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『道浦TIME』

新・読書日記 2014_025

『直観を磨くもの~小林秀雄対話集』(小林秀雄、新潮文庫:2014、1、1)

 

531ページの分厚い文庫本。

三木清、三好達治、梅原龍三郎、五味康祐、横光利一、折口信夫、大岡昇平、今日出海、湯川秀樹、福田恆存、永井龍男、河上徹太郎という12人と小林秀雄(19021983)との対談集。時期は昭和16年(1941年)の三木清から、昭和54年(1979年)年の河上徹太郎まで、時代も感じさせるが読みごたえがある。表紙の小林秀雄の写真、カッコイイ!シブいですねえ。

一番、小林の姿勢が顕著に出ているのは、物理学者で日本初のノーベル賞受賞者である湯川秀樹(19071981)との対談であろう。ともにこの時は40代。今の私よりも若いが、成熟した感がある。この対談自体は、湯川がノーベル賞を受賞する(1949年)よりも前に(19488月号『新潮』に掲載)行われている。まだ「原子爆弾」の惨禍から3年しかたっていないという意味では、対談当時と、東日本大震災による福島第一原発の事故から3年たった現在の日本は、「原子力」に対する関心の高さの状況では似ているのかもしれない。

その中で小林は、太陽のエネルギーの元は原子力であり、我々は知らずにその恩恵に浴していたと。しかし、

「高度に発達する技術に対して人間が・・・安定したオーガニズム(有機的組織体)が何億年と変わらない人間が対立する、何かおかしなことが起こるような気がするのです」

と述べている。これに対して湯川は「おっしゃる通り」としながら、

「原子力という物を人間が利用すると、全体的に集団的な自殺などができるようになったわけですから、そうなれば道理とか道徳とか、いろんな問題が起こって来ます。(中略)ほかのあらゆる問題より平和を永続さすことを優先的に考えなければならない。これは絶対的な問題です」

と答えている。「原子力」を「兵器」として使うことに関しての話。また、

小林「理性が因果律を要請するという性質は、これは神様から授かった贈物だ。もう一つは自由というような一つの絶対感情も神様からの賜物(たまもの)だ。ところがそういう二つのものからいろんな混血児が生まれて来る。エントロピーの原理というのはやはりそういう混血児みたいなものじゃないかと思うのですよ(以下略)。」

湯川「混血児かもしれんけれども、混血児だからと言って、それだけで排斥すべき筋合いじゃないと思うのです。」

小林「排斥しようとはちっとも思わない。むしろ尊重するのです。」

などという禅問答のような会話も、「混血児」という言葉も時代を感じさせる。

また、折口信夫(188871953)との対談(19502月『本流』に掲載)で小林は、

「昔の人にとって瀬戸物の美しさとは、それを日常生活で使用することの中にあった。利休の美学は、そこから生まれております。現代では瀬戸物の美しさを硝子(ガラス)越しに眺めている。それで十九世紀西洋美学には抵触しないのです。瀬戸物の美しさが観念だけのものになっている事に気がついていないのです」

などなど、勉強になりました!


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(2014、2、14読了)

2014年3月18日 17:46 | コメント (0)