「ガラケー」の表記は自虐的に使われることが多く、賛否両論あるが、幅広い層の読者が読む1面(の見出し)で使うのはふさわしくないとの判断です。OSをアンドロイドに換えて中身は従来型携帯の「ガラホ」の表記も、今後の検討課題だとの声も出ました。現時点で通達等は出しておらず、ケース・バイ・ケースで対応しています。ほかの社では、どのような状況なのか教えてください。』

という質問が出たものです。これに対して各社の回答は、

*(時事通信)「ガラケー」の紙面での初出は2013年9月。「ガラケー」の使用は抑制的にしている。しかし「従来型携帯」はわかりにくい。初出は「ガラケーと呼ばれる従来型携帯電話」と説明を付ける。

*(共同通信)2013年から紙面では20件ほど「ガラケー」が出ている。紙面での初出は「従来型携帯電話」とする。解説記事などでは、説明なく「ガラケー」を使っていることも。かなり「ガラケー」は定着しているのでは?「ガラケー」(ガラパゴス携帯)という呼び方が、"自虐的"とまでは言えないと思う。

 

というものでした。

私(道浦)の観察によると、2015年5月15日付の「読売新聞・朝刊」が見出しで、

「ガラケーにスマホ機能」

というのを使っていました。本記では、

「ガラケー(ガラパゴス携帯電話)と呼ばれる従来型携帯電話に米グーグル社のスマートフォン用の基本ソフト(OS)『アンドロイド』を使った機種を相次いで発表」

「スマホのような独自アプリもある程度使える『ガラホ』と呼ばれる高機能ガラケー」

という表現でした。

グーグル検索(5月20日)では、

「ガラケー」=378万件

「ガラホ」 =193万件

でした。

一緒に出席した萩原アナウンサーとこの話題について話していたら、彼は、

「なぜ『ガラホ』なんでしょうねえ。普通は『ガラスマ』ですよねえ。それか、『ガラパゴスケータイ』が『ガラケー』なら、『スマートフォンのケータイ』なんだから『スマケー』でもいいのでは?」

と言うので、

「『スマケー』だと、『すま けい』、俳優になっちゃうよ!」

と、一応、突っ込んでおきました。

(2015、5、27)

2015年5月29日 16:15 | コメント (0)

新・ことば事情

5755「道浦様のお電話で間違いないでしょうか?」

 

休日に家に居ると、電話がかかって来たので出ました。すると、女性の声でいきなり、

「道浦様のお電話で間違いないでしょうか?」

と言うので、

「はい・・・」

と答えたのですが、案の定、何かの売り込みの電話だったので、すぐに切りました。

そして、考えました。

今の電話の「違和感」は何だったのだろうか?

 

昔。

「固定電話」の時代は、

「道浦様のお宅でしょうか?」

とかかってきました。「電話」は「家(=お宅・会社など)」にあるものと決まっていたからです。

それが、「携帯電話が主流」になったことで、「固定電話」へのかけ方も、

「携帯電話風」

になってきたのではないか?だから、

「電話にかけているのであって、人にかけているのではないように感じるセリフを発するようになったのではないか?」

しかし、これって以前の「お宅」が「お電話」に変わっただけなんですよね。しかし、「お宅」には感じられた、

「そのお宅に住む人=電話の相手への尊敬の念」

が、「お電話」には感じられない気がするのではないかと思います。なぜですかね?

それと、実はさっきのセリフの中の

「~で間違いないでしょうか?」

という言い方も嫌いです。

「だったら、どうした?」

と言いたくなるのは私だけ?

今後、ケータイからスマホに移って、もう「声」を発しないで、「LINE」とか「ツイッター」とか「フェイスブック」とか、

「文字でコミュニケーションを取ることが主流」

の人たちばかりになった時に、「電話」で相手に話しかける言葉は、一体どうなるのでしょうかね?

(2015、5、27)

2015年5月29日 12:32 | コメント (0)

新・ことば事情

5754「『日本人』か『邦人』か?」

 

5月21日に北海道・札幌市で開かれた「新聞用語懇談会・春季合同総会」で出た「言葉に関する議題」で、熊本日日新聞の委員から、

「『日本人』と『邦人』の使い分けについて」

という質問が出ました。それによると、

 

『①2013年1月に起きたのは「アルジェリア"日本人"人質事件」か、「"邦人"人質事件」か。

②昨年から今年にかけて起きた過激派組織「イスラム国」による拘束、殺害事件で、後藤健二さんは「"日本人"人質」か「"邦人"人質」か?湯川遙菜さんは?

③今年3月、チュニジアで起きたテロで殺害されたのは「日本人」か「邦人」か。

④今年3月のドイツ機墜落で亡くなったのは「日本人」か「邦人」か。

海外で日本人が事件、事故に巻き込まれるケースが目立っていますが、その際の各社の記事、見出しなどを見ると、「日本人」を使うか「邦人」を使うか表記の揺れがあるようで、弊社でも紙面編集の度に迷うところです。各社で何らかの基準、指標などがあれば教えてください。』

 

とのこと。これに対する各社の回答は、

 

(共同通信)基準はない。「日本人」と「邦人」は同じ意味。「在留邦人」等の「熟語」はあるが、「邦人=在留邦人」という意味ではない。見出しなどで文字数を減らしたいときに「邦人」を使い、本文では「日本人」としていることもある。

(熊本日日)初版では「邦人」という表記が出て来ることは少ないように思うが。

(共同通信)わかりやすくするために、できるかぎり「日本人」を使う。

(時事通信)「日本人2人、アメリカ人4人、中国人3人、インド人2人・・・」のように複数の国の人が含まれる場合には、「邦人」は不適切、「日本人」とする。見出しは「邦人」でも、記事本記では「日本人」としている。

 

また私も「放送」の立場から発言しました。

『放送では「耳で聞いてわかりやすい」ということを考えるので、「同音異義語」は避ける傾向がある。「邦人」は、「法人」と間違う恐れがある(「海外ホージン」は「海外邦人」「海外法人」、両方ありうる)ので、なるべく使わない。』

「邦人」を使った言葉を検索してみると、「外務省海外安全ホームページ」に、

「海外邦人援護統計」

というのがありました。また、

「一般財団法人 海外法人医療基金」(JOMF)

というのもありました。

この問題は、以前に考えた「国語か?日本語か?」という問題に、ちょっと似ていますね。

「平成ことば事情709 国語と日本語」も、あわせてお読みください。

(2015、5、27)

2015年5月29日 10:31 | コメント (0)

新・ことば事情

5753「奈良・葛城市の『葛』の字体について」

 

5月21日に北海道・札幌市で開かれた「新聞用語懇談会・春季合同総会」の「言葉に関する議題」に、毎日新聞の委員から、

「奈良県"葛城市"の"葛"の字体について」

というものが出ました。それによると、

 

『奈良県"葛城市"は、「油のようなもの」が撒かれた寺の一つ「当麻寺」(旧字で「當」)のある市です。2004年に合併で誕生した市ですが、合併協議会が決めた表記は、下の部分が「匃」では なく、略字の「匂」です。市名を決めた当時は下が「匃」となっている字体が、コンピュータで出しにくいという事情があったのですが、JISの改定や、ウィンドウズのバージョーアップなどによって、今は逆に、下が「匂」の略字の方が表示困難な字体になってしまいました。しかも、2010年の常用漢字表改定で、下が「匃」の「葛」が入りました。市名が決まった当初、市の決めた略字通りに書くという社が多かったと思いますが、たとえば「常用漢字改定」などを機に、常用漢字表の字体に変えた、あるいは変えることを検討しているという社は、ありますでしょうか?放送の字幕表記も含め、対応を伺いたいと存じます。ちなみに毎日新聞では、原則「人」の「葛」を使い用語集もそうなっているが、大阪管内(広島あたりまで)は、市の主張する「ヒ」の俗事の「葛」にしている。関連でお尋ねします。兵庫県「宝塚市」 は、行政上は「塚」の「つくりテン」のある「冢」なのですが、その「旧字通り」に表記している社は、おありでしょうか。

「宝塚」の「塚」は、1954年市制施行時は「、」の付いた「塚」でしたが、1981年に「、」のない「塚」が常用漢字となったので、そのタイミングで毎日新聞は「、」のない「塚」に変えたと思います。』

 

とのことでした。各社からの回答は、

 

(NHK)神戸放送局は「、」の付いた「塚」を使っており。神戸放送局発の全国ネットニュースにも「、」が付いてると思う。ただし「宝塚歌劇団」は「、」がない。駅名も、ない。

「葛城市」は「ヒ」でやっている。

(新聞協会・用語コンサルタント)「葛城市」のサイトには「当時は正字がパソコンで出せなかった」として、どちらの字でも良いような感じで書いてある。

「宝塚市」は、市の名前は「、」があるが、駅の名前も公民館も「、」がない。

 

そこで「葛城市」のサイトを見てみたら、確かにトップページの「葛城市」は「ヒ」で書いてありますが、中を読むと「人」の「葛」も混在しています。

また、「宝塚市」のサイトの「よくある質問」に「市名の『塚』の『ヽ』について」というのがありました。それによると、

『宝塚市の「塚」は、宝の埋まった塚が有ったという、地名の由来から、固有名詞として宝塚市を正式名称としています。昭和2941日に宝塚町と良元村が合併して市制を施行しましたが、宝塚市の「塚」は「ヽ」のあるものを正式文字としていましたが、昭和56年に常用漢字に入った「塚」は「ヽ」のない「塚」であったため、「ヽ」のない「塚」も使用していました。しかし、宝塚市では昭和60年に「ヽ」のある「塚」を正式文字として使用することに統一し、宝塚市役所において使用する市長印等の公印や、発行する証明書等の書類においては、「ヽ」のある「塚」を使用することとしております。

ただし、市民の皆様から提出される書類等での表記は、いずれのツカの字でも受け付けしております。また、宝塚市のホームページでは、ユーザーパソコンとの互換性の問題から例外的に「ヽ」のない「塚」を使用しているものです。』

とのことです。

引き続き、他社の回答は、

 

