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『道浦TIME』

新・ことば事情

3980「地元住民も不安ですね」

 

56日、運転を再開した「高速増殖炉もんじゅ」のニュースを伝えたTBS『ニュース23』の膳場キャスター。VTRリポートが終わってスタジオにおりたときの最初のコメントが、

「地元住民も不安ですね。」

という一言。(「不安」だったか「大変」だったのかは、定かではありません。その前の「地元住民」という言葉に引っかかってしまったので)

それを聞いて愕然としました。

「地元住民」というひとくくりに、ちっとも気持ちがこもってない。

普通は、「人間」が見えていたら、スタジオトークでは、

「地元の方」

と言うのではないでしょうか?せめて、

「地元住民の方」

ですよね。鳩山総理よりも気持ちがこもっていない、理解していないと感じざるを得ない一言です。

もちろん、同じコメントでも、「言い方」によっては、「伝わる」のでしょうが、サラッと言って(読んで)しまっては、「絶対に伝わらない」言い方・言葉です。

膳場キャスターが思わず言ったコメントなのか、事前にスタッフと練りに練ったコメントかはわかりませんが、あまりにも「書き言葉」。ストレートニュースもかくや・・・というコメントにびっくりしたので、書き記しておきます。

翌日の朝、うちのニュースの担当女性キャスターに、

「スタジオトークで『地元住民は』というような言い方は絶対にするな。これを言ったとたんに『あ、他人事と思ってるな』と思われるよ」

と釘を刺しておきました。

その後、実はこの「地元住民」は、「読み原稿」では頻繁に出てくることに改めて気付きました。沖縄の普天間吉異説を巡る一連の動きのニュースの中でも1日に何回も出てきます。書かれた原稿を「読む」文体でなら「地元住民」で、おそらく違和感はないのですが、顔を出して「しゃべる」となると、ものすごく違和感を覚える言葉なんですね、これは。

(2010、5、13)

2010年5月13日 21:51 | コメント (0)