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『道浦TIME』

新・ことば事情

4336「寒の戻り2」

「平成ことば事情4320」で書いた「寒の戻り」ですが、その後、気を付けて聞いていると、ベテランお天気キャスターの小谷純久さんも使っていました。おかしいなあと思っていたらウェザーニュースの気象予報士さんが、

「道浦さん、どうやら『国語辞典』には『晩春に使う』と書いてあるようですが、『歳時記』などでは『早春にも使う』と書いてあるみたいなんですよ」

とのこと!ええ!それは大変!調べてみなくては!

ということで調べました、「寒の戻り」。

『広辞苑』=春先一時的に寒さがぶり返す現象。

『明鏡国語辞典』=暖かくなった晩春の頃、一時的に寒さがぶり返すこと。寒返り。

『精選版日本国語大辞典』=晩春のころ、急に大陸性高気圧の勢いがもり返して、一時異常に寒くなること<季・春>

『デジタル大辞泉』=晩春のころ、一時的に寒さがぶり返すこと。

『新明解国語辞典』=※「寒の戻り」は載っていない。

『三省堂国語辞典』=春になって、また寒さがもどって来ること。寒もどり。

『新潮現代国語辞典』=晩春に一時的にまた寒くなること。

『岩波国語辞典』=※「寒の戻り」の見出しなし。(「寒」のところに「寒の戻り」という言葉だけは載っているが)」

『日本語大辞典』=春、気候が暖かくなったあと、突然寒くなる現象。

 

うーん、たしかに国語辞典は「晩春」が多いですね。単なる「春」あるいは『広辞苑』の「春先」「早春」でも使えそうです。

ネット検索では、

「四季の気象と暮らしの事典」=立春を過ぎ、春になって気温が上がる時期に、寒さがぶり返す現象を「寒の戻り」という。冬型気圧配置になって、寒波が吹き出す早春寒波や寒冷な移動性高気圧におおわれて、霜が降りたり、氷が張るほど冷え込む現象。桜が咲く頃の寒の戻りを花冷え、北海道ではリラの花が咲く頃の寒の戻りをリラ冷えという。寒の戻りが起こりやすい日は4月6日、23日、24日。晩霜の危険日でもある。

 

これだと「立春を過ぎて春になって気温が上がる時期」ですから「早春」でも確かに使えなくはない感じ。

また、200932日の「北海道新聞」お天気キャスターの賀久正則さんという人が、

「昨年の三月は、記録的な高温で寒の戻りもなく経過した。札幌では三月一日に九五センチあった積雪が二十五日に消えて根雪の終日となった。例年なら、春と冬がせめぎ合う中で寒の戻りが幾日か現れ、雪が減っていくのが一般的だ。」

と、3月に寒の戻りがなかった」という内容で書いています。「3月=早春」ですから、昨年(2008年)はなくても普通は「3月に寒の戻りがある」という前提で書かれていますね。

しかいし、そのほかのサイトも見てみると、大体は、

「桜が咲く頃の寒の戻り」

というように、

4月に入ってからの寒さ」

を示しているようです。「早春」に使えるかどうかは、微妙ですね。

引き続き、調べてみます。

(2011、3、9)

2011年3月16日 10:30 | コメント (0)