(朝日新聞)俗字の「ヒ」の「葛城市」でやっている。

(西日本新聞)鹿児島県の「薩摩川内市」の「薩」の字も、「産」の上のところが「立」なのか「文」のようにクロスしているのか?という字体の問題がある。西日本新聞では、南日本新聞さんが「立」を使っているので、それに合わせている。

 

これも鹿児島県の「薩摩川内市」のサイトを見てみると、トップページの市の名前は「立」ですが、その一番下の「住所」のところの「薩摩川内市役所」の「薩」字体は「文」となっていて、混在していました。

 

(毎日新聞)「文」のほうの「薩」にしている。

(NHK)現地の放送局に合わせるのが原則。(現地の放送局は、地元自治体に合わせている。)鹿児島放送局に合わせて「立」のほうの「薩」にしている。

(熊本日日新聞)数年前に「文」のほうの「薩」に統一した。これはJRの「肥薩線」(現在は「肥薩おれんじ鉄道」)が「文」のほうを使っていたので、それに合わせた。

(産経新聞)JR東海の「葛西敬之(よしゆき)名誉会長」の字体に関しては、平成15年(2003年)10月24日に通達があって「『ヒ』の『葛』を使ってください」ということになっている。また、埼玉県の「蓮田市」の「蓮」は、もともとは「2点しんにょう」だったのが、条例で「1点しんにょう」に変えた。岐阜県の「飛彈市」の「彈」は、上の部分が「口2つ」の正字だが、「ツ」の形もある。原稿では「ツ」の「弾」がよく出稿されるが、全部「口2つ」の「彈」に直している。

 

これも岐阜県の「飛彈市」のサイトのトップを見ると、「市名」は「口2つ」の「彈」ですが、やはりサイト内には「ツ」の「弾」も使われていました。

 

(共同通信)「ツ」のほうの「弾」で「飛騨市」としている。

(朝日新聞)宮城県の「塩竈市」も、正式には正字の「竈」だが、簡単な「釜」を使って書いている。ただし「どうしても『竈』を使ってほしい」という会社がある(「塩竈港運送」という会社。日通系。)ので、そこだけは、『竈』を使っている。

(新聞協会・用語コンサルタント)2009年の関東幹事会で「塩釜」とすることに決めた。

 

というように、活発な意見交換が行われましたが、その中でも特に私が気になったのは、

「塩竈市」

です。この「竈」は正字(旧字)ですが、「塩」は略字(新字)です。

なぜ片方だけ「正字」なんでしょうかね?

「塩」の正字(旧字)は「鹽」です。つまり「正字」を主張するなら、両方とも「正字」にして、

「鹽竈市」

としたらいいのになと思うのですが、でも、もし両方「正字」で書くとなると、めちゃくちゃ書くのが難しいですけど。

(2015、5、27)

2015年5月28日 21:29 | コメント (0)

新・ことば事情

5752「機雷掃海」

 

5月21日に北海道・札幌市で開かれた「新聞用語懇談会・春季合同総会」で出た「言葉に関する議題」に、西日本新聞の委員から、

「機雷掃海」

という言葉が挙がりました。それによると、

『安保法制を巡る議論で「ホルムズ海峡の機雷掃海」がしばしば取り上げられますが、言葉の使い方に若干、疑問があります。「掃海」とは海中の敷設機雷、浮遊機雷などを取り除く作業のことであり、「機雷」は不要だと思いますが、「機雷掃海」としているのはなぜでしょうか。「掃海」がなじみのない言葉であること、また国会の論戦などで「機雷掃海」と言われるためでしょうか?』

というもので、これに対して産経新聞の委員から、

『「大辞林・第3版」=機雷など水中の危険物を取り除くこと。「デジタル大辞泉」=機雷や不発弾などを水中から取り除くこと、とある。自衛隊の掃海隊のHPには「機雷や水中爆発得物を取り除くこと」とあり、これらから考えると、「掃海」は「機雷のみ」を取り除くとは言えないので、「機雷掃海」としても、重複にはあたらないのではないか?』

という意見が出て、各社、概ねそれと同じというような態度・雰囲気でした。

会議では、この件に関して私は発言しませんでしたが、5月14日の安保法制の会見を見ていたら、安倍首相も、

「機雷掃海を行っています」

と「機雷掃海」を使っていましたし、同じく14日のNHKの夜7時のニュースでは、

「機雷の掃海という後方支援が出来ます」

というように「機雷掃海」を使っていました。

5月20日のグーグル検索では、

「機雷掃海」=13万2000件

「掃海」  =42万9000件

でした。また、5月27日付の「読売新聞・朝刊」1面トップの見出しは、

「機雷掃海 海外派兵の例外」

とあり、リード部分でも、

「自衛隊が行う機雷掃海について」

と、「機雷掃海」を使っていました。手元の国語辞典で「掃海」を引くと、

*「機雷敷設のおそれのある海域を捜索し、処分あるいは除去する作業」(精選版日本国語辞典)

*「海中に敷設された機雷を取り除き安全にすること」(新明解国語辞典)

*「海中に敷設された機雷を取り除くこと」(新潮現代国語辞典)

*「機械水雷が敷設してある海面や海中をさらって、安全にすること。」(岩波国語辞典)

*「海中の敷設機雷・浮遊機雷などを取り除いて公海の安全・自由にさせる作業」(広辞苑)

*「海中を捜索して機雷などの危険物を取り除くこと」(明鏡国語辞典)

*「航路の安全を確保するため、海中に敷設された機雷や不発爆弾などを捜索して除去すること」(デジタル大辞泉)

*「海の中の機雷などを取り去ること」(三省堂国語辞典)

という具合に、ちょっと古めの辞書は「機雷」と"限定"していますが、新めの辞書は「機雷など」と「など」を使って含みを持たせてあるようです。

それにしても、「機雷」は「機械水雷」の略語だったとは知りませんでした。

(2015、5、27)

2015年5月28日 18:28 | コメント (0)

新・ことば事情

5751「さんか?君か?」

 

5月21日に北海道・札幌市で開かれた「新聞用語懇談会・春季合同総会」で出た「言葉に関する議題」に、

『「君」「さん」の使用について』

というものがありました。共同通信の委員から出たもので、

 

『最近、殺人被害者となった中学1年生の少年に「君」ではなくて「さん」を使ったケースがありました。弊社の記者ハンドブックでは、敬称については原則として「氏、さん、君、ちゃん」を使うとし、子どもについては「『君』は高校生以下、『ちゃん』は主として小学校入学前、小学生でも事件の被害者や特別なケースでは適宜『ちゃん』を使用してよい」としているだけで、特に厳格な決めはしていません。最近は、高校生など「君」ではなく「さん」を使うケースが増えているように感じますが、被害者感情、あるいは男女の扱いを平等にするなどの観点から「さん」が増えているのかとも推察します。「君」「さん」の使用についての基準について、各社のお考えをうかがいたいと存じます。』

 

ということでした。これについての各社の回答は、

(NHK)「さん」を使った。最近は「高校生男子」は「さん」を使う傾向がある。

(TBS)現状は「小・中・高」は、男子が「君」、女子が「さん」。(小学校低学年では「ちゃん」も使う)しかし最近、小学校(の授業)では、男女とも「さん」と呼ぶことが増えているので、近く検討会を開いて新しい基準を決める予定。

(北海道新聞)2003年以降、定型は、男女とも「さん」。

 

という感じでした。

古いデータを探していたら、「2003年9月」の「用語懇談会放送分科会」のメモが出て来ましたので、ちょっと、ここに載せておきます。

 

*「さん」と「ちゃん」の呼称の基準は?→各社バラバラ。

(テレビ朝日)「さん」は小学4年生以上

(TBS)「さん」は、中学卒業以上と小学5~6年の女子

(NHK)「さん」は未成年。「ちゃん」は学齢前。ただし、痛ましい事件では、小学生にでも「ちゃん」を使うことがある。現在、「ちゃん」と「くん」を男女で使い分けることに関して、ジェンダーの立場から見直しの声も上がっている。

(フジテレビ)3歳まで「ちゃん」、4歳から男の子は「くん」女の子は「ちゃん」。10歳以上は「くん」か「さん」。

(日本テレビ)小学生になるまでは「ちゃん」、小学生からは「さん」。

 

今から12年前に既にNHKは「ジェンダー」の立場から「ちゃん」と「君」の男女での使い分けの見直しについて声が出ていたのですね。

なお、読売テレビの報道で聞いたところ、日本テレビ系列(NNN)では以前から「くん」と「ちゃん」の「目安」について、こう定めているそうです。

 

【男子】

・小学校入学前=「ちゃん」

・小学校入学後=「くん」

・11歳以上 =「くん」

・中学・高校 =「くん」※相手がどう呼ばれるのが自然かによって「さん」もあり

【女子】

・小学校入学前=「ちゃん」

・小学校入学後=「ちゃん」

・11歳以上 =「さん」

・中学・高校 =「さん」

 

思うに、「ちゃん」「君」「さん」の使い方は、

「対象者との心理的距離」

によるのではないか?

放送では、相手へ敬意をもって接するので、基本的には「さん」を使うが、

*「相手殿距離が近い時=親しみを持つ」→「ちゃん」「君」

*「ある程度相手と離れている=客観的」→「さん」

を使うと。つまり「どういうスタンスで報じるかによってその選択は変わるので、ある程度の「目安」はあっても、結局は、

「ケースバイケース」

になるのではないでしょうかね?

ちなみに、きょう(5月27日)に気付いたのですが、日本テレビ『ZIP!』の人気コーナー「MOCO'Sキッチン」で、ナレーターの女性アナウンサーが、速水もこみちさんに話し掛ける時の呼びかけが、以前は、

「もこみち君」

だったので、いつの間にか、

「もこみちさん」

に変わっていました!なんで???いつから???

