第45回衆議院選挙は民主党の圧勝、自民党の歴史的大惨敗と言う結果になった。民主党308、自民党119という数字は事前のマスコミ各社世論調査通りだったが、ある程度の揺り戻しを想定していた私は正直戸惑いながらこの数字を見つめていた。
私は投票日前日、大阪4区に行き民主党候補の吉田治さんと話す機会があった。吉田さんは4年前の小泉郵政解散総選挙の逆風で議席を失い、捲土重来を期して連日地元を走り回っていた。「今回は追い風のようだね。」と声を掛けると吉田さんは緊張した顔で「本当に皆さんが投票してくれるんでしょうか?」と問いかけてきた。4年間浪人生活を送って辻立ちを重ねて来たことを考えるといくら有権者の反応が良くても結果が出るまではと言う期待と不安の織り交ざった心境は痛いほど理解できた。
結局、民主党の吉田さんは4年ぶりに小選挙区で当選し、対立候補で自民党の前職の中山泰秀さんは議席を失うことになった。小選挙区である以上オセロゲームのような戦いは今後も続くことになる。
大阪市内の取材の終えた私は選挙戦の最後の瞬間を兵庫県尼崎市で迎えた。兵庫8区は公明党のベテラン冬柴鉄三さんに新党日本の田中康夫さんが挑んだ全国的な注目区となった。田中さんは選挙戦の最後をマンションの立ち並ぶ新興開発地域で迎えていた。マンションに向かってスピーカーで話しかけている田中さんを見て、正直効率が悪いのではと思っていたが暫くするとベランダのあちこちに赤ちゃんを抱えた若い夫婦が目立つようになってきた。そのうちの幾人かは1階に降りて来て田中さんと握手をしたり写真を撮ったりし始めた。私はその光景に従来の選挙戦とは何か違うものを感じながらその場に立っていた。そしてその違和感は冬柴さんの最後の訴えの会場でも感じることになった。
冬柴さんは阪神尼崎の駅前で熱烈な支持者を前に訴えた。よそ者に尼崎は任せられないとの趣旨の言葉が応援の弁士からも飛び交っていたし、冬柴さんも私に「多くの人が来ているでしょう」と語りかけてきた。新興のマンションに呼びかける田中さん、従来の厚き後援者層に訴える冬柴さんだったが当選したのは田中康夫さんで冬柴さんは長年維持してきた議席を失った。今回の選挙は尼崎でも見られるように従来の支持基盤に頼った自民党、公明党が多くの議席を失い、「政権交替」を前面に打ち出し従来の政治からの脱却を訴えた民主党が浮動層をはじめ多くの有権者の支持を集める結果になった。有権者の多くは今回の選挙に従来型の政治体制では日本の行く末には希望が持てないと判断した。その不信不安の塊の大きさは、与党はもとより私たちマスコミが想像した以上のものだったと認識している。55年体制、従来型の政治に私たちマスコミも拘泥してきた部分があったのかもしれない。
民主党は政権発足に向けて連立協議などに取り組んでいる。結果が出た以上民主党は国民と約束したマニフェストの実現に真摯に取り組まなければならないし、野党に転じた自民党も惨敗の現実を全身で受け止め根本的な出直しを図る必要に迫られていることは間違いない。攻守入れ替わった民主、自民ともに最早中途半端は許されない。