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2016 11.02

ヘッドマウントディスプレイと共に過ごし15年—塚本昌彦が語る、“ウェアラブル”が普及する為に必要なこと

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最先端テクノロジーとオープンイノベーションをテーマとした読売テレビのスペシャル番組『ハッカテン』出演者・関係者へのインタビュー。

今回は、身体に装着するデバイス=ウェアラブルデバイスを特集した10月7日の放送のゲスト・神戸大学大学院工学研究科教授 塚本昌彦氏へのインタビューをお届けする。

ウェアラブルに関する研究のパイオニアであり、自らも2001年3月以来、ヘッドマウントディスプレイおよびウェアラブルコンピュータの装着生活を実践。大学院での研究のみならず、特定非営利活動法人ウェアラブルコンピュータ研究開発機構(理事長)や、神戸市のウェアラブルデバイス推進会議などでの活動にも参画。Google GlassやApple Watchなどの登場により、近年注目を集めるようになったウェアラブルデバイスの現状や、普及する為に必要なことを聞いた。

塚本氏も登場!10月7日放映回の見逃し配信はこちらから!

ーまずは、本日もかなりの数のデバイスを装着されていますね!いつも、いくつのデバイスを装着されているのでしょうか?

塚本: ウォッチを5つ、ヘッドマウントディスプレイを1つですね。プルプルと来た時に何が起こったかが分かるように、つける位置も決めています。

ーこれだけあると、充電も大変じゃないですか?(笑)

塚本: エラいことになっていますね(笑)。特に出張先では大変です。充電しやすいように10口のUSBアダプタをいつも持っていますよ。ちゃんと配置しないと、机の上が大変なことになるので。

作る側も使う側も、ウェアラブルデバイスにまだ慣れていないのでは

ー15年前から「ウェアラブルが来る」と提唱されてきた塚本さん。当時と今の環境の変化についてはどのように感じられていますか?

塚本: PCはもちろん、携帯電話も15年前から大きく変化しました。そもそもスマホもなかったですよね。デバイスの進化により環境が整ったことが一番大きいです。2001年当時はノートPCを腰につけていましたから、多くの人は「何やこれ」という感じで見ていたように思いますが、今はコンピューターを持ち運ぶということが普通になりました。

画像提供:塚本昌彦氏

ー今のウェアラブルブームにおける課題はありますか?

塚本: ここ4、5年、ちょっとブームかなと思ったのですが、まだやはり難しいことも多いです。それはデバイスの重さ、使い方、バッテリーの持ちといった面もそうですし、どういう使い道に実用性があるかということもまだ分かっている人が少ないのです。つまり、作る側も使う側もまだ慣れていないのが現状だと思います。使い方をマスターする人が出てくれば、そういう人を中心に使い道が広がっていくのでは?と思います。

Google Glassも話題になりましたが、バッテリーの持ちは課題でした。実用性を捨てて使い道を示すという点に注力したとみることができます。実際それには成功したと思います。

「こういう時にこれをつける」デバイスが沢山出てくる

ーより多くの人がウェアラブルデバイスの使い道を理解するようになったな、と感じた事例はありますか?

塚本: Apple Watchではないでしょうか。いくつかのわかりやすいアプリケーションが示されました。ただ、着けてみても使いこなせず、着けなくなってしまう人が多いようです。最近出た第二弾はいろいろと良くなったようですが、見た目があまり変わらないので話題性が低いところがあります。ウォッチ型のデバイスはこれからもユーザーが増えていくのではと思います。

また、体のどこかに付けて何かに特化させた専用のデバイスも増えていますね。例えば「SAMURIZE」(EXILEなどLDH所属アーティストのステージやMVで活躍する、覆面LEDパフォーマンスチーム)が着ている服は踊る時専用で、今までになかった身体表現を実現していますよね。他にも赤ちゃんの服に貼って体温の変化や空腹が分かれば便利でしょうし、ボクシングやアメフト等のスポーツをする時に頭に取り付けて、頭を打った時に振動が大きいとLEDの光が変わったり。いくつかの会社からそういった商品が出てきているように「こういう時にこれをつける」というデバイスがこれから沢山出てくるでしょう。

ー注目しているデバイスはありますか?

塚本:ポケモンGO Plusですね。ポケモンGOのようなキラーコンテンツと(デバイスが)ペアになって、使い方と必然性が伴っていれば広まっていくのではと思いました。ゲームをやっていないときでもアイテムを集めたり、歩数を稼げたりするのは、楽しいというよりむしろ便利グッズなんです。楽しむのはモバイルのアプリですればいい、この「別に楽しくない」ということが発見で、すごいなと思いましたね。こういうパターンもありなんだと。