(2015、5、28)

2015年5月28日 16:25 | コメント (0)

新・ことば事情

5750「大きな荷物を抱えた人たち」

 

ゴールデンウイーク最終日のきょう(5月6日)、「Uターンラッシュ」がピークを迎えています。お昼のニュースは、各地の空港や駅の混雑の様子を報じていました。その中でテレビ朝日系列のニューで北海道・新千歳空港から中継していた男性アナウンサー(?)は、

「大きな荷物を抱えた人たちで」

と言っていました。しかしよく見ると、空港で大きな荷物を運ぶ人たちは、決して、

「抱えてはいなかった」

のです。大体、

「キャスター(車輪)付きのスーツケース」

を転がしているか、

「カートに荷物を積んで」

それを押して移動していました。

その後、千葉・成田空港から中継していた女性記者(?)は、

「おみやげなど、大きな荷物を持った人たちが」

と言っていました。「持った」ならば、「抱える」よりは、

「どんな形態あれカバーできる、より広義な表現」

に思えました。

しかしその後、スタジオの女性アナウンサーが読んだ成田空港の様子の原稿は、また、

「おみやげなどを抱えた人たち」

「抱えた」になっていました。

正午のニュースでNHKの大阪局からの、関西国際空港に帰国した人たちの様子を伝えたニュース原稿は、

「大きなスーツケースや、みやげ物をカートに載せた人たち」

という表現で、「一番、事実を忠実に描写した表現」のように思いました。直接的ではありますが。

「昔はみんな、『大きな荷物を抱えていた』」

のでしょう。また、鉄道の駅であれば、「カート」は使わないでしょう。しかし、ここ10年から20年で、

「キャスター付きのスーツケース」

が、ビジネスマン以外にも普及し、空の旅以外でも使われるようになった。しかも働く女性が増えたことで、出張などの際に、男性よりも非力な女性がこの「キャスター付きスーツケース」を使うようになった。大きさも、それこそ1泊~2泊用から1週間以上のものまで様々あって、値段もお手頃になってますからね。女性が使っているのを見て、男性も使うようになったのではないでしょうか。あ、もしかしたら、

「パイロットやキャビンアテンダント」

が使っているのを見て、

「カッコイイし、ラク」

ということで、飛行機での出張をする女性が取り入れたのかもしれませんね。

この手のニュースの場合は、ついつい安易に、

「常套句」

に頼ってしまいがちですが、よく考えて「忠実に表現」したいものですね。

(2015、5、27)

2015年5月28日 10:53 | コメント (0)

新・ことば事情

5749「サラダ油2」

 

2007年8月17日に書いた「平成ことば事情2961サラダ油」の続報です。

「サラダ油の『油』は、『あぶら』か『ゆ』か?」

8年前は、辞書での取り扱いは、

(☆は意味の中に書かれているもの。★は空見出し、それ以外は見出し)

【サラダオイル】日本国語大辞典、大辞林、三省堂国語辞典、日本語新辞典、岩波国語辞典、明鏡国語辞典、新明解国語辞典、NHK日本語発音アクセント辞典、広辞苑☆

【サラダゆ】日本国語大辞典、大辞林★、三省堂国語辞典☆、新明解国語辞典☆、広辞苑

【サラダあぶら】=なし

 

【植物ゆ】日本国語大辞典、大辞林、三省堂国語辞典、日本語新辞典、岩波国語辞典、明鏡国語辞典、新明解国語辞典、NHK日本語発音アクセント辞典、広辞苑

【植物あぶら】=なし

 

【オリーブオイル】日本国語大辞典☆、大辞林☆、明鏡国語辞典、新明解国語辞典☆、

【オリーブゆ】日本国語大辞典、大辞林、三省堂国語辞典、日本語新辞典、岩波国語辞典、新明解国語辞典、NHK日本語発音アクセント辞典、広辞苑

【オリーブあぶら】=なし

 

ということで、そのほか、さらに1年前の「2006年7月7日」の新聞では、

「日経(夕)」=サラダオイル

「読売(夕)」=サラダ油(読み方はなし)

でした。同じく「2006年7月10日」の読売テレビ『ニュース・スクランブル』では

「サラダあぶら」

と記者が言っていました。

グーグル検索では(2007年8月17日)、

「サラダ油」  =146万件

「サラダオイル」= 15万件

「キャノーラ油」=  6万0200件

でした。

 

さて、8年たった「2015年5月12日」のNHK「あさイチ!」では「サラダ油」を、

「サラダユ」

と読んでいました。(これが新しい情報です。)

グーグル検索してみましょう。(2015年5月13日) △=増、▼=減

「サラダ油」  =120万件(▼26万件)

「サラダオイル」= 38万2000件(△23万3000件)

「キャノーラ油」= 33万5000件(△27万4800件)

「キャノーラオイル」=3万4500件

でした。「キャノーラオイル」も、新たに引いてみました。

これを見ると、8年前より「サラダ油」が減り、その分「サラダオイル」が増えています。

と同時に「キャノーラ油」も増えていますね。

「サラダユ」か「サラダあぶら」かで悩んでいる間に、「サラダオイル」がトップを奪ったと。そういうことですかね?

(2015、5、13)

2015年5月27日 23:27 | コメント (0)

新・ことば事情

5748「今シーズン」

 

大相撲夏場所は、照ノ富士の初優勝、大関昇進も決まりましたが、うちの家族が応援しているのは、大阪出身の「勢」関です。

去年は「初三役(小結)」まで行きましたが、上位と当たるとなかなか簡単には勝てません。今場所は東の「十枚目」ということで、

「これは結構、勝てるのではないかな」

と思っていたら、やはり調子が良く、10日目には「勝ち越しまであと1つ」という「7勝目」を上げました!「7勝3敗」です。

やはり「勢関」のファンである妻に、

「きょう、勝ったで!7勝目!」

と伝えたら、既にそのニュースを聞いていたのか、こう答えました。

「そやねん、今シーズン、調子ええねん。」

あのー、大相撲には、

「今シーズン」

ってえのは、ないんですけど、、、野球やサッカーじゃないんだから。普通は、

「今場所」

って言うんですけど。

そんな、「相撲に詳しくない人」でもファンになる「勢」関、最後は、ちょっと残念でしたが、それでも2ケタの「10勝」を上げることができました!

名古屋場所も期待してるよ!

(2015、5、27)

2015年5月27日 21:23 | コメント (0)

新・ことば事情

5747「白いブラックサンダー」

5月21日~22日、用語懇談会の出張で札幌に1泊2日で行ってきました。本当に会議だけで、観光も何もせずに帰って来たのですが、肌寒かったです。

帰りの新千歳空港で見つけたお土産が、

「白いブラックサンダー」

あの体操の内村選手が「大好物」と言って注目を浴びた「ブラックサンダー」というチョコレート菓子を、

「ホワイトチョコレート」

でコーティングした甘いお菓子ですが、当然、私の興味は「ネーミング」です。

もちろん、わかっていて付けた名前でしょうが、

「白か黒か、どっちやねん!」

と、絶対に「ツッコミ」が入る名前ですねえ。そこが「お土産」にもいいんでしょうけどね、話題になりますからね。まんまと策にはまり、買って帰りました。

(2015、5、27)

2015年5月27日 18:14 | コメント (0)

新・ことば事情

5746「一夜明け会見」

 

大相撲夏場所で初優勝を果たした、照ノ富士関。優勝の翌日の会見の模様を伝えてテレビ朝日のお昼のニュースで、女性アナウンサーが、こんなアクセントで読んでいました。

「イ/チヤアケカ\イケンヲ オ/コナイマ\シタ」

違和感、あるなあ。つまり彼女は、

「一夜明け(イ/チ\ヤ ア/ケ)、会見を(カ/イケンヲ)行いました(オ/コナイマ\シタ)」

と読むべきところを、

「一夜明け会見(イ/チヤアケカ\イケン)」

という「複合語」を作り(?)「一語で」読んでしまったのです。

単なる「うっかりミス」とも言えますが、その背景には、

「何でもかんでも『一語=名詞』にしてしまう傾向」

があるのではないでしょうか?

もしかしたら、「業界の専門用語」として「一夜明け会見」という言葉があるのかもしれませんが、それを一般のニュースで使うことは、戒めるべきです。

意味を考えて、より伝わりやすく説明する意識を持たないといけないなと改めて思いました。

(2015、5、25)

2015年5月27日 10:28 | コメント (0)

新・ことば事情

5745「モンペ」

 

ツイッターを読んでいたら、こんな文章が。

「モンペになりたくない」

そりゃあ、今どき「モンペ」を穿いたりはしないだろうと思って、その後の文章もよく読んでみたら、なんと「モンペ」とは、

「モンスターペアレント」

のことだったのです!そんな略し方、するのか!?

まあ、「モンスター」の「モン」と、「ペアレント」の「ペ」だというのは、説明されれば気付きますが。最近のケータイゲームなどにも、この手の略し方があるようですね。私は、「モンペ」が略語と聞いても、

「モンペリエ」

かと思いました。

グーグル検索(5月25日)では、

「モンペ」=47万4000件

「もんぺ」=42万7000件

「モンペ、モンスターペアレント」=4万4000件

「モンペ、衣服」=1万6500件

「モンペ、モンペリエ」=4050件

でした。

(2015、5、25)

2015年5月25日 11:18 | コメント (0)

新・ことば事情

5744「ドローン」

 

「2014年4月」の新聞用語懇談会放送分科会で、現在の「ドローン」に通じる、

「無人機」「無人飛行機」

という「くくり」で話し合っていた記録がありました。これは「ヘリコプタータイプのドローン」ではなく「飛行機の形」をしたものなので、「無人機」「無人飛行機」が妥当だと思いますが、あれから1年で、事態は現在のようなことになったのだなあと、ちょっと感じ入りました。

*******************************【2014年4月 新聞用語懇談会放送分科会】

★「無人航空機」について(ytv道浦)

 北朝鮮の物と見られる「無人機」が韓国国内で見つかった件で、「無人機」「無人航空機」

という表記が見られましたが、あの模型飛行機のようなものを「航空機」と呼べるでしょ

うか?辞書を引くと「航空機」は、「人や物を運ぶ飛行機」というように記されているので

すが、「無人」でも「航空機」でしょうか?

