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『道浦TIME』

新・ことば事情

3910「クリック音」

最近のコマーシャルを見ていると、CMの最後のほうで、長方形の窓にそのメーカーや製品の名前が書かれていて、その横のところのボタンを「カチッ」とクリックするシーンがあります。コメントは付きません。音声は

「カチッ」

という「クリック音」だけです。この意味合いはもちろん、

「くわしくは、ホームページを見てね」

という意味ですよね。この手の広告、初めの頃はナレーションが付いて、

「くわしくはホームページで。http://●●●」

と、アドレスを全部読んでいたりしました。その次には、

「くわしくはウェブで」

となって、このときの「ウェブ」は「平板アクセント」の、「ウ/ェブで」。そして現在の主流は「カチッ」というクリック音だけに。音だけで、意図するところが判るなんて、

「パブロフの犬」

みたいなものですよね。すごいなあ、CMの反復作用というのは。

これによく似たものは、以前もありました。そう、「薬のCMです。

「ピンポーン♪」

という注意を喚起する音のあとに、

「薬は用法・用量をお守りの上~・・・」

とくわしくしゃべっていたのに、最近は、

「ピンポーン♪」

だけ。しかもその擬音を、

「人に口で言わせている」

ケースも出てきています。

「薬は用法・用量をお守りの上~・・・=ピンポーン」

という等式が成り立っているのです。しかしそれに慣れてくると、新たな注意喚起の方法として、最初のような長いセリフの注意事項を早口で言わせたり・・・。

コマーシャルの表現方法の歴史を研究したら、それできっと論文が書けるような気がしてきました。

 

(2010、3、29)

2010年3月30日 11:53 | コメント (1)

コメント

2007年秋の発表なので既にご存知かもしれませんが、博報堂らが分析したところ(http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/2007/HDYnews071010.pdf)
によれば、『「音声や効果音での注意喚起がなされていない広告」については、“検索窓”を表示している効果はほとんどない』とのことです。これでクリック音付きのCMが増加したのでしょうか。

投稿者: くもの巣 日時:2010年03月30日(火) at 21:12