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『道浦TIME』

新・ことば事情 3785

「120分おくれ」

 

今年6月、甲南大学へ向かう途中のJR大阪駅での出来事。

何でも、滋賀県内のJR東海道線で人身事故があった影響で、JR神戸線が遅れているとのこと。それはまあ仕方がないといえば仕方がない。(ただ、JR神戸線とJR東海道線に直通電車を走らせて、大阪駅で乗り換えなくても良い「便利」を追求した結果、どこか遠いところ(滋賀県)で事故がおきると神戸まで影響が出る。大阪駅で乗り換えにしておけば、神戸線には影響は出なかったはず、という構図はありますが。)

私が文句を言いたいのはそれではありません。その事故の影響で遅れている電車の時刻表示(案内)に関してなのです。

もう半年経って怒りは薄れているとは言え、こうやって書いていたら、またフツフツと怒りがこみ上げてきた。怒りの記憶というのは、時間を置いても再生しますね。

「遅れ」の表示および構内放送アナウンスでは、次のようなものでした。

 

「次の列車は、750分発の○○行き。120分おくれです」

 

「120分」遅れ?いまさら750分発(予定だった列車)が来ようが何時発の列車が来ようが関係ない、とにかく、なかなか来ない電車が来てくれれば、お客はいいはず。これがもし指定席券を持っていないと乗れないような「特急」だとか「飛行機」であれば、「何時発の便」ということは重要ですが、普通の快速電車だったり普通電車であるわけです。予約をして乗るわけではありません。何時発であろうが、来た電車に乗る。都会で、5から6分おきに来る電車を利用している者にとっては、ごくごく当たり前の行為です。1時間に1本しか電車が来ないところは、「何時発」が重要な情報かもしれませんが。

そんな中で750分発だった電車が2時間遅れで到着します」という情報は、お客を安心させるどころか、かえって腹立たせるのではないでしょうか?2時間も遅れるほどダイヤが乱れていてなかなか電車が来ないときに、お客が欲しい情報は、

「何分発だった列車が何分遅れで到着するか」

ではなく、

「次の電車は、いつ来るのか」

ということです。これが「2~3分」とか「5~6分」の遅れなら「○分おくれ」という情報に価値がありますが。

ダイヤを何より大事に考えているあまり、「もともとの発車時刻」にこだわるあまり、こういった発想のアナウンスをしてしまうのであって、「お客が何を欲しているか」を考えれば、こういった案内は出来ないはずです。

京阪電車は、人身事故などの場合には、電車の表示板を止めています。そして、

「あと何分で、どこ行きの電車が到着します」

というような「お客の立場にあった放送」をしています。JRは、これを見習うべきではないでしょうか?緊急時にもダイヤに縛られた発想をしていると、また間違いを犯しかねない気がします。

 

(2009、12、10)

2009年12月25日 13:04 | コメント (0)