→(MBS)「無人機」「無人偵察機」。

(ABC)「無人偵察機」「無人飛行機」。「物を運ぶのが航空機」と言うのなら、一応「カメラを積んでいる」が。これとは別で「無人攻撃機」というのもあった。

(テレビ大阪)「無人機」。

(KTV)「航空法」では「人が乗っている」のが「航空機」。でも、大きな物であれば「無人航空機」も「あり」では?国交省は「無人航空機」という表現を使っていた。

(TBS)「無人機」「無人偵察機」。

(共同通信)「新聞向け原稿」は「無人機」、「放送向け原稿」は「無人飛行機」。しかし、「無人航空機」は使わなかった。

(読売新聞)「無人機」。小さな物だったので「無人航空機」はなじまない。が、「無人航空機」というのは「有人航空機」の対語として「無人」を強調しているのではないか?

(NHK)「無人機」を使い、「無人航空機」は使わなかったが、過去の原稿では、ネット書籍販売の「アマゾン」が配達に「無人飛行機」を使うという原稿があった。過去のデータベースでは「無人航空機」=7件だった。また、「日本産業用無人航空機協会」という「農薬散布の飛行機」の業界団体があるようだ。

(日本テレビ)カメラを載せているので「無人航空機」を使った。これは実は元の原稿が「現地・韓国の原稿」で、そこでは「無人航空機」となっているので、それに従った。

****************************************

「ドローン」は、先日の首相官邸の屋上に落ちたことで、一気にメジャーになりましたが、今年の「流行語大賞」でも、候補に入るのではないでしょうか?

 

なお、5月16日の朝刊では、

(日経)「小型の無人飛行機『ドローン』」

(読売)「小型無人機『ドローン』」

という表現でした。

 

 

(2015、5、18)

2015年5月18日 19:29 | コメント (0)

新・読書日記 2015_076

『本が多すぎる』(酒井順子、文春文庫:2014、6、10)

 

「2015読書日記075」で書いた(読んだ)『本で床は抜けるのか』(西牟田靖)に続いて読んだのが、この本。いやあ、本好きは悩んでいますよ!(本当は、「本が多すぎる」→「本で床は抜けるのか」のほうが、きれいな順番でしたが)

「週刊文春」で連載している書評、それをまとめたのが本書なので、タイトルがこうなったのだろう。つまり「書評するには本が多すぎて!」というある意味「うれしい悲鳴」なのかも?

2005年4月から2013年11月までの分が載っているので、まさに「クロニクル」として「時代を読む」ことにもつながる。つながっているここ10年・・・。538ページもある分厚い文庫本は、たっぷりと楽しめる。

表紙を見ると、英語でもタイトルが付いていて、

Lost in  the  Forest  of  Books

と記されていた。つまり、

「本の森で迷子」

ですね。

困ったなあ、この本を読んだことで、また読みたい本が増えちゃったよう・・・。


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(2015、5、5読了)

2015年5月14日 16:25 | コメント (0)

新・読書日記 2015_075

『本で床は抜けるのか』(西牟田靖、本の雑誌社:2015、3、10第1刷・2015、4、20第3刷)

 

読書家とか、仕事で本が必要な人とか、愛書家とか、とにかく本好き・本が必要な人が困るのが、「本を置く場所」。経済的・物理的制約で「限られた場所」に、いかに多くの本を収納するか?が、いつも課題になります。これは、本当は「断捨離」、つまり「捨てる」しかないんですよね。私もこれまで何度も苦労して来ました。引っ越しの度に、何千冊か処分して来ました。でも大人になってからは、そんなに何度もは引っ越してないから、本はたまる一方。12年前に今のマンションに引っ越した際に、当時は私の書斎だった部屋(今は、息子の勉強部屋。トホホ)の両側の壁の天井まで造り付けの本棚を設置し、数千冊収納できるようにした。「これで大丈夫!」と思っていたのに・・・なんで本って、あんなに増えるんでしょうか?ネズミ算式に増えますよね!?

まあ、年間に読む本が200冊として、購入しているのは、恐らくその倍はあるから、毎年600冊ぐらい増えるんですよ。捨てるか、古本屋さん・ブックオフとかの新古書店に持って行くか、人にあげるか、実家に置くか。でも手を離れると、なかなか見られないし。目の届く範囲に置いておきたい。

本書を読んでいて、「ああ、みんな、同じ悩みを抱えているんだなあ」と思いました。

著者が参考にしている「本がいっぱいで困る」といったテーマの本、私もほとんど読んでいました。そんな本を読んでいるから、本が増えてしまうんだあ!と自分で自分に突っ込みつつ。

この本では、いわゆる「自炊」、すなわち本を裁断してスキャナーで取り込んでデジタル化してしまい、物理的スペースを限りなくゼロにする方法も試しているし、試した方の話、業者の話も出て来ます。

本と闘い、仕事をしているうちに、なんと著者は奥さんから「三下り半」を突き付けられてしまう・・・「私と本、どっちが大事なの!?」と奥さんから突き付けられる恐怖・・・その意味では、この本は「サスペンス」の分野であるとも言える。こないだ見た映画「ゴーン・ガール」に通じる感じも、ちょっとしました。


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(2015、5、5読了)

2015年5月14日 11:24 | コメント (0)

新・読書日記 2015_074

『アマチュアオーケストラに乾杯!~素顔の休日音楽家たち』(畑農敏哉、NTT出版:2015、4、30)

 

著者はフジテレビの人で、数年前に用語懇談会でご一緒した。北京やカイロの特派員も務めたということで、経験も豊富、博識の人。たまたまツイッターをやっていて、「あれ?畑農(はたの)さんだ!」と気づき、フォローしていると、大体「つぶやき」はご自身の趣味のオーケストラ・クラシック音楽関係の話。コントラバス奏者で、今はなんと指揮もされるということで、すごいなあと思っていたら、今度はなんと、本を出されたということで、急いで買い求めました。

いきなり、文章を褒める前に言うのは何ですが、イラストがほのぼのしていて良いです。

内容は・・・、私も合唱をやってる関係で、オケ関係の方との交流が「なきにしも非ず」なので、読んでいると「うんうん、よく分かる」ということが多く、共感できました。

でもこれって、遣っている人は「わかる」けど、やってない人は、全く興味がないような感じで、読者のターゲットはどの辺りなのだろうか?と、ちょっと思ってしまいました。同じようにアマチュアオーケストラをやっている人たちに読んでもらって"情報共有"という感じなんですかね?それとも、オケはやっていないけど、クラシック音楽に興味がある人がターゲットなのかな?

現在の日本のアマチュアオーケストラ界の現状と、それに取り組む人たちの素顔、またまた、どんな曲が人気で演奏されているか、楽器の特徴やその奏者の性格・傾向(そういう本もありましたね、読んでないけど買った)、演奏会を開くまでの準備・手順まで、まさに至れり尽くせりで、盛りだくさんに記されている一冊。

最後には、アマチュアオケ界の未来と課題、提言まで!

でも、こんなにオケに没頭していて、お仕事は大丈夫ですか?と、ちょっと心配になるぐらい、ハマってますね!そういう人が書いた本は、面白いですよ!素人にもわかりやすく説明してくれてます。「そうだったのか!アマチュア・オケって!?」という感じですね。


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(2015、5、7読了)

2015年5月13日 22:57 | コメント (0)

新・読書日記 2015_073

『ヘンな論文』(サンキュータツオ、KADOKAWA:2015、3、25)

 

去年の2月に三省堂本店で行われた『三省堂国語辞典・第7版』出版記念のトークショーに、辞書編纂者の飯間浩明さんと一緒に出演されていたのが、著者のサンキュータツオさん。不勉強でお名前を存じ上げなかったが、早稲田の大学院を出られて、現在は筑波大学で教鞭をとりながら「芸人」をしているという、ちょっと変わった方。あんまり関西の方では出演されていない感じだが、関東ではラジオやイベントなで引っ張りだこの芸人さんである。

そのタツオさんが、いろんな「論文」に目を通しているうちに、

「客観的に見ると(専門家以外=普通の人が見たら)ちょっと変わった論文だなあ。論文って、こんなにおもしろいものでも良いの?」

というものをピックアップして、紹介してくれる。

全部で13本の「ヘンな論文」は、「『世間話』の研究」「公園の斜面に座る『カップルの観察』」「『浮気男』の頭の中」「「あくび」はなぜうつる?」「『コーヒーカップ』の音の科学」「女子校生と『男子の目』」「『猫の癒し』効果」「『なぞかけ』の法則」「『元近鉄ファン』の生態を探れ」「現役『床山』アンケート」「『しりとり』はどこまで続く?」「『おっぱいの揺れ』とブラのずれ」「『湯たんぽ』異聞」の13本です、ウンガ、ググ。(サザエさん風に)

これらの論文を、タツオさんがツッコミを入れながら紹介していくのだが、まあ、文字で書かれた「探偵!ナイトスクープ」ですね。面白くないはずがない!

