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『道浦TIME』

新・読書日記 2011_182

『暴力団』(溝口敦、新潮新書:2011、9、5第1刷、2011、10、15、第5刷)

 

「シンプル・イズ・ベスト」なタイトル。

溝口敦氏といえば「暴力団」もので有名なのは知っていたが、ちゃんと一冊の本を読むのは初めて。紳助さんが"引退"したこのタイミングでの出版は大変タイムリー、ということで、1か月で5刷と売れています。かつて、「民事介入暴力=民暴」が問題になったのはバブルがはじけて、地上げが上手くいかなくなった時期。その時に暴力団に対する法律の締め付けが厳しくなったように、この10月から各自治体の条例での暴力団への締め付けが厳しくなった。著者があとがきで書いているように、「暴力団」は「最後の光芒」を放っている、やがては消えゆく存在なのだろうか。

民暴当時の警察庁長官は国松孝次氏。その後、狙撃された。当時はオウムの手によるのか?はたまた北朝鮮かなどと取りざたされたが、結局犯人は捕まらないまま"時効"を迎えたが、「民暴」で暴力団への締め付けを行った最高責任者ということを考えると、その筋の可能性も当然、洗っていたのだろう。しかしその暴対法も、「暴力団」という存在を認めてしまっている=存在そのものは違法ではないという判断は、世界の他の国とは対応が違う。それは「日本の歴史における博徒からの流れの暴力団」という存在があるのか、はたまた「必要悪」とされていたからか。この10月からの条例での対応は、安藤・警察庁長官の強い意志によるという。現在の山口組の主流・弘道会が、警察との対決姿勢を強めていることに対して「徹底的につぶす」という意志を強くしたとのこと。きっかけは、大阪府警の"暴力的な"取り調べでケガをした組員が、なんと「裁判」を起して、それで組員側が「勝訴」してしまったことだという。ここでも「面子」の戦いだ。

なかなか普段のニュースではそういった面まで出て来ないので、歴史の中における現在の「暴力団」と現代社会のありかた、警察の向き合い方などを学べる一冊であった。

なお著者の溝口氏は、かつて山口組五代目の本を書いた時に、「出さないでくれ」と依頼をされたが、「ジャーナリストとして断固拒否」したところ、その3か月後に、左肩を刺されたたという・・・。

 

 


star4

(2011、10、23読了)

2011年10月24日 18:17 | コメント (0)