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『道浦TIME』

新・ことば事情

5181「激似」

 

女優・小林聡美さんと離婚して2年たつ、脚本家の三谷幸喜さんに新しい恋人が!という話題を「ミヤネ屋」で取り上げたところ、

「元妻・小林聡美に激似」

という原稿が出てきました。この、

「激似」

ですが、

「げきに」

と読みます。なんだか「うま煮」のようです。

「酷似」

だと「音読み」で「こくじ」と読みますが、「激○○」の場合は、「じ」という「音読み」ではなく、「にる」という「訓読み」がくるんですね・・・。

「げきじ」

じゃあ、全然意味が分からないし・・・。

まだ、国語辞典には載っていないんじゃないかな?「激似」は。そう思って引いてみると、『三省堂国語辞典』『広辞苑』『明鏡国語辞典』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『新明解国語辞典』『新選国語辞典』『岩波国語辞典』『新潮現代国語辞典』には載っていませんでした。

『現代用語の基礎知識2013年版』にも「激似」は載っていませんでしたが、若者語として、

「ゲキアツ・劇(激)あつ」

は載っていました。意味は、

「一番流行している、旬である。また、程度がはなはだしく、あり得ないくらい良いこと。『あいつの髪型、ゲキアツやな~』。『劇的に熱い』から。ときに冗談を込めて、あり得ないくらいに悪いこと。」

とありました。「強調語」としての「激」は、例の「平成ことば事情5124」に書いた、

「激おこぷんぷん丸」

でも使われていますし、ここ数年のはやりなのかもしれません。まあ、これまでも使われてはいるんだけどね。篠山紀信さんの、

「激写」

の時は「激」のあとの「写」は「シャ」と「音読み」だったけど、

「激似」「激おこぷんぷん丸」

は、「激」のあとが「訓読み」というところが目新しく、新鮮なんでしょうね。

一応、米川明彦先生の『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』(三省堂)を紐解くと、「激写」は、「1975年(昭和50年)」の流行語で、

「写真家 篠山紀信の造語で、雑誌『GORO』(1975年4月号)の同誌撮影の山口百恵の写真に付けたタイトルが最初。▼その後、「激~」が週刊誌の見出しによく使われるようになった」

とありました。その流れだけど、ちょっと違うというところでしょうか。

あ!違う!「激」のあとに「訓読み」は、既にだいぶ前からあった!そう、

 

「激辛」

 

です。これは「激」のあとに「から(い)」と「訓読み」でした!

つまり「激似」は「激辛」の系譜だということですね。つまり「湖○屋」か。ヒーッ!

(2013、7、18)

2013年7月19日 18:27 | コメント (0)