とりあえず「『世間話』の研究」から読み始めたのですが、目次を見たときに「おもしろそう」と思ったのは、「『おっぱいの揺れ』とブラのずれ」。でも、すぐにそれから読んだら、ちょっと恥ずかしいので、まずは「世間話」でお茶を濁して。。。2番目に読みました。まさに「そうだったのか!」の論文ですが、「ワコール」とかでは当然、やってることなんだろうなあ。そのあと「元近鉄ファン」も興味深い。まさにこれこそ、「そんなことが、論文になるの?」ってことですけどね。そして「女子校が共学になった」ことで、男子が入って女子生徒はどう変わったか?に着目した「驚愕の共学効果」とは!?そして一番、興味深かったのは、大トリに控えた「湯たんぽ」の研究。人間の「サガ」というものを考えさせられました。

著者は「ヘン」と言っていますが、その「ヘン」なところこそが「個性」であり、そういった「個性」を、著者がこよなく愛していることが、よく分かりました。


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(2015、5、6読了)

2015年5月13日 17:55 | コメント (0)

新・読書日記 2015_072

『辞書編纂者の、日本語を使いこなす技術』(飯間浩明、PHP新書:2015、5、1)

 

『三省堂国語辞典』の編纂者・飯間浩明さんの最新刊。丁寧な御手紙付きで送って頂きました。ありがとうございます。三浦しをんさんの『舟を編む』以来、脚光を浴びている「辞書編纂者」という仕事。

私も「日本語を使いこなす」仕事をしてはいますが、飯間さんのようなこういった本は書けないなあと、いつも思うのです。「使いこなすこと」がある程度できても、「どうやったら、できるのか」を説明するのは、大変難しい。何かをできる人が「教えるのが上手とは限らない」というのは、例の長嶋茂雄さんが、「ホームランを打つコツ」を、

「球がバーッと来たら、ギュッと腰を入れて、ブンと振り抜く」

と説明したように(たしか、そんな感じだったと思う)本人は分かっていても、相手には伝わりにくいものなんですね。それほど"普通"にしたらできる人が、その"普通"のことを"普通にはできない人"に伝えるのは、難しいんですよ。

飯間さんは、まず「コミュニケーション~相手との距離を近づけることば」で、「ことばづかい」は「ハートの問題」「相手への気遣い」が「ことば」に表れるのだと説きます。そして、その「気遣い」がちゃんと伝わるためには、どうすればいいか、「確かに伝える方法(を考える)」を教えてくれます。この第2章が、この本の「キモ」ですね。少しだけ紹介すると、「簡単な言葉で表現する」「『絵』が浮かぶ表現を考える」「『しかし』を使うのをやめてみる」「程度表現をうまく使い分ける」「反対語を意識して考えよう」など、アナウンサーの新人訓練にも使えそうなワザが、たくさん書かれています。特に意識せずに、私たちもやってたりするんですけどね。「無意識」を「意識化」するのは難しいのです。

その後、第3章・第4章では「ことばを蓄える~知って、調べて、味わう」「ことばと知識~もっと掘り下げて考えるために」。これは私もいつも言っていることなので、共通した意識です。結局は「考える」ことが大切だと思いました!

あ、それで評価の☆が、なぜ「5つ」ではなく「4つ半」かって?それは、「あなたの作品の中で、最高傑作はどれですか?」と聞かれた「チャップリンの言葉」と同じですよ。

期待を込めて、

「次回作だ」

ということで、次回作も期待しています!

 


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(2015、4、24読了)

2015年5月13日 13:54 | コメント (0)

新・読書日記 2015_071

『超明解!国語辞典』(今野真二、文春新書:2015、3、20)

 

結構、タイトルは軽い感じで、今野先生の本としては読みやすそうな感じ、と思った。帯には、7種類の国語辞典の背表紙の写真が並んでいる。「集英社国語辞典」「岩波国語辞典」「三省堂国語辞典」「明鏡国語辞典」「新明解国語辞典」「新撰国語辞典」「角川必携国語辞典」の7種類だ。私が持っている(使っている)のは、このうち「岩波国語辞典」「三省堂国語辞典」「明鏡国語辞典」「新明解国語辞典」「新撰国語辞典」の5種類であるから、大体、特徴は分かっているつもり。帯の文字は、

「7つの辞典 計53万語を 辞書探偵がとことん調査する!」

「辞書探偵」は「赤字」で強調されています。それだけ全部調べる時間もないし、やる気もないし能力もないので、ここは先生にお願いして、その結果だけを読ませて頂きます。

昔、日本新聞協会用語幹事だった金武伸弥さんが『広辞苑は信頼できるか?』という本を出されて、辞書の「品定め」をやったことがありますが、この本も「辞書には個性があり、それを分かった上で使い分けを」という趣旨だと思います。

この本では、7つの辞書に「何が載っていて、何が載っていないか」を、昔の「暮しの手帖」のようにチェックされているのだが、93ページ~98ページのところは、最初に「どの辞書か」は書いてあるのだけれど、途中のページにはそれがないので、大変読みにくい!各ページごとに「何という辞書か」を書くべきで、これは編集者の責任だと思う。読みにくいでしょ、これ。私は自分で書き込みましたよ。というより「表」にしたほうが分かりやすいよね。

1冊の辞書にしか載っていない、という見出し語は、正にその辞書の「個性」ですよね!「三省堂」がラグビーの「ノックオン」や、サッカーやバスケットボールの「スローイン」を見出しにしていないとは知らなかった!

106ページ北原白秋の『邪宗門』(明治42年)を読もうとした時に、出てくる単語が載っているかどうか?という"実験"は、面白いと言えば面白いけど、ちょっと疑問。

「明治四十二年に刊行された『邪宗門』を読むのに『集英社』と『新撰』は役立つだろうということだ。その一方で、『岩波』『角川』『明鏡』は十分な情報を与えてくれない」

とあるのだが、その場合は「古語辞典」を引けばいいのではないか?高校生なら持っているだろう。そもそも『邪宗門』を読もうというぐらいの人は「古語辞典」を持っていると思う。持っていない人は『邪宗門』なんて絶対に読まない。私も読んだことがない。「古語辞典」は、高校のときのがあるけれど。

この2点が、この本の中で疑問に思ったところでした。

でも、それ以外は、大変勉強になりました。


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(2015、3、25読了)

2015年5月12日 19:53 | コメント (0)

新・ことば事情

5743「『めぐる』は、なぜ平仮名か?」

 

「めぐる」

という言葉、漢字で書くと、

「巡る」

です。これは「常用漢字」なので、テレビや新聞では漢字で書けます。

しかし、なぜかテレビのテロップなどでは「平仮名」で、

「めぐる」

と書かれることが多いのです。その理由に、遅ればせながら先日、気付きました。

テロップは、例えばこんな感じです。

「契約めぐるトラブル」

この場合、なぜ漢字で書かないのか?実際に漢字で書いてみると、わかります。

「契約巡るトラブル」

ね!

わかりましたか?え?わからない?

これはつまり、

「『契約巡』と漢字が3つ続き『契約』と『巡る』の区別が付きにくくなるから」

なんですね。漢字で「巡る」と書きながら、区別を付けるには、どうすればいいのか?

それは、

「間に、助詞の『を』を入れる」

ことです。そうすれば、

「契約巡るトラブル」

となり「契約」という言葉がハッキリと分かります。しかし、「見出し」「サブタイトル」の「サイドスーパー」としては、

「文章的すぎる」「説明くさい」

感じがするので、助詞の「を」を抜くのですが、そうすると最初の状態に戻ってしまい、漢字が続いて読みにくいので、「めぐる」は平仮名で書くことになっているのではないか?ということです。

これは、ほかにも、

「午後6時」「午後6時ぎ」

「頃」「過」を漢字で書くと、

「午後6時」

という重要なデータとしての「時刻」が目立ちにくくなってしまう。そこで、こういった場合は、

「午後6時ごろ」「午後6時すぎ」

のように書くのではないかなあと思います。

テロップは、パッと見て分かりやすいこと(=視認性)も、重要ですからね。

(2015、5、11)

2015年5月13日 10:40 | コメント (0)

新・ことば事情

5742「落果」

 

5月12日、季節外れの台風6号が近付いています。かなりスピードは上がっているようですが、近畿地方でも中部で150ミリ程度の雨が予想されています。

南高梅(なんこううめ)で有名な和歌山県の梅の産地でも、枝が揺れないように、竹で支えて台風に備えている様子が、NHKのお昼の関西ローカルのニュースで放送されていました。その際に、梅農家にインタビューした言葉をフォローしたスーパーが出ていました。

「この時期に落下すると大変なので」

これを見て私は、

「『落下』?何が?・・・『落花』ではないのか?」

と思ったのですが、

「いや、梅の花が咲くのは2月。今は花は咲いていないはず。そうすると、落ちるのは・・・『梅の実』だ。そうか、『落果』だ!」

「落果」

というのは、あまり見慣れない言葉ではありますが、意味を考えればそうですよね。「梅の実」は、今の時期に熟(な)るはずです。もう収穫が近い時期に落ちたら、そりゃあ、農家にとってはイタイ!

「ラッカ」

という言葉の同音異義語でしかも意味が近い言葉が、

「落下・落花・落果」

とあるので、ちゃんと理解して使い分けないといけませんね。

グーグル検索では(5月12日)、

「落下」=2480万0000件

「落花」= 215万0000件

「落果」=  46万7000件

というように、やはり「落果」が一番少なかったです。専門用語ですね。一番多いのは当然「落下」でした。しかし、「摘み取り」のことを指す、

「摘果」

という専門用語もあるのですし、果実農家を取材しているのであれば「ラッカ」の「カ」に「果」が入ることも注意すべき言葉でした。

他山の石として、もし「ミヤネ屋」で出て来たら、気を付けます!!

(2015、5、12)

2015年5月12日 22:32 | コメント (0)

新・ことば事情

5741「豊見城」

 

5月11日の「ミヤネ屋」で、台風6号が近付く沖縄の、

「豊見市」

から中継で、中山リポーターがお伝えしました。その際に、地名の読み方を間違えました。

×「トミシロシ」→○「トミグスクシ」

テロップにはルビを振っておいたのですが、それが中継先まで伝わっていなかったようです。というか、ディレクターがちゃんと伝えないといけないことです。

沖縄では「城」を「グスク」と読む地名があります。ただ、高校野球で有名な、

「豊見高校」

は、「トミシロ」なんですね。ややこしいです。

沖縄で「城」の付く「市・町・村」を調べてみたら、

「豊見市」=トミグスク

「北中村」=キタナカグスクそん

「中村」=ナカグスクそん

「南市」=ナンジョー

でした。「南城市」だけ「ジョー」と読むんですね。

また、「原」と書いて「ハラ」と読むか「バル」と読むかは、

「西町」=ニシハラちょー

「与那町」=ヨナバルちょー

でした。難しいなあ!

