10年3月15日(月)「#988 ハート・ロッカー」

  アメリカのアカデミー賞で作品賞や監督賞など最多の6部門で受賞した「ハート・ロッカー」は思っていたとおりの映画だった。イラク戦争でのアメリカ軍の爆弾処理班の過酷な現状を描いた映画である。
  アカデミー賞では史上最高の興行成績を更新中の娯楽大作「アバター」と、この「ハート・ロッカー」が作品賞や監督賞を争った。両映画の監督が元夫婦なだけによけいに注目を集めていたのだ。
  「ハート・ロッカー」はアメリカ軍の兵士の活躍や苦悩などをドキュメンタリー・タッチで描いた意欲作だ。人と人が殺しあうという戦争の過酷な現実を扱っているが、女性監督だけにこれでもかという過剰なまでの暴力シーンは見られない。とは言っても、戦争の悲惨さは充分伝わってくる内容で、なぜアメリカ軍はここまでイラクに介入してイラク国民に嫌われているのかと考えさせられる内容ではある。
手持ちのカメラでの撮影が多く、画面が常に揺れているのが気になり少し疲れるが、2時間ちょっとの上映時間はあっという間に感じた。飽きさせることのないストーリー展開だ。
  日本人にはなかなか実感できないことだが、アメリカでは国のために命を捧げる兵士という存在に対する尊敬がとても大きいのだ。そういった意味では、この映画がアカデミー賞で大きな評価を得たことは理解できるが、作品としてアカデミー賞の作品賞に相応しいかどうかは意見の分かれるところではないだろうか。
  アカデミー賞では娯楽大作が軽く見られ、メッセージ性の強い社会派の作品が評価される傾向があるが、今回はまさにその典型だと思う。監督賞も作品賞も個人的には「アバター」にあげたかったと思う。
  日本人である私はこの「ハート・ロッカー」を見て、イラク戦争に突入し泥沼にはまったアメリカの苦悩を読み取ったが、アメリカ人は国の為に最前線で働く兵士たちの勇気を讃えるのではないのだろうか。その意味では、アカデミー賞はやはりアメリカの映画賞なのだとあらためて実感させられた映画である。

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春川正明

はるかわ まさあき
1961年5月5日生まれ
讀賣テレビ放送
報道局解説副委員長
ロサンゼルス特派員、
チーフプロデューサー、
報道部長を経て07年より現職。
関西学院大学非常勤講師
大阪市出身