近いうちにApple Watch等のスマートウォッチにも対応する見込みですので、スマートウォッチを再び皆が身に着ける契機になるかもしれません。

スポーツや介護など、神戸の街を舞台にウェアラブルの実証実験

ー2015年よりスタートした神戸市のウェアラブルデバイス推進会議に参画されていますが、そのきっかけについて教えてください。

塚本: 12年前に神戸大に着任したときに、「ウェアラブルを神戸から」と提唱し、神戸のベンチャーの方や市の方と繋がって、いろいろな取り組みをしてきました。最近特に神戸市でウェアラブルデバイス推進会議という有識者会議が立ち上がり、プロモーションの動きが加速しています。元々港町・神戸という街は、コーヒー、ジャズ、サッカーなど、あらゆる新しいものや文化の発祥の地です。ウェアラブルを通した豊かで楽しい暮らしのスタイルも神戸から立ち上げるのが一番いいだろうなと思っています。5〜10年後にはひとつの文化として、ウェアラブルデバイスがないと生活が成り立たないという位までなっているといいですよね。

ー神戸で最初にウェアラブルについて取り組んだのはどのような機会ですか?

塚本:神戸に来たのは2004年で、その前からウェアラブルには取り組んでいましたが、神戸ベンチャー研究会で講演の機会を頂いたのち、ルミナリエでの取り組み「イルミネこうべ」(2005年)プロジェクトが決まったのが最初です。

ーこれまでの成果と改善点について教えてください。

塚本: ルミナリエでは電飾服のファッションショーをしました。その後、電飾服でのダンスショーに変わりました。最初は失敗ばかりでしたが、継続するうちにシステムがよくなっていきました。それがいまSAMURIZEとして研究室からベンチャーが立ち上がりビジネスになったきっかけになりました。もうひとつ、募金箱を光らせる演出もしています。ルミナリエに来られた方は知っていると思いますが、他ではあまりないようですので、そうではない人は見たことがないかもしれませんね。

画像提供:塚本昌彦氏

ーウェアラブルデバイス推進会議で進めている大きな実験として、神戸マラソンでの取り組みがありますが、ウェアラブルとスポーツはやはり相性がよいのでしょうか?

塚本:そうですね、スポーツこそ人間の極限にあって、かつデスクトップでコンピュータを使うという状況から一番遠いという状態です。下手をするとウェアラブルデバイスは邪魔になる。こういう時に”使える”ようになると本物だなと思いますね。

実践した一番の機能はペースをキープしながら目標を狙っていく為のスピードやタイムの表示ですね。加えて地点情報、さらに次回出来るか分からないですが、仲間の情報まで出せたら面白いですね。走っている仲間が目の前にいるよとか、応援している沿道の友達の情報など。走っていると気づかないこともありますから。

神戸市のウェアラブルデバイス推進会議以外での活動として)大阪マラソンでは、サングラス型デバイスを通して友達から送られた応援ツイートが見られるという仕掛けをやりましたが、これはよかったですね。

ー神戸では、介護における実証実験もされていますね。

塚本: 被介護者と介護者、両方にとっての使い方があります。被介護者は自分が今どこにいるかという情報を関係者にわかるようにすることや自分の体調の管理ですね。毎日の運動や散歩を促進するために活動量計をつけて記録をとることは有用だと思います。介護者の方は、全身を使って介護している中でヘッドマウントディスプレイを付けて、介護者の情報を見ることが出来るという点が有用だと思われます。

ー神戸において、今後はどのようなシーンでウェアラブルを活用していきたいですか?

塚本: 観光ですね。ウェアラブルデバイスを使うのは観光客とサービスする側の両方です。観光客は観光情報、サービスする側は観光客とのやりとりです。後者では外国人観光客の音声をそのままネットを通して翻訳してデバイスに出す、という使い方がよいのではと思っています。

また神戸は医療産業やロボット産業も盛んなので、その動きとも繋げていきたいです。

ー最後に、ウェアラブルの普及のため、広い層が使いこなすために必要なことは何だとお考えですか?

塚本: やはりカジュアルなコミュニケーションの中で使用されるようになることですね。それこそ友達と食事している時にも使いこなせるような、そういう環境を整えることだと思います。

塚本昌彦(つかもと まさひこ)

1987年3月  京都大学工学部数理工学科卒業

1989年3月  京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修士課程修了

1989年4月  シャープ株式会社入社、研究開発に従事

1995年3月  大阪大学工学部情報システム工学科講師

1996年10月 大阪大学工学部情報システム工学科助教授

2002年4月  大阪大学大学院情報科学研究科助教授

2004年10月 神戸大学工学部電気電子工学科教授

2007年4月  神戸大学大学院工学研究科教授(電気電子工学専攻)現在に至る

工学博士。ウェアラブルコンピューティング、ユビキタスコンピューティングのシステム、インタフェース、応用などに関する研究を行っている。 応用分野としては特に、エンターテインメント、健康、エコをターゲットにしている。 2001年3月よりHMDおよびウェアラブルコンピュータの装着生活を行っている。 NPOウェアラブルコンピュータ研究開発機構(チームつかもと)理事長 NPO日本ウェアラブルデバイスユーザー会(WUG)会長

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