あ、もしかしたら・・・

「グスク」

と読むのは明らかに、

「ウチナーグチ」=「沖縄言葉」

ですね。それに対して「シロ」「ジョー」は、

「ヤマト言葉」=「日本語(標準語)」

です。つまり、

「昔からのウチナー(琉球)の地名は『グスク』で、その後ヤマトンチュー(日本人)が支配した地域の地名は『シロ』『ジョー』と呼ぶようになったのではないか?」

もし、そうだとすると、「地名」には「歴史」が刻まれているということですね。

(2015、5、11)

2015年5月12日 18:15 | コメント (0)

新・ことば事情

5740「大涌谷と小涌谷」

 

神奈川・箱根山での火山活動が活発になって来ているというニュースでよく出てくる、

「大涌谷」

という地名の読み方は、

「おおわくだに」

ですね。

「涌」=「わく」

と読みます。関東の方は「当然でしょ」という感じでしょうが、関西人にとっては、それほど耳慣れた地名ではありません。「ミヤネ屋」ではスーパーに「ルビ」を振っています。

そのニュースを担当しているスタッフの島(デスク)のほうから、

「『こわくだに』も・・・」

という声が聞こえて来たので、

「それは『こわくだに』ではなく、『こわきだに』だよ!『小涌園(こわきえん)』というホテルもあるし」

と、注意を促しました。

しかし、なぜ「大涌谷」は「わ」で、「小涌谷」は「わ」なのでしょうか?「大」と「小」が対になっている、

「大歩危・小歩危」

の場合も、漫才コンビの名前

「おおぼけ・こぼけ」「おぼん・こぼん」

と「おお」「こ」の後の読み方は「ぼけ」「ぼん」で「同じ」なのに。

不思議ですねえ。

そんなことに気を取られていたら、「ミヤネ屋」のスタジオのマルチ画面に、

「大谷」

という誤字が1か所出てしまったようです・・・「おおわくだに」で変換したら、こんなミスはないはずなのに・・・・もう!!

 

 

(追記)

用語懇談会でご一緒しているNHKの原田邦博さんからメールを頂きました。

『「小涌谷」には2つの読みがあります。

地名は「コワダニ」なのですが、

箱根登山電車の駅名は「コワダニ」、

「小涌園」は「コワエン」です。

火山関係のニュースなら「コワダニ」になります。』

そうだったのか!

もともとは「大涌谷(オオワダニ)」と同じく「涌」を「ワと読んで、

「コワダニ」

だったものが、旅館や駅の名前が「涌」を「ワと読む、

「コワダニ」

になったことで有名になって来て、「ワク」「ワキ」両方の読み方が出ているということですね、きっと!

地名は難しいです。。。。

(2015、5、14)

 

 

 

(2015、5、7)

2015年5月12日 14:14 | コメント (0)

新・ことば事情

5739「シショウ」

 

3月30日の夜、帰宅途中の京阪電車が、急ブレーキで止まりました。何があったんだ?と思っていると、すぐさま車内アナウンスが、

「前方の踏切でシショウされたため、一旦停止しました」

と流れました。

それを聞いて疑問に思ったのは、「シショウされた」という「シショウ」は、

(1)  支障

(2)  死傷

のどちらか?ということです。

そして(1)の「支障」であるならば、

「支障される」

という言葉があるということで、それは聞いたことがない使い方だなと思ったのです。この場合の「される」は「受け身形」ですね。

これが(2)の「死傷」ならば、「された」というのは「尊敬語」ですが、電車が止まってすぐに「死傷」が確認できたというのは、ちょっと疑問。また「死傷」ということは、

「少なくとも、『死んだ人』と『けがをした人』の2人はいる」

ということで、その区別はどうやって一瞬で出来たのか?ということになりますね。

その後、また車内アナウンスで、

「安全が確認されたので発車します」

と流れましたが、疑問は解決されないままでした。

(2015、5、7)

2015年5月12日 11:13 | コメント (0)

新・ことば事情

5738「敦賀の語源」

 

20年ぐらい前に、福井県の「敦賀市」は、なぜこう書いて「つるが」と読むのか?という疑問が話題に上ったことがありました。そのまま、ほったらかしになっていたのですが、その謎が、遂に解ける日が!

酒井順子さんの『本が多すぎる』(文春文庫)のコラムを読んでいたら、

「『ツヌガアラシト』という神様の銅像が、敦賀駅前にある」

「この『ツヌガ』が、『敦賀』の語原と言われているらしい」

と書かれているではありませんか!それを読んで「ハッ!」としました。

「つるが」は、

「トゥンガ」

から来ているのではないか?と思ったのです。というのは、「敦」の音読みは、

「『敦煌』の『トン』」=「トゥン」

そこで、

「トゥンガ」→「ツンガ」→「ツルガ」

と訛っていったのではないか?いや、

「『ツヌガ』に合わせて『トゥン』の音の『敦』をあてたのではないか?」

また、あの継体天皇も朝鮮半島から越の国(福井)に来たのですから、「ツヌガアラシト」という神様が朝鮮島から来たと考えられないか。「アラシト」というのは、「現人神(アラヒトガミ)」の「アラヒト」のことですよね。要するに神様。そそうすると「ツヌガアラシト」は、

「朝鮮語の名前」

なのでしょう。その「朝鮮語のツヌガ」に「漢字をあてた」のではないでしょうか?

さらに読み進むと、

「『ツヌガアラシト』は『アメノヒボコ』と同一視されている。『古事記』における『アメノヒボコ』は新羅の王子であり神器を携え日本にやってきたという。」

とあるではないですか!ほら、やっぱり!

どうやら「敦賀」の語源は、このあたりにありそうですね!!

(2015、5、11)

2015年5月11日 21:12 | コメント (0)

新・ことば事情

5737「ツイッターはフロー」

おととしの冬ぐらいからツイッターを始めて、結構、はまってしまっているのですが、スマホの画面を操作していて、ふと思いました。

 

「ツイッターはフロー。ストックではない。」

 

そして、さらに歩きながら考えました。

 

「文明はフロー、文化はストック。知識はフロー、知恵はストック。文明の中から文化が生まれる。知識の中から知恵が生まれる。」

 

という気がしたのです。「フロー」は現在を知るには重要だけど、一切、後に残さない。その意味では、長い目で見ると「無駄」かもしれない。

そういったこと、「フロー」と「ストック」の関係を分かった上で、うまく付き合わないといけませんね。

ついでに、今、合唱祭に向けて練習している、中島みゆきの曲「糸」の歌詞に、

「縦の糸はあなた 横の糸は私」

というフレーズがあります。これは、

「経緯」

という熟語で表されますが、

「経=縦糸」「緯=横糸」

で、それが重なったところが、

「現在地点」

ということですね。GPSみたい。そして、言語学で出てくる、

「共時性」「通時性」

というのも、なんか、つながる気がします。つまり、

「縦の糸=共時性」「横の糸=通時性」

中島みゆきの「糸」は、こう結んでいます。

「織りなす布は いつか誰かを 暖めうるかもしれない」

うーん、深い!!

(2015、5、11)

2015年5月11日 18:10 | コメント (0)

新・読書日記 2015_070

『マリファナも銃もバカもOKの国~言霊USA2015』(町山智浩、文藝春秋:2015、4、25)

ド派手な表紙は、ちょっと手を出すのをためらうぐらいだが、中身はめちゃくちゃ面白い、ためになる現代アメリカ情報が満載。また、表紙では迫力ありすぎる澤井健画伯のイラストは、本文と相まって更なる情報を与えてくれて、町山さんと最強コンビだと思う。

『週刊文春』誌上で2014年3月~2015年3月までの1年間に連載されたコラムを集めたもの。『週刊文春』は毎週買って読んでいるし、このコラムは大好きなのだが、こうやってまとめて読むと、「初めて読んだ」ものが幾つかある。読み飛ばしていたのか、なぜか読んでなかったのか...でも、そういうのがいくつかあったほうが、新鮮でもある。

タイトルを見ると、町山さんはアメリカをバカにしているようにも見えるが、実はこの「おバカな国」を、心底愛しているというか、認めているのだなあと思えてくる。

勉強になりました!

それにしても、最新の『週刊文春』のこのコラムの欄外のところで、この最新の本ではなく、去年の本の宣伝をしているのはなぜ?


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(2015、5、2読了)

2015年5月 7日 12:57 | コメント (0)

新・ことば事情

5736「出禁」

 

5月4日の深夜、日本テレビの『月曜から夜ふかし』を見ていたら、

「名古屋の高校生は、修学旅行で東京ディズニーランドに行けない」

という「都市伝説」を検証していました。なんでも、その昔、修学旅行で東京ディズニーランドに来た名古屋の高校生が、ふざけて「ミッキーマスウを池に落とした」ことから、「出入り禁止」になったというのです。

その「出入り禁止」を省略して、番組のディレクターが、

「できん」

と言っているのが聞こえました。え?「できん」?私は「出入り禁止」などを略した「出禁」という言葉は、

「しゅっきん」

だと思っていたのです。「出入り禁止」というか、私の場合は、

「出社禁止」

の略だと思っていたのですが。

「できん」か?「しゅっきん」か?

さっそく、ネットで調べてみました。まず「はてなキーワード」というサイトでは、

*「出禁(できん)」=出入り禁止の略。店舗や施設などが、何らかの迷惑行為や不法行為を行なった利用者に対して、以後の入場や利用を禁止すること。

「できん」で出ていました。

また、「実用日本語表現辞典」というサイトでも、同じように

*「出禁」=読み方:できん「出入り禁止」の略。店舗などにおいて、店側が「他の人の迷惑になる」、あるいは「店の利益を著しく損なう」などと判断された人物に対し、入店を拒否・禁止すること。

「できん」で載っていました。そうかあ、やっぱり「できん」なのかあ。ずっと「しゅっきん」だと思ってたなあ。

さらに探していたら、

『出禁上等!』

という本までありました。「ゲッツ板谷」という人が、2010年2月に出されたもの。(角川文庫)。その表紙の写真には、ローマ字で、

「Dekin Jyoto!」

と書かれているので、やはりこれは「できん」なのですね。知らなかったなあ。

念のため『三省堂国語辞典・第7版』を引いてみたら・・・・なんと載っているではないですか!!

*「できん(出禁)」=(俗)←出入り禁止

さすが飯間さん!マネ「できん」わあ。

ちなみに「しゅっきん」は載っていませんでした・・・。

さらに、「ミヤネ屋」の解説でもおなじみの野村アナウンサーに、

「『できん』って言葉、知ってる?」

と聞いたら、

「ああ、知ってますよ。警察関係でよく使いますね。業界用語じゃないですか?」

との答え。そうかあ、知らなかったなあ。勉強になりました!

