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『道浦TIME』

新・ことば事情

4943「水仙のアクセント」

植物(花)の「水仙」ですが、関西弁では、

「ス\イセン」(頭高アクセント)

でした。私の感覚ではずっと「頭高」でした。

アナウンサーになって初めて、標準語(共通語)アクセントでは、

「ス/イセン」(平板アクセント)

しかないことを知りました。

でも「平板」だと、「水洗トイレ」の「水洗」と同じなので、なんだか汚いイメージがあります。

最近は、「(花の)水仙」について、東京出身者でも「頭高アクセント」の「ス\イセン」と言っているように思います。もしかしたら、「水洗トイレ」の普及に伴い、アクセントで意味の分化が進んでいるのではないか、と思います。

これについて、NHK放送文化研究所の塩田雄大さんに聞いてみたら、こんなお返事が届きました。

『「水仙」のアクセントは、全体としては、急激に『頭高』に移りつつあるように思う。以前、用語班内で尋ねてみたことがあるが、ずっと東京に住んでいる人は伝統的な『平板型』を支持する傾向が見られた。私の個人的アクセントは『頭高型』。

下記のp.51に、「水仙」は挙げていないが、「乾麵」「嗅覚」など、頭高化しつつあるものの例を示してある。

http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2010_05/100504.pdf

「水洗トイレ」との分化に関しては、私もかつて考えたことがあるが、結論は出ていない。アクセント・語形に関しては、同音異義語を避けるために「分化」してゆくものがある一方で、劣勢の型が強勢の型に合一する形で「同音化・同アクセント型化」してゆくものもあり、一概には断言できないからだ。相当、慎重に材料を積み重ねないと、「言い分けるためにアクセントが分化している」という推定は、「あと付け」の説明になってしまうおそれがある。(例:「水仙」と「水洗」とを取り違える場面はまずありえないのに、なぜそのようなことが起こると説明できるのか、より使用頻度の高い「推薦」がなぜ「水洗」と同じアクセントのままなのか、また基本語である「雲」と「蜘蛛」は、東京語ではなぜ同じアクセントのままであり続けるのか、などの課題をひとつひとつクリアにしていかないとならない)』

 

そうか「推薦」は「水洗」と同じアクセントだけど、だからといって、同アクセントを忌避して「頭高」にはなっていないな・・・あ、これは「推薦」が「する」を付けて「動詞」になることができるからではないか?「水仙」「水洗」はともに「名詞」で「する」をつけて「水洗する」「水仙する」とはなりませんが、「推薦」は「推薦する」になりますよね。これは関係ないのかな?

読売テレビのアナウンス部「放送ではどちらで使うか?」と意見を聴いてみたところ、

(50男=静岡)「ス/イセン」(平板アクセント)です。「頭高」でよく聞くので、この時季のニュースでは、いちいちアクセント辞典で確かめることばのひとつです。

(50男=福岡)「ス/イセン」(平板アクセント)

(40男=埼玉出身)「ス/イセン」(平板アクセント)です。

(40女=東京)「平板」の「ス/イセン」です。(関東での)小さい頃から「平板」で、今も「平板」です。逆に、関西で最初に「頭高」で聞いたときは違和感がありました。最近、慣れてきました。

(30男=長崎)「ス/イセン」(平板アクセント)で読んでいました。

 (30男=埼玉) 「平板」の「ス/イセン」だと思いますが、頭の片隅には「推薦」や「水洗」との使い分けがあります。「ス\イセン」という「頭高」だと関西イントネーションっぽいですが・・・。

(30女=大分)「水仙」は、{ス/イセン}の「平板」しか『アクセント辞典』に載っていなかったように思うので「平板」ですが、個人的には「頭高」の「ス\イセン」の方が自然な気がします。

(30男=長野)「ス\イセン」、「頭高」です

(30男=大阪) 僕は、頭高「ス\イセン」です。アクセント辞典のひかなければ、迷いもなく「頭高」で読みます。

(20女=青森)「ス\イセン」(頭高アクセント)です。

ということで、

「ス/イセン(平板)」=7人

「ス\イセン(頭高)」=3人

でした。

 

(2013、1、18)

2013年1月22日 21:34 | コメント (0)