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『道浦TIME』

新・読書日記 2010_140

『明日のテレビ~チャンネルが消える日』(志村一隆、朝日新書:2010、07、30)

テレビ局関係者としては、読まずにはいられない一冊。ここ数年、こういった本がたくさん出ている。以前も出ていたのに、目にあまり留まらなかっただけかもしれないが。

間違いなく日本の(もちろん世界の・アメリカの)テレビ業界も、大きな変革期を迎えているのは、言うまでもない。これまでのビジネスモデルでは立ち行かなくなる、大きな動きである。

著者は、2か月に1回アメリカに行くという生活を通じて、アメリカのテレビ事情に精通している。アメリカのテレビは、リモコンの裏が「キーボード」になっていて、テレビ受像機がそのまま「パソコン画面」のように双方向のメディアになっているという。そんなリモコン、日本では見たことなかったが、先日夏休みにUAEのドバイに行った時に乗った、「エミレーツ航空」の座席の前のTVモニターの下についている「リモコン」は、裏を返してみると、はたして「キーボード」が付いていた。

それよりも驚いたことは、TVモニターが「タッチパネル」になっていて、映画なんかは、何百種類も、それも日本語吹き替え版だけでも何十種類もが用意されている事。それも「アバター」や「アリス・イン・ワンダーランド」「2012」など最新(と言っていいだろう)のものが。乗客は、好きなときに好きな映画を、しかも巻き戻したりすることもできるし、色んな言語で聞く(見る)ことができるのだ。最初はタッチパネルに戸惑ったもの、すぐに慣れた。これは便利。キーボードより便利だ。これを見て、

「ああ、これは『i-Pad』が人気なわけだ」

と肌で感じ、間違いなくそういった時代に変わるなと確信した。

ドバイでは、巨大なショッピングモールの中にある大きな「案内板」がまた、「タッチパネル」だったのだ。カーナビなどが「タッチパネル」になっているのと同じ理由である(我が家の車にはまだ、カーナビはないのだが・・・)

おそらくその次のステップでは、これが「3D」になって案内してくれるだろう。「アラジンの魔法のランプ」をこすった時のような状態かも。が、カーナビが「3D」になったら、事故が起きそうな気がするが・・・。

ただ、高齢社会になる中で、中高年の指は若者ほど「脂分」がないので、タッチパネルが反応しにくい。この辺りの改良は必要だろう。また視覚障害者への対応どうするか(音声案内など)も、考える必要があると思う。

とまあ、この本の中身とは少し話がそれたかもしれないが、いろんなことを考えさせられた一冊。サブタイトルの「チャンネルが消える日」は、エミレーツ航空の機内の映画のように、数百という選択肢になった場合、「チャンネル」というものが意味をなくすということであり、それは結局「視聴者の希望を優先した結果」なのだろう。しかし、その先には「あんまりたくさん番組がありすぎて、わからない。もっと少なくてもいいから、私の好みのものだけ選んでくれたら助かる」という人たちも出てくるような気がする。そこに「ビジネスチャンス」が、ありはしないかだろうか?

 


star4

(2010、7、28読了)

2010年8月17日 22:39 | コメント (0)