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『道浦TIME』

新・ことば事情

4257「肩付き脚肉」

年末。テレビ通販コマーシャルで、「ズワイガニ」を紹介していました。そこで販売していたのは、

「ズワイの肩付き脚肉」

という代物でした。え?「肩付き」の「脚」肉?

「肩」というのは人間の場合はもちろん、

「腕の付け根」

のことを「肩」と呼びますが、カニの場合は、

「脚の付け根」

「肩」と言うのでしょうか?

あ、でも、「牛肉」では「肩肉」がありますね。の場合も(「四足」ですから)、あれは全部「脚」です。その付け根を「肩」と呼ぶのですね。

『広辞苑』で「肩」を引いて見ると、

(1)人・鳥獣の胴体の、腕・前肢・翼が接する部分の上部。

(2)位置が人の方にあたる所。①衣服の肩にあたる部分②山頂の少し下の平らな所。(例)山の肩③物の、脇の上部。(例)肩書④和船の最も幅広いところの横幅。和船の大きさを示す場合、肩幅何尺何寸という。

(3)肩を使う動作、またその力。①かつぐ力(例)肩を貸す②転じて、負担。責任。(例)肩が下りる③物を投げる力。(例)肩がよい

(4)(肩に倶生神(ぐじょうじん)が宿っていて人の運命を支配するという俗説から)運。(別の説もある。)

 

いやあ、「肩」いろいろな意味を持っているのですね!この後に「肩が怒る」「肩がつかえる」「肩で息をする」「肩で風を切る」など15もの慣用句が並んでいて、日本人がいかに「肩」になじみがあるかがよくわかりました。

そして(1)の意味で、人間だけでなく鳥獣にも「肩」を使うと。その場合は「腕」のほか「前肢」「翼」が接する部分の上部を「肩」と言うと。ただ『広辞苑』は「カニ」については書いていませんね。カニは、どれが「前肢」なんでしょうか?一番上の「脚」が「前肢」にあたるんでしょうか?マンガに出てくるはさみを持ったカニの場合は、確かにはさみの付いてるのが「前肢」のように見えますが、はたしてズワイガニはどうか?

もし「一番上の脚」だとすると、「ズワイの肩付き脚肉」というのは、

「一番上の脚の肉ばかりを集めたもの」

を売っているのでしょうか?すると、残りの脚はどのように売られているのでしょうか?

それを考えると、カニを食べているわけでもないのに、無口になって考え込んでしまいます・・・確認のために一度注文してみますか・・・サイフが・・・妻が許せば・・・・。

(2010、12、29)

2010年12月30日 17:46 | コメント (2)

コメント

道浦さんこんにちは。僕も道浦さんのブログでいろいろな言葉や本があることを知った一年でした。これからはカニのおいしい季節ですね。それではよいお年をお迎えください。失礼します。

投稿者: ハロー10チャン 日時:2010年12月30日(木) at 18:26

食べ物ネタに食いつきます。カニの肩肉というのは、甲羅(胴体)の中にある筋肉です。そこから脚が生えています。肩肉と脚を分けて売っているものと、肩肉を付けて売っているものがあります。ついでに、カニの脚は全部が脚です。爪のあるのが第1脚で、挟脚ともいいます。第2脚から第5脚までの4対は、歩行に使うので歩脚ともいいます。
タラバガニやハナサキガニはヤドカリの仲間なので、脚は4対8脚しかありません。

投稿者: 西尾@川崎 日時:2011年01月10日(月) at 18:10