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#6586月26日(日) 10:25~放送
沖縄県・石垣島

 今回の配達先は、沖縄県の石垣島。魚専門の画家として奮闘する長嶋祐成さん(39)へ、大阪府で暮らす父・洋次郎さん(73)、母・ちづさん(74)の想いを届ける。
 魚の水彩画が専門で、どこか愛嬌のある表情の魚を華やかな色使いで描く祐成さんは、画家として活動を始めてから10年になる。作品集も出版し、毎年個展も開催。京都水族館では館内に絵が展示され、水槽で泳ぐ実物の魚たちの隣で彼が描いた水彩画が彩を添えている。「魚が好きで、魚を描きたいと思って絵を始めた」という祐成さん。特に魚にのめり込むきっかけとなったのがピラニアで、子どもの頃に本で読んだ牛をも食い殺す恐ろしい姿に恐怖心と好奇心が掻き立てられた。さらに百貨店のペットコーナーで実物を見ると、意外にも小さな体にますます興味が募り、親にねだって家でもピラニアを飼うように。この出会いがもたらした感動が、20年以上の時を経た今でも魚を描く原動力になっているという。
 京都大学を卒業後、熱くなれるものが見つからないまま就職。悶々とした日々をおくっていた頃、たまたま釣りに行ったことから魚への情熱が蘇り、絵筆を手にする。そして6年前、一念発起して退路を断ち、石垣島へと渡った。自宅兼アトリエを構える島の北部は、観光客が多く賑やかな南部と違って、美しい海と豊かな緑が広がるのんびりとしたエリア。絵を描く時は「自分で釣って触った方が、手触りがはっきり心の中に浮かぶ」といい、まずは海に出て釣り糸を垂らし、釣れた魚を手に取り写真に収める。サンゴ礁に囲まれた石垣島は魚の種類が多いため、祐成さんにとっては絶好の環境だ。アトリエに帰ると撮影した写真を食い入るように見つめ、魚に触れた時の記憶を蘇らせ、その魚が持つ個性を描き出す。実は絵画の勉強をしたことはなく、すべてが独学。試行錯誤の末、現在のスタイルに行き着いた。
 間もなく東京で開く個展に向けて描いた作品の1つは、「ガンテンメギス」という魚。実際に釣ったガンテンメギスから感じ取った青みがかった色、意志を感じる目などの特徴を捉えた絵は3日かけて完成した。こうして創作に打ち込む息子の姿に、「石垣島に行ったことがないので、どういうところに住んでいて、どういう作業場で絵を描いているか、彼の1日を見てみたい」と言っていた父・洋次郎さんも「感動ですね…最終的に何を目指しているのかなと思っていたけど、ちょっとわかったような気がしてよかったです」と安堵する。
 30歳を過ぎてからようやく見つけた自分の進む道。石垣島で日々愛する魚に触れその姿を描き続ける息子へ、両親からの届け物は、祐成さんが小学校低学年の頃に描いたピラニアの絵。添えられた父の手紙には「この一枚の絵は恐らく手元に残る君が描いた最初の魚の姿です。考えてみれば、この一枚の絵があっての今の君かもしれません」と綴られていた。祐成さんは、「子どもの頃、僕にとってピラニアは特別な魚だった。僕が一番大事にしないといけない部分をわかってくれていることに驚きました」と、原点ともいえる絵を届けてくれた両親の想いに感激する。そして「これからも挑戦し続けないといけないし、なまけてちゃいかんなと思います」と気持ちを新たにするのだった。