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『道浦TIME』

新・読書日記 2011_066

『三陸海岸大津波』吉村昭、文春文庫:2004、3、10第1刷・2011、4、1第8刷)

 

吉村昭の記録文学の記念碑的作品、というふうに紹介されている。正に今回の東日本大震災による大津波は、過去にも繰り返し「三陸」を襲っていた。その生き証人たちに話を聞き、記録をたどって書き残した。

1896年=明治29年と、1933年=昭和8年、そして2011年=平成23年。

過去の大津波を越える規模のものが起きてしまったのだが、過去2回の記録に残る大津波も、その時代の人たちにとっては想像を絶するものであった。

宮城県田野畑村では明治29年・昭和8年の大津波を経験して、巨大な"防潮堤"を作っていた。が、今回の津波をそれさえも越えてしまった。

実は以前の津波も、場所によっては「高さ50メートルのところにある家」にまで浸水していたという話を吉村は聞き取っており、高さ8メートルほどの防潮堤では、とてもそれに対抗できないこともわかっていたのだが・・・。

「歴史は繰り返す」というが、自然の営みは繰り返すのである。そこに、善悪の意図はない。ただ、自然の営みとして地殻変動で地震が起き、地震によって津波が起きた。

三陸では津波のことを「ヨダ」と呼んだらしい。不気味な響きを持つ言葉だと、吉村は紹介している。

 


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(2011、4、25読了)

2011年4月29日 23:22 | コメント (0)