Column Top

2016 08.05

Cerevo 岩佐琢磨が振り返る「ニッチ」「ネット」に触れた原体験と、起業前夜の頃

このエントリーをはてなブックマークに追加

最先端テクノロジーとオープンイノベーションをテーマとした読売テレビのスペシャル番組『ハッカテン』出演者へのインタビュー。

今回は、7月の放送で登場した家電スタートアップの旗手、株式会社Cerevo代表 岩佐琢磨さんに話を聞いた。

岩佐さんは宝塚(兵庫県)生まれ・木津(京都府)育ち。関西で過ごした学生時代の経験や、起業前後に捉えていた関西観などその半生を探りながら、「グローバルニッチ」を掲げ、革新的な家電を生み出している岩佐さんの考え方・背景に迫った。

「PSYCHO-PASS サイコパス」原作の世界観を忠実に再現したスマート・トイ「ドミネーター」のスタジオでの実演や、Cerevoオフィスへの潜入など、岩佐さん出演回の見逃し配信はこちらから!

「ニッチ」なコミュニティや、インターネットに触れた原体験

ー岩佐さんはどのような幼少期を過ごされていたのでしょうか?

岩佐:「みんなと同じだと面白くない」というところに結構早くからたどりつきました。中学生の頃、みんなファミコンにハマっている中、ラジコンにハマって、社会人や大学生の方によるニッチなラジコン好きコミュニティにその時から触れていたんです。今とは違いインターネット前史の小中学生って、「マニアックな大人」に当たらずに過ごしていたと思うのですが、そういった大人に触れられたのはひとつ大きな経験でした。

みんながファミコンを持っていて、例えばスーパーマリオをとりあえずクリアできるだけでは強みにもならないんですね。スコアがいくつか、隠しアイテムをどれだけ取っているかなど競争になってしまうので。そんな中、学年で「俺とあいつだけがラジコンを持っている」となると、ヒエラルキーもないですし、それだけで友達にもなれたりしますよね。

ーインターネットにはいつから触れるようになったのでしょうか?

岩佐:その前にパソコン通信に触れるようになっていました。パソコン通信にひとたび繋ぐと、日本中の--まだ何十万人しかやっていない時代でしたが--新たな世界が見えるんですね。近所のラジコンコミュニティから、日本中。そしてラジコンだけではなく、鉄道や萌えといった、ニッチなコミュニティが一気に見えるようになり、「ニッチなコミュニティって、こういう構造になっているんだ」と知ることが出来て面白かったです。

そこからインターネットは単にエクスパンドしただけ、グローバルになっただけ、使うものがMosaicやNetscapeといったブラウザになっただけ、という感覚でした。ただ延長線上とはいえ、剣道をやってきた人が真剣を持ったような、確実な衝撃がありました。インターネット関係のことをやりたいなと漠然と思うようになったのが大学前後くらいですかね。

ー立命館大学に進学したあと、大学時代のご経験の中で印象に残っていることはありますか?

岩佐:東京のゲーム系の雑誌とオンラインでやり取りをして原稿を書いていたのですが、締切に追われて、編集部から「単位と締切、どっちが大事なんだ?」という話になったことですね(笑)。当時の経験で活きているのは、長い文章を論理的にわかりやすく、きちっとした日本語で書く、そして時に意図的にその日本語を崩すこと。このことは一生もののスキルだったなと感じています。今でも自分の会社のプレスリリースの文章はきっちり見ていますし、言語を組み立てる力を養えたので、話すことにも活きています。

ー就職活動時、パナソニックへの入社を決めた理由は何ですか?

岩佐:2003年入社で、就職活動をしていた頃が2001年なのですが、その頃にはもうドットコムバブルもはじけていて、日本でも楽天やヤフーなど、ある程度大企業になるところも出てきていました。つまり、インターネットは一周回ってしまっていて、今からインターネット界に入っても最初の面白いところは出来ないかと思ったんですね。実際はそうでもなかったんですが。

そんな中家電はまだインターネットに繋がっていない。これからインターネットに繋がっていくであろうというところに行けば、「0から1」の部分に関われるのではないかと思いました。

ーパナソニック入社後のご経験で、今に活きている点はありますか?

岩佐:一番良かったのは、守り、つまりどうやってリスクヘッジしていくかについて、とても勉強になったということです。例えば製品のヒンジ部分の強度試験をどのくらいでやるか、ロゴなどをどれだけ厳密に扱うか、特許をどのように守るか、など。何事もそうですけれど、最高を知ることが大事ですし、それを知ることが出来たのはすごく良かったですね。

もどかしかったことは、相対するものだと思っています。ディフェンスをしていても、他の新しい所が出てきてポンとやられるということも見てきましたから、それはもどかしい部分ではありましたね。

東京のスタートアップコミュニティと、関西の現状

ー起業しようと決めた時期のことについても振り返って頂けますか。

岩佐:社内では「これからはネットとの連携をしていかないといけない、でも方針としてはまだやらない」だったんです。「難しい機能はまだいらない、将来必要な時が来るかもしれないけど、来た時にやればいい」という感じだったので。もっと0から1を生む機能の実装、発売などに切り込んでいくことには関われないなと思ったんですね。これはどちらがいいかではなく、バンドで言う「音楽性の違い」だなと。そこで”脱退”を決めました。

ー関西拠点から東京拠点に移ったことで、変化はありましたか?

