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『道浦TIME』

新・ことば事情

5135「姑はしゅうとか?しゅうとめか?」

 

素朴な疑問が。

「姑」

 と書いて「しゅうと」とも「しゅうとめ」とも読みますね。

 これはなぜでしょうか?そもそも「しゅうと」の漢字は、

「舅」

なのではないでしょうか?「め=女」の意味でしょうから、

「しゅうと」=男 「しゅうとめ」=女

 が原則かと思いますが、

「しゅうと」=女

 という意味もあるのは、なぜなんでしょうか?

こんな質問を、NHK放送総文化研究所の塩田雄大さんにぶつけてみました。すると、こんなお返事が。

『「しうとめ」の語源が「しうと」+「め(=女)」であることは疑いないでしょうから、下記のように想像されます。

「医師」:男女両方指す  ← かつての「しうと」と同様

「女医」:女性のみ    ← かつての「しうとめ」と同様

で、「しうと」という「和語」に漢字をあてるときに、それが「男性」であれば、

「舅」

を、「女性」であれば、

「姑」

を用いていたのだと思います。

その後、「しうと」が男女両方を指すという意識が薄れ、「男性専用」になったのが現代の状況です。

つまり、「しうと」には、(現代語ではそうはなっていませんが)「医師」といったら「男性医師」を指す、といったような意味変化(意味の縮小)が起こったのではないでしょうか。ただし「『しうと』が男女両方を指す」という用法は、複合語には生きています。「小姑」は女性ですが、ふつう「こじゅうと」と言うものであり、「こじゅうとめ」とは言わないのではないでしょうか。』

たしかに!

「小姑(こじゅうと)」=「女」

ですし、「こじゅうとめ」とは言わないですよね!もともと「しゅうと」は男女両方を指していたのに、それがのちに男女で別の漢字をあてて、「しゅうとめ」という言葉も生まれたということですね。

『精選版日本国語大辞典』「しゅうと」を引いてみると、

「しゅうと」

=「(1)(舅)配偶者の父。夫の父、または妻の父。しゅうとお。しゅうとおや。」

とあって、用例はなんと『日本書紀』(720年)!そこでの表記は、

「舅氏(シウト)」

となっています。「しゅうとおや」って聞いたことがないけど、「しゅうと」で「おや」ということは、「しゅうと」にも「父親」と「母親」がいても不思議がないということか。

そして2番目の意味で、

=「(2)(姑)配偶者の母。夫の母、または妻の母。しゅうとめ。」

とあって、用例は『日本書紀』より時代が下った『運歩色葉』(1548年)です。やはり「舅(しゅうと)」のほうが古いのか。さらに3番目の意味も載っていました。

「(3)配偶者の兄弟姉妹。こじゅうと」

こちらの用例はさらに時代が下って『歌舞伎・幼稚子敵討』(1753年)になっています。意味が分化していったのですね。それだけ家族関係が複雑になったということでしょうか?

それにしてもこんなことにこだわるのは「小姑」みたいでしょうか?・・・あ、怒られる。(誰に?)

こんなことを気にしながら、曽野綾子の本を読んでいたら、「姑」に「はは」というルビが振ってありました。

このように、「漢字」と「和語の意味」は、「一対一対応とは限らない」ということですね。勉強になりました。

(2013、6、17)

2013年6月17日 17:35 | コメント (0)