(2015、5、5)

2015年5月 6日 22:42 | コメント (0)

新・ことば事情

5735「ばっかじゃないの」

土曜日夜9時からの日本テレビ系のドラマ『ドS刑事(デカ)』。多部未華子さんが主演で、結構、面白いです。

その多部さんの「決めゼリフ」的なものに、

「ばっかじゃないの」

があります。これ、どこかで聞いたことがあるなあと思ったら、ありました、ありました、以前、書いてました。「平成ことば事情5222ばっかじゃなかろうか」です。2年前か。それによると、この言葉は、コメディアン「トニー谷」による、

「1953年(昭和28年)の流行語」

だそうです。

うちの両親と同じ「1935年(昭和10年生まれ)」のプロ野球の野村克也元監督が、よく口にするようです。それで、数年前に少し流行ったようです。なんでも、

「ばっかじゃなかろうかルンバ」

という曲まで、できたそうです。知らなかった。

多部さんの決めゼリフは、どうもその辺から出て来たんじゃないかなあと思いながら、毎週楽しみに、このドラマを見ています。

(2015、5、4)

2015年5月 6日 18:41 | コメント (0)

新・読書日記 2015_069

『ニュースで伝えられないこの国の真実』(辛坊治郎、KADOKAWA:2015、4、16)

 

辛坊さんが有料でやっているメールマガジンの中の「えりすぐり」のコラムを書籍化したもの。タイトルはもう、辛坊さんと言えば「○○の真実」シリーズが定着した感が。イタリアの「真実の口」に手を突っ込んで、噛まれて痛がっている写真とかを表紙にしたら、面白いと思う。

私は、メルマガは読んでいないので、初めて読んだ文章ばかりだった。週刊誌の連載よりも、「まくら」のグダグダが少ない分、すっきりと筋肉質の文章。

一言で感想を言うならば、

「知性はあるが、品はない」

という感じ。「あとがき」を読むと、これでも大分、品を良くしたそうだから、メルマガのほうは・・・。

しかし、語りかけ口調で書かれた文章は読みやすく、講演を聞いているかのような感じで、池上さんばりの「そうだったのか!」と思うことがたくさん。少し「そうなの?」と思う所もあるが、とっても「頭の体操」になります。私たちが気付かないことを気付かせてくれるという意味では、とても"ため"になります。品はないけど。


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(2015、5、1読了)

2015年5月 6日 14:56 | コメント (0)

新・ことば事情

5734「先月以降」

神奈川・箱根で火山性の地震が、4月25日から増えている問題で、5月4日のテレビ朝日のニュースを見ていたら、

「先月以降、急速に増えている」

というような表現をしていました。これに少し引っかかりました。ここは「以降」ではなく、「以来」を使って、

「先月以来」

とするほうがピッタリする気がします。

「以降」と「以来」はどう違うのか?私の語感では、「以降」も「以来」も「○○から後」という意味では共通していますが、

*「以降」=現在までは続いていない感じ

*「以来」=現在まで続いている感じ

がします。

『精選版日本国語大辞典』を引くと、

*「以降」=ある基準となるときからあと、または、今まで。以後。

*「以来」=(多く時、年齢、事件などを表す語について)その時点を含み、それより後ずっとの意味を表す。(イ)過去のある時点、また、ある年齢を起点にしていう。・・・よりこのかた。・・・からずっと続いていること。(ロ)現在を起点にしていう。今より後ずっと。現在を表す語が上につく場合と、単独の場合とがある。

と書かれていて、さらに、

「『以後』の語誌を見よ」とあるので見てみると、

『(イ)(=過去や未来のある時点、また、ある年齢を起点にしていう。・・・よりのち。)と同様に、「以降」「以来」も、年月日時、年齢、事件等を受けて、ある事柄の起こる期間の始点を示すが、「以来」の基準は過去の時点に限られ、「以降」は主として継続的な事柄に関して用いられる。いずれも時点として示される日時・年齢等は、問題の期間を含めるのが通例である。(「十二日以後」は十二日を含む)。なお、「後(ご)」は事件を基準にし(「震災後」「退院後」など)、また期間を示して事柄の起こる時点を指定する(「開通二年後」など)。』

とありました。うーん、難しい。それに「起点」についての記述が主ですね。

「以降」も「以来」も「現在まで続いている」ような書き方です。

もしかしたら「現在まで続いているかどうか」というより、

*「以降」=書き言葉的

*「以来」=話し言葉的

という違いなのかもしれないです。そんな気がしてきた。

(2015、5、4)

2015年5月 6日 10:46 | コメント (0)

新・読書日記 2015_068

『テレビの秘密』(佐藤智恵、新潮新書:2015、4、20)

 

この著者のことは知らなかったが、1970年生まれで東大卒、米コロンビア大学でMBAを取って、NHK、ボトンコンサルティンググループ、外資系テレビ局(?)を経て独立したと、裏表紙や奥付の著者紹介欄に書いてある。コメンテーター「としても」活躍中と書いてあるが、「本職」は、何なんだろう?

先週金曜(5月1日)の読売新聞夕刊の言葉のコラムも書いていた。このところ売出し中?

内容は、テレビの内部を知らない人には面白いと思う。「新書」には最適かな。テレビ局の中にいる者としては、特に目新しい話はなかったが、それをこのように「読み物」にするのは、やはりテクニックがいるので、参考になった。

目次を見ると「ヒットの鍵は設定が握る」「キャスティングはバランス重視」「マスか、ニッチか、どちらかに決める」「編成とは戦略のことである」「イノベーションは辺境から学べ」と、まんま「ビジネス書」である。

もう少し細かく見ると、

『「花子とアン」ヒットの裏に"アナ雪の法則"』

『なぜ「相棒」の杉下右京は恋をしないのか』

『ヒトはなぜマツコ・デラックスを見てしまうのか?』

など、とっても興味深い項目がズラリ!これらの項目のタイトルを「書名」にしても良かったのでは?と思うぐらいです。


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(2015、4、22読了)

2015年5月 6日 08:54 | コメント (0)

新・ことば事情

5733「ナフキンとナプキン2」

「平成ことば事情1932ナフキン」「平成ことば事情5497ナフキンとナプキン」の続きです。

読売テレビの食堂に置いてある「紙ナプキン」。それを入れてある所には、

「ナフキン」=10か所

「ナプキン」= 2か所

という表記の違いがあると。その理由を食堂のおばちゃんに聞こうと思っていたんだけど、なかなかおばちゃんも忙しそうで聞けなかったのですが、先日、ついにチャンス到来!聞いてみました。

「これ、『ナフキン』と『ナプキン』の2種類の表記があるんですよ。どうしてですかね?」

と聞いたら、それには、直接の答えは返って来ませんでした。そこで、

「『ナフキン』と『ナプキン』、どっちが正しいと思います?」

と聞いたところ、表情も変えずに、

「そりゃ、『ナフキン』でしょ!」

という答えが返って来たのです。

「いや、標準語では『ナプキン』ですけど」

と言うと、

「え?本当ですか・・・知らなかった・・・」

という反応でした。大阪の人はみんな「ナフキン」だと思っているのかな?もしかしたら「気付かれない方言」なのかもしれません。

 

(2015、5、4)

2015年5月 5日 23:45 | コメント (0)

新・ことば事情

5732「イギリス車」

 

5月4日の「ミヤネ屋」で、ウィリアム王子とキャサリン妃の間に、第2子の女の子が生まれたニュースを伝えました。その際に、英王室御用達で乗っている車の、

「レンジローバー」

について、

「イギリスを代表する車=レンジローバー」

というスーパーが出て来たのですが、そのテロップを事前にチェックしていて、

「ちょっと待てよ・・・」

と思いました。というのも、現在「ローバー社」は、

「インドの自動車会社・タタ自動車の傘下」

にあります。じゃあ、

「インド車」

なのか?というとそれはちょっと・・・。そもそも、「タタ自動車」の傘下に入る前には、

「ドイツのBMWの傘下」

に納まっていたはず。その時は、

「ドイツ車」

だったのか?こういうように、持ち株会社というか、違う国に買収されたときに、

「○○○車」(○○○には国の名前が入る)

という呼び方が、これまでのように使えるのか?という問題が出て来ます。

「日本車」だって、同じ問題があるかもしれません。「逆輸入車」だってあるし。

今回は、製造はイギリスで行っているということもあり、

「イギリスを代表する車」

の表現でOKとしました。そういえば、

「欧州車」「EU車」

なんて"くくり"もありましたね。

どうなるのかな?

あれ、これ、前に書いたような気がしてきた、「EU車」。検索してみよう。あ、あった!

「平成ことば事情3928 EU車」

2010年の4月10日に書いています。5年前だ。この頃からこういった問題は、既に起きていたのですね!

