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#7036月25日(日) 10:25~放送
アメリカ・ラスベガス

 今回の配達先は、アメリカ・ラスベガス。ここでエアリアルパフォーマーとして奮闘する山本麻以さん(36)へ、東京都で暮らす父・篤さん(67)の想いを届ける。
 世界最高峰のショーが数多く上演される、エンターテインメントの聖地・ラスベガス。麻以さんはトレジャーアイランドホテルで行われているシルク・ドゥ・ソレイユのショー「ミスティア」に出演している。演じるのは、全長20mもの布を体に巻き付けながら、地上10mを超える高さでパフォーマンスを繰り広げる「エアリアル・シルク」。布を美しく、かつ自分の体の一部のように見せることが醍醐味だという、サーカスでも花形の演目だ。
 ミュージカル俳優だった両親の影響で、幼いときはジャズダンスを習っていた麻以さん。小学3年生からはシンクロナイズドスイミングを始め、オリンピックを目指して練習に明け暮れていた。そんな頃、父の勧めで初めて見たのが、ラスベガスで行われていたシルク・ドゥ・ソレイユの公演「O(オー)」。シンクロパフォーマーが活躍する舞台にオリンピックの夢も吹き飛ぶほどの衝撃を受け、「ショーの世界に行きたい」と、すぐさまオーディションに挑んだ。だが、実際にステージに立てたのは4年後の2009年。しかも控えのメンバーとしてだった。そこでシンクロ以外にも強みを持とうと、エアリアル・シルクを習得。オーディションを受け直し、エアリアル転向後も控えメンバーの契約ではあったものの、くじけず舞台に立ち続けた。そして最初のオーディションから実に17年。2022年にようやく「ミスティア」のレギュラーメンバーとして正規雇用されたのだった。
 「ミスティア」はラスベガスで30年ものロングランを誇るショー。世界トップレベルのパフォーマンスが次々と繰り広げられる中、麻以さんのメインアクトは5分間にわたるひとり舞台で、華麗なエアリアル・シルクで観客の視線を一身に集める。全身全霊を傾けたステージを下りると激しく息が上がり、疲労困ぱい。しかしすぐに衣装を着替え次は脇役として舞台に出演する。こうして1時間半に及ぶショーは熱狂のうちに幕を降ろすも、45分後には次のステージが開幕。1日2公演を終えて自宅に帰るのはいつも日付が変わる頃になるという。
 2009年から2年間、シンクロパフォーマーとして「O」に参加していたが、レギュラーメンバーが復帰したことで出演の機会を失い、帰国。ちょうどその頃、母の病気が発覚したため、ラスベガスへの思いは胸にしまい看病を優先していた。そんな娘に、母は「病人扱いしないで」と告げたという。麻衣さんが舞台に向けて行動する姿に「未来を感じる」という母の言葉に、「自分の役割はお母さんに病気を忘れさせることだ」と感じ取った麻衣さんは再び挑戦を決意。本格的にエアリアル・シルクを学び直し、見事「ミスティア」のオーディションに合格したのだった。その後、両親がラスベガスまで来てステージを見てくれたそうで、母も「生きる気力になった」と喜んでくれたという。父・篤さんは当時の状況について、「(妻は)がんセンターに通っていたんですが、痛み止め以外の治療を終了することになった。でも『どうしてももう1回娘に会いに行きたい』というので、『じゃあ行こう!』と。足もだいぶ悪くなっていたけど、行ってよかったです」と振り返る。
 母に背中を押され、掴み取った夢のステージ。今は少しでも長くその場所で輝き続けたいと願う娘へ、父からの届け物はオレンジ色に染められたエアリアル・シルクの布。しかも、父が自ら絞り染めに挑戦したものだった。手紙には、色に込めた意味や娘へのエールが綴られ、涙ぐむ麻衣さん。「自分だけ好きなことをしていて本当によかったのかなと思っていたし、母も本当は行ってほしくなかったのか本心はわからないですが、でも“これでよかった”って思ってもいいのかなって…。好きにやらせてもらって、『ありがとうございます』ということに尽きます」と、父に感謝を伝えるのだった。