岩佐:実は退社前の最後1年も東京勤務でした。その頃(2006年頃)、ブログを始めたのですが、起業家、VC、ブロガー、インフルエンサー、マーケPRの会社…ブログの周りに集まっているのはこのような人達で、どうもこのコミュニティは、ネットがトリガーになってはいるものの、東京にしか存在しないなと気づいたんです。

その時、このあと起業するにしても転職するにしても残るにしても、ネットでブーストされたこの東京でのコミュニティの中で仕事していこう、ということは決めました。

ー関西など地方で企業に務めていて、当時の岩佐さんのような想いを抱いている方もいるかもしれません。今の時代にアクションを起こすとするならば、どうすればいいでしょうか?

岩佐:最も成功確率が高いのは、東京のスタートアップ、VC、メディアコミュニティに頭を突っ込むことじゃないかなと思っています。当時より東京以外も状況はよくなっているとはいえ、現在でも一番早いです。

東京かそうじゃないかで結構大きい面が「人が辞めない」こと。スタートアップをするにしても人が集めづらいですよね。やはり東京以外では「大企業で働いています」という方が、複合的な意味で「かっこいい」と捉えられることが多い。東京でももちろんスタートアップのリスクについて言う人もいますが、ポジティブなフィードバックが返ってくることが多いんですね。そもそもスタートアップで働いている人が多いので、渋谷、六本木を歩いていればそういう人にあたるわけです。実例が多いことは、恐怖感が少なくなるので、大きいなと思っています。

ー特に関西の現状を踏まえて、岩佐さんなりの「もっとこうなってほしい」という想いはありますか?

岩佐:関西ならではの強みを出していくことですかね。例えば京都だと観光が強い。その土地しかないことがベースになってイノベーションが起きるということはアリかなと思います。

例えばウェアラブルカメラのGoPro。本社に行ったことがあるんですが、カリフォルニアの、サンフランシスコから少し離れたサーフィンの名所にあります。いわば「鎌倉で起業した」ような感じなんです。その辺にサーフボードが置いてあって、社員が海からあがってきてシャワールームに行って、そこから仕事するようなオフィスでした。海沿いのそんな環境だからこそGoProが出来たんだろうなと思いました。でも一方でそこに固執してもうまくいかないです。GoProもマーケティング部隊をサンフランシスコにがつっと構えています。スケールしていく中で必要な舞台に構えていく、そういう仕組みがあってもいいかなとは思いますね。

関西は地場でしっかりした企業が沢山ありますよね。個人的にすごく期待したいのが、彼らの資本力やノウハウを使って、新しい事業が生まれないかという点ですね。

当たり前のものを見直すのが好き—ラジオ「Hint」

ー最後に、最近のCerevoさんのオススメプロダクトを教えてください。

岩佐:ラジオ局さんたちと一緒に作った新型ラジオの「Hint」ですね。

無指向性スピーカーを内蔵し、部屋のどこにいてもクリアな音で聴くことができます。またこの製品が面白いのは、ラジオパーソナリティがスタジオでポチっとボタンを押してDTMF音(電話のダイヤル音)が流れると、それが一回「Hint」の中のBLEビーコンでデータ変換され、その周りにいる人達のスマホにURLが自動転送されるようになることです。スマホでは別途アプリなどをダウンロードしなくてもよい点も特徴です。

8個口の電源ポートを内蔵し上部カバーで覆い隠すことができ、スマートフォンやタブレットから制御する電源タップ「OTTO」なんかもそうなんですが、トラディショナルなもの、当たり前のものを見直すのが好きなんです。

ー岩佐さんがどのようなイノベーションを起こしていくのか、これからも楽しみにしています!ありがとうございました。

岩佐琢磨
株式会社Cerevo 代表取締役CEO

1978年生まれ、立命館大学大学院理工学研究科修了。パナソニックを経て2008年に株式会社Cerevoを設立、代表取締役に就任。世界初のライブ配信機能付きカメラ『CEREVO CAM live!』やPCレスのライブ配信機器『LiveShell』シリーズ、 自動変形型ドミネーターなどを開発し世界50カ国以上で販売。

イノベーションの発火点を目撃せよ!:ハッカテン(シーズン2 放送決定!)

連載記事

2016.12.26IoT×靴「Orphe」アパレルからアーティストまで 広がるコラボレーションの可能性
2016.12.06グッドデザイン賞 金賞も受賞
乾電池×IoT「MaBeee」一般発売後の反響・構想
2016.11.02ヘッドマウントディスプレイと共に過ごし15年—塚本昌彦が語る、“ウェアラブル”が普及する為に必要なこと
2016.10.04神戸市がスタートアップ支援を行う理由と、500 Startupsとのプログラム実現に至るまで
2016.09.05ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」・自社クラウドファンディング「First Flight」はどのように生まれたのか
2016.08.31クラウドファンディングで1億円超の支援!スマートウォッチ「wena wrist」ソニー入社3年目の開発者が語る秘話
2016.08.16Makuake 坊垣佳奈が語る これまでのキャリアとクラウドファンディングにおける”サポート”の重要性
2016.08.05Cerevo 岩佐琢磨が振り返る「ニッチ」「ネット」に触れた原体験と、起業前夜の頃
2016.08.03How to enjoy "ハッカテン"--8/5(金)放送では、クラウドファンディングの最新動向を特集!
2016.07.22海遊館×ハッカテン「番組を、継続した企画のきっかけに出来ると良い」
2016.07.20角勝(Filament Inc.)×ハッカテン「”日常をテクノロジーで変えることができる”と気づくきっかけに」
2016.07.15関治之(HackCamp)×ハッカテン「関西はコミュニティの熱量が高く、スピード感もある」
2016.07.13黒田有彩×ハッカテン「近い将来の”当たり前”を、一足先に楽しめる番組」

Back