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『道浦TIME』

新・ことば事情

3915「『ぶり』と『っぷり』」

峰竜太さんの奥さんの海老名みどりさんの様子をさして・・・

「鬼嫁っぷり」

という言葉が、「ミヤネ屋」の原稿とテロップで出てきて、違和感を覚えました。いえ、「鬼嫁」の部分にではなく、「っぷり」という部分に違和感を覚えたのです。これは、

「鬼嫁ぶり」

ではないでしょうか?

うーん、これも芸能関連だと「許容」なのかなあ・・・つまり、もともと「っぷり」となるのは、

「飲みっぷり」「食べっぷり」「泳ぎっぷり」「走りっぷり」

のように「動詞の連用形」のあとに「ぶり」が付く場合に、促音便で「っぷり」となるので、「鬼嫁」という名詞のあとに「っぷり」が来ると、ちょっと私は違和感があるのですが・・・。「慣れ」の問題でしょうか?

と思っていたら翌週、今度はあの「大橋のぞみちゃん」が「コナン」の声優に!の話題で、

「声優っぷり」

という表現が。これも本来なら

「声優ぶり」

だと私は思います。そこでスタッフにこんなメールを出しました。

『先日、×「鬼嫁っぷり」→○「鬼嫁ぶり」に直したばかりなのに、また出てきました、「○○っぷり」。芸能ディレクターは、この「○○っぷり」という表現が好きなのですね。中には違和感のある「○○っぷり」がありますが、昨日読んでいた本、あの『負け犬の遠吠え』で有名なエッセイストの酒井順子さんの『女子と鉄道』という本の中に、なんと、

『「あまり豪快に寝るからこっちが恥ずかしい」と一緒にいる親をして言わしめるほどのド寝っぷりでした。』

というふうに、

「ド寝っぷり」

なる言葉を発見!うーん、この範囲まで来ると相当なものですが・・・「ド寝っぷり」が許されるのなら(まあ、品位はありませんが)「鬼嫁っぷり」「声優っぷり」なんて可愛いものだと思えました。どうしましょうねえ。次回の用語懇談会の会議で、各社の状況を聞いてみます。

・・・あ、でもわかったぞ!「っぷり」は、「ぶり」の強調だけど、どういう言葉に付くかというと、やはり「動作を表すもの=動詞」に付き、しかも「語幹が2文字以上のもの」に付く傾向があるんだ!だから「声優」「鬼嫁」のような「名詞」には付きにくく、また「ド寝っぷり」の「寝る」は動作だけど語感が「ね」の1文字だから本来は付きにくくて、違和感を覚えるんだ!語幹が2文字以上で、

「走りっぷり」「食べっぷり」「歩きっぷり」「読みっぷり」「勝ちっぷり」「負けっぷり」「投げっぷり」

など、動作に付く場合は、違和感がありません。』

皆さんはどうお感じになりますか?

                                                  (2010,4,6)

 

 

(追記)

その後も『女子と鉄道』(酒井順子、光文社文庫:2009、7、20・単行本は2006年11月刊)の129ページに、

「発売直後は、各キオスクで売り切れになる品が続出するほどの人気っぷりで」

と、

「人気っぷり」

が、また179ページには、

「乗車時に磁石で方位を確認しつつ、軌道のカーブっぷりなどを確認し『曲がってる!』などと思ったりするのがまた楽しいらしい。」

というように、

「カーブっぷり」

が出てきました。酒井さんは、「っぷり」がお気に入りのようです。

 

 

 

(追記2)

『クマと闘ったヒト』(中島らも&ミスター・ヒト、メディアファクトリー:2010、8、25。単行本は2000年刊行)を読んでいたら、元・相撲取りでその後レスラーになった龍虎さんについての解説文で、

「『料理天国』などの番組で、グルメっぷりを発揮。」(119ページ)

というように、らもさんの筆と思われますが、

「グルメっぷり」

というのが出てきました。2000年に刊行ですから、10年前ですね。

 

 

 

 

 

 

 

(2010.4、6)

2010年4月 7日 12:27 | コメント (0)