何ともすっきりしないニュースである。千葉法務相はきのう東京拘置所で2人の死刑囚に対して死刑を執行したと発表した。民主党政権になって初めての死刑執行である。因みに、死刑囚は死刑という罪が確定しているので刑務所ではなく、本来は未決(まだ刑が決まっていない)の被疑者、被告人が収容されている拘置所にいるのである。死刑も拘置所内で執行される。
千葉法務相は先の参院選で落選したので議員の身分を失い民間人の大臣となった。死刑執行の命令書にサインしたのは議員としての任期が切れる直前の今月24日だった。千葉法務相は死刑廃止議員連盟に籍をおいていたことがあり、元々は死刑に反対する立場をとっていた。去年の9月に法務相に就任以来、死刑を一件も執行していないと批判する声があったが、参院選が終わり議員でなくなるというタイミングでの執行である。
そもそも、選挙で負けた人がなぜそのまま大臣をやっているのか、はなはだ疑問である。ご本人も敗戦の弁で述べていたように、有権者が「もういいのでは」と判断したのである。その人を交代させることなく、9月の民主党の代表選で菅首相が再選されたら行うであろう内閣改造までそのままやらせるというのが理解できない。有権者をバカにしているのではないか。
もっと言うなら、死刑に反対しているような人をなぜ法務大臣にするのだろうか。もちろん色々な考え方があるのだから、死刑廃止論を否定するつもりはない。死刑の存廃については大いに国民的議論をやればいいと思う。しかし、現状では日本には死刑制度があり、刑事訴訟法では、再審請求されている場合などをのぞき判決が確定してから6ヶ月以内に死刑執行するよう定められている。しかし、自民党政権でも実際には長い間執行されないことも多く、刑が確定した死刑囚の数は今回の執行前には109人となり、これまでで最高水準となっていた。
法治国家の法務行政のトップである法務大臣が法律を守らないということは許されない。死刑執行の命令書にサインするつもりのない人が大臣になるべきではないし、そのような人を任命すべきでない。
大臣本人は、今回の死刑執行と選挙結果との関連について「まったくない」と否定したが、このタイミングの執行では説得力がない。
また大臣は死刑についての勉強会を設置することを明らかにしたが、この10ヶ月間いったい何をしていたのだろうか。なぜ、今さら勉強会なのだ。就任してすぐにでも始めるべきだったのではないか。
大臣は死刑執行に自ら立ち会ったということで、歴代の大臣で初めてだとみられている。死刑執行が行われる刑場についてもメディアに公開する方針だという。これまで死刑に関して法務省は秘密主義を貫き情報を公開してこなかった。執行された死刑囚の名前を公表するようになったのは2007年だ。死刑の存廃について国民的議論をするなら、その前提として死刑に関する情報公開を進めるべきだろう。
死刑については私自身、複雑な思いはある。冤罪の可能性を考えると、死刑制度を廃止して終身刑を導入すべきだとも思うが、その一方で被害者の遺族の気持ちを考えると死をもって罪を償うべきだとも思う。もしも自分の身内が被害者になったら犯人には極刑を求めるだろう。無期懲役といってもいずれ出所してくる現在の制度では、死刑制度存続は止むを得ないと思う。
この死刑執行は明らかに、政権による「恣意的」な執行でしょう。これまで死刑制度に反対してきた法務大臣が、一転、死刑執行にGOサインを出し、更には執行にまで立ち会ったというのは唐突で不自然。
「死刑制度そのものを慎重に議論すべき」と言いながら、昨年9月以降なんの活動もせず、法務大臣の責務である死刑執行へのサインをも拒否してきた千葉大臣。そもそも、法務大臣に任命される前に辞退すべきだった。自身の信条で死刑を認めないならば、法務大臣になるべきではなかった。
ところが、今回、突然の死刑執行。
まるで死刑囚を政治のボードゲームのコマのごとく扱うその様は、あまりにも露骨で、現政権の傲慢さを見せつけている。
私個人としては死刑制度は存続すべきだと思うし、実際、国民の8割が容認している。どうしても許せない犯罪というものが世の中にはある。死刑は刑罰ではなく、報いだと思う。
色々な意見があるのは当たり前で、議論すればよいと思うが、今回の一件は、議論する以前の問題。