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『道浦TIME』

新・読書日記 2011_146

『東電OL殺人事件』(佐野真一、新潮文庫:2003、9、1初版・2003、10、5第3刷)

 

2011725日の夕刊に、「マイナリ受刑者に再審の可能性」という記事が出たのを受けて、買ったままで読んでいなかった本書を本棚から取り出し読んだ。本書は「一審無罪」までを描いているが、その後二審、最高裁で有罪、無期懲役判決が確定している。

沢木耕太郎のよう。ノンフィクションって、思い込み、作り上げの部分が多いなあと感じる。著者の感じたことは、客観ではありえないわけで。だから個性が出ておもしろいのだろうが。

"小堕落"がはびこる中で生まれた"大堕落"が今回の事件だと、著者は書く。"小堕落"を堕落していないように取り繕おうとする社会の動きが"大堕落"を生んだと。著者は、堕落した現代日本を叱咤している。しかし、人間の白でも黒でもないグレーの部分があからさまになる、こういった暗い部分、正直読んでて嫌な気持ちになり、係わりたくないと感じたのも事実。

毎晩のように渋谷の街に立ち売春を行っていた被害者は、間違いなく心の病であったのではないか。そんな"彼女"を生んだのは"家庭"なのか、"社会(世の中)"なのか、何が彼女を追いやり、なぜ彼が捕まらなければならなかったのか。この事件は必然だったのかどうか。考えさせられる一冊だ。

 

 


star4

(2011、8、9読了)

2011年8月23日 13:55 | コメント (0)