(2015、5、4)

2015年5月 5日 21:16 | コメント (0)

新・ことば事情

5731「動物公園」

 

5月4日のNHK「正午のニュース」の、東京からの全国ネットのニュースで、

 

「和歌山県白浜町の動物公園では、双子のパンダの赤ちゃんが人気を集めています」

 

というナレーションがありました。この、

 

「動物公園」

 

というのは、関西の人ならみんな知ってる、

 

「アドベンチャーワールド」

 

ですね。でも「固有名詞」は、NHKでは言わないんだなあと思っていたら、字幕スーパーでは、

 

「アドベンチャーワールド」

 

と出てきました。ナレーションは、全部「動物公園」でしたが。

そのあとの大阪局からのローカルニュースでは、サイドスーパーも、

 

「双子パンダ 動物公園にぎわう」

 

で、ナレーションもずっと「動物公園」でした。

(2015、5、4)

2015年5月 5日 18:46 | コメント (0)

新・ことば事情

5735「ばっかじゃないの」

 

土曜日夜9時からの日本テレビ系のドラマ『ドS刑事(デカ)』。多部未華子さんが主演で、結構、面白いです。

その多部さんの「決めゼリフ」的なものに、

「ばっかじゃないの」

があります。これ、どこかで聞いたことがあるなあと思ったら、ありました、ありました、以前、書いてました。「平成ことば事情5222ばっかじゃなかろうか」です。2年前か。それによると、この言葉は、コメディアン「トニー谷」による、

「1953年(昭和28年)の流行語」

だそうです。

うちの両親と同じ「1935年(昭和10年生まれ)」のプロ野球の野村克也元監督が、よく口にするようです。それで、数年前に少し流行ったようです。なんでも、

「ばっかじゃなかろうかルンバ」

という曲まで、できたそうです。知らなかった。

多部さんの決めゼリフは、どうもその辺から出て来たんじゃないかなあと思いながら、毎週楽しみに、このドラマを見ています。

(2015、5、4)

2015年5月 5日 12:49 | コメント (0)

新・ことば事情

5730「未開の地」

 

(ことし3月)アルゼンチンで、フランスの五輪競泳金メダリストら10人が乗ったヘリコプター2機が衝突・墜落し、全員が死亡した事故。フランスのテレビ番組の企画だったそうです。

そのニュースを「ミヤネ屋」で伝える際に、

「スポーツ選手を未開の地に連れて行き」

という一文がありました。チェックで見逃していたのですが、ディレクターの方から、

「この『未開の地』というのは、そのまま使っていいのでしょうか?現地の英字新聞の英語を、直訳したんですけど」

と質問を受けました。たしかに。ちょっと気になる。「未開」というのは、何が「開けていないのか」というと、

「文明」

ですよね。「文明開化」ではないのですから。でも、この番組はきっと、日本いうところの、

「無人島でサバイバルするような感じの番組」

なんでしょう。そすると「未開の地」というよりは、

「大自然の中に連れて行き」

の方がいいかなと話して、そのように変えました。ちなみに

「『未開の地』にあたる『英語』は何だったの?」

と聞くと、

remote part of Argentina

の中のremoteだと言うので、本当に直訳だと、

「遠く離れた地」「辺鄙(へんぴ)な所」「僻地(へきち)

でしょうね。

(2015、3、12)

2015年5月 5日 12:42 | コメント (0)

新・ことば事情

5729「鶏肥と牛肥」

 

近くのホームセンターで見かけた、山積みになっていた肥料の袋。見るとはなしに見ていて、「おや?」と思いました。というのは、

「鶏肥 20キログラム」

と書かれているのに、同じ大きさで横に置かれている袋には、

「牛肥 40リットル」

と書かれていたのです

「鶏肥」は「キログラム」と「重さの単位」なのに、「牛肥」は「リットル」と「容量の単位」なのです。「鶏の糞」と「牛の糞」で、なぜ単位が違うのでしょうか?

これは、答えは出ていないのですが、ふつうは「リットル」というと「液体」の場合に使います。そこから考えると、

「鶏肥」=固形物

「牛肥」=液体

ではないか?と思われるのですが、「牛肥」の袋をツンツンしてみたところ、「液体」ではないような感じです。

本当の理由は、何なんでしょうね?

議論が"フン出"しそうです。

(2015、5、4)

2015年5月 5日 10:38 | コメント (0)

新・ことば事情

5728「テーザー銃」

4月8日の「ミヤネ屋」の「250」ニュースで、

 

「テーザー銃」

 

という言葉が出て来ました。初めて聞いた(見た)言葉です。「チャーザー村」なら「笑点」で聞いたことがありますが。

調べたところ、どうやらこの「テーザー銃」というのは、

 

「スタンガンの一種」

 

のようです。

ネットの「ニコニコ大百科」というサイトでは、

「テーザー銃(Taser)とはスタンガンの一種で、有線の電極が空気圧で射出されるもの。商品名。非致死性武器の一つ。アメリカで開発され、各国の警察や刑務所で使用されている。

Taser Internationalというアメリカの会社が開発したスタンガンの一つ。外観は拳銃の様だが、スタンガンなので実弾を発射する機能はない。通常のスタンガンと異なるのは、電極が射出されて相手に刺さること。電極と本体とは数メートルのワイヤーで繋がっており、本体で発生させた電流はそのワイヤーを伝って電極に流れる。(以下略)

と詳しく説明がありました。

 

ちょうど「新聞用語懇談会放送分科会」が4月下旬にあったので、その席で、各社はどう表現しているか聞いてみました。

 

『アメリカで黒人男性が白人警官に撃たれるという事件が相次いでいますが、その中で、

スタンガンの一種の、

「テーザー銃」

 というのが出て来ました。私は初めて耳にした言葉です。拳銃の弾の代わりに"電極"を発射して、相手に命中して引き金を引くと電流が流れるという物のようで、「テーザーインターナショナル社」の商品だそうです。アメリカではかなり普及していて、アメリカのドラマなどには、よく出て来るそうです。これまでの、相手に接触させて使用する「スタンガン」とは少し使用方法が違いますし、かと言って「拳銃」でもない。4月8日のニュースでは「テーザー銃のような」という表現も出て来ましたが、各局・各社どのように表現しているのでしょうか?』

 

それに対する各社の回答は、

 

(共同通信)現状「テーザー銃」は使わず「スタンガン」にしている。しかし「非接触」ということが重要なケースなどでは説明が必要となるので、今後の検討課題だ。

(読売新聞)「特定商品名」ということでもあるので「テーザー銃」という表現は使っていない。「スタンガンの一種」としている。「スタン=気絶させる」の意味。

(NHK)「スタンガン」としている。

(NTV)外報デスクに聞いた。現地の記事を基に、引用の形で「テーザー銃のようなものを置いた」「電気ショックを与えるテーザー銃」と使った。アメリカの警官は、右側に「拳銃」、左側に「テーザー社のスタンガン(=テーザー銃)」を持っており、「テーザー銃」を黒人男性に奪われたので「ピストル」を撃った。その際に「右と左を勘違いした(「拳銃」を取られたと思った)」と警官は話しているという。(供述内容が本当かどうかは、わからない。)日本では「テーザー銃」は販売されていない。アメリカでは、裁判所など人が集まる場所での警備用に、このタイプのスタンガンが用いられ「テーザー社」が公的な場所でのシェアが高い。「テーザー銃」は安全だと言われているが、死亡例はある。ワイヤが付いたものだと何度も引き金を引いて電流を流せるため、ショック死する(心臓発作を起こす)とみられる。

(フジテレビ)4月8日のニュースでは「スタンガン」で出稿したが、3月に韓国で起きた事件では「テーザー銃」を説明なしで使った。「スタンガン」と「テーザー銃」は違う物だという認識。説明を付けけて「電気ショックを与えるテーザー銃」のような表現にするか、現在、検討中。

(TBS)3年前(2012年3月14日)に、アメリカの「60ミニッツ」という番組を紹介した中で「発射型のスタンガン・テーザー銃」によるトラブルが増えていると紹介した。裁判所など拳銃が使えない場所で、6~7メートル離れた所まで電極が飛ぶもので、トリガー(引き金)を引くと電流が流れる。電気ショックを受けた人は、数分で回復するが・・・などと紹介した。ちなみに「テーザー(TASER)」というのは、『宇宙冒険』などの作品があるSF作家「トマス・A・スイフト(Thomas A Swift)」の頭文字(TAS)に「エレクトリカル・ライフル(Electrical Rifle」の頭文字(ER)をつなげたものだそうだ。

 

というものでした。

今後「テーザー銃」にも注目していきます。

(2015、5、4)

2015年5月 4日 21:37 | コメント (0)

新・ことば事情

5727「矢が貫通」

 

茨城県取手市で、深夜に自転車に乗っていた男性が、クロスボウのようなもので右脚を撃たれる事件がありました。その際に、

「矢は右脚を貫通した」

と報じられましたが、そのあとに

「男性は、矢が刺さったまま病院に行った」

というような話が出てきたことについて、視聴者の方から、

「『貫通』の意味が分かっているのか?『貫通』したのなら『矢が刺さったまま』は、おかしいのではないか?」

というご指摘を頂きました。

ああ、たしかに!「貫通」は「貫き通り抜ける」であって、「矢が刺さったまま」を「貫通」と言っていいのかというと、疑問が残ります。しかし、

「矢の先(矢じり)が足を貫いている状態」

であれば、たとえ矢が刺さったままの状態であっても「貫通」と言えるのではないか?

つまり、「矢」の、

「"先"が貫通か?"全体"が貫通か?」

という問題ですね。

一般的に「体を貫通」と言うと、

「拳銃やライフルの弾」

の場合が多いので、「弾が貫通」というと、

「体内に弾が残っていない状態」

を指します。「弾が体内に残った状態」では「貫通していない状態」ですね。

しかし、「矢」のように「長い物」は、

「全体が体内に残ってもいても、先が足を貫通することもある」

のです。ほかにも、想像すると痛くなってきますが、

「『キリ』や『千枚通し』で『手のひら』を突き刺した場合」

は、「手のひら」に「キリ」や「千枚通し」が残ったまま、

「手のひらを貫通することは可能」

ですよね。(ああ、痛そう・・・)

今回の「矢」のケースは、「突き通す物が残ったままで貫通するケース」だと言え、その意味では、

「矢が貫通したまま、病院に行く」

ことも、「ありうる」ことになりますね。

 

(追記)

6月30日の朝、テレビを見ていたら、

「大分で見つかった、矢が刺さったシラサギ」

の映像が映っていました。その「矢」は、縦にシラサギの体を貫いていて、矢尻(矢の先っちょ)が、身体から突き出ていました。でも、「突き抜けて」はいませんでした。

「刺さったまま」

でした。

「『貫通』していても『突き抜けて体内に残らない』とは限らない」

ということが、よく分かりました。

(2015、7、6)

 

(2015、5、4)

2015年5月 4日 16:22 | コメント (0)

新・ことば事情

5726「下り」

 

4月29日。ゴールデンウイークが始まりました。

さっそく旅行に向かう人などで、鉄道や空の便が混雑しているというニュースをしていました。その中で、

「成田からの下りは5月2日がピーク」

という表現があり、ひっかかりました。

「鉄道・道路」で、

「上り・下り」

は、まあいいとして、

「『空の便』に、上り・下りがあるんでしょうか?」

ないんじゃない?

ヘンな表現だなあと思いました。皆さん、そう思いませんか?

(2015、4、29)

2015年5月 4日 12:03 | コメント (0)