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#6841月29日(日) 10:25~放送
モンゴル

 今回の配達先は、モンゴルのウランバートル。柔道のモンゴル代表チームに所属し、選手のサポートに奮闘する錦戸雅俊さん(29)へ、熊本県で暮らす父・博之さん(59)、母・康代さん(55)の想いを届ける。雅俊さんが大学院に留学するのを機にモンゴルへ渡ったのは2016年。「本当は、大学院が2年で終わるので帰国すると思っていたんですが…できれば早く日本に帰ってきてほしい」と本音を漏らす博之さん。康代さんも「出て行ったときは英語もモンゴル語も喋れなかった。実際どういう風に選手と関わっているのか、仕事の様子を見てみたい」と息子を気にかける。
 近代的なビルが立ち並ぶ一方で、街のあちこちにゲルと呼ばれる遊牧民の伝統家屋が点在している首都・ウランバートル。その中心部に柔道の練習場であるモンゴル国立中央体育館があり、雅俊さんは柔道整復師とアスレティックトレーナーの2つの資格を活かして、総勢約200人の選手をサポートするセラピストとして働いている。
 小さい頃からスポーツが好きで、膝の痛みで接骨院に通ったことをきっかけに柔道整復学を学ぶ大学に進学。2年の時、研修で訪れたモンゴルで劣悪な医療環境を目の当たりにした。そこで、手術ではない方法でケガを治療する柔道整復学はまさにモンゴルで必要な職業だと感じ、大学を卒業するとモンゴル国立の医療系大学院に留学。在学中から様々なスポーツ選手のサポートに携わり、2019年に柔道モンゴル代表チームの一員となった。ここで出会ったツォグトバータル選手とは毎日施術するうちに親友となり、共に東京オリンピックに出場することが夢に。ところが、開催が近づいたあるとき、思いがけない出来事が起こる。オリンピックに帯同するメンバーのリストから突然、雅俊さんの名前が外されたのだ。ツォグトバータル選手は見事銅メダルを獲得したものの、その瞬間をそばで見届けることはできなかった。そして2022年、将来を考えた雅俊さんは帰国を決断するが、ツォグトバータル選手をはじめ多くのコーチや選手から強く引き止められ、現在はその熱い想いに応えるべく再び2024年のパリ五輪を目指している。
 ある日は人づてに依頼を受け、膝に悩みを持つ患者が暮らすゲルを訪ねた。モンゴルには雅俊さんのようなセラピストがいないため、クチコミやSNSで評判が広がっているのだそう。さらに出張施術で向かった先で待っていたのは、かつて日本の大相撲を支え、今は母国で幅広く活躍する元横綱の朝青龍さん。4年前、SNSで雅俊さんの出張施術を知った朝青龍さんが連絡を取り、交流が始まったという。異国の地で奮闘する姿を自分と重ねているという朝青龍さんは、東京五輪の夢が破れ落ち込んでいた雅俊さんを励まし、再びこの地で踏ん張ることを決意させてくれた1人でもあった。
 モンゴルに来て7年。いまやこの国にとって必要とされるセラピストに成長した息子へ、届け物は母が手作りした熊本産ショウガの佃煮。懐かしい実家の味を噛み締めた雅俊さんは、思わず涙ぐむ。さらに父からの手紙には、「雅俊は弱音を吐くタイプではないのでなかなかお父さんに話しにくいと思うけど、困ったことなどがあったらすぐに相談しろよ。これからも自分を信じ、しっかり前を向いて頑張れ。雅俊ならできる」と応援の言葉が綴られていた。実は、陸上自衛隊を定年まで勤め上げ、あまり家にいなかった父とはすれ違いが多く、雅俊さんは距離を感じていた。しかし後になって母から、父がどれだけ我が子に愛情を注いでいたかを聞かされ、心境に変化が。そんな中でもらった力強いエールに「できる気しかないです」と笑顔になる雅俊さん。そして、「父親から手紙をもらったり、ちゃんと会話をしたことはあまりなかったと思う。まさかこんな形で初めて父親の声を聞くとは…。ずっと想ってくれている、その期待には応えたいなって思います」と改めて奮起するのだった。