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#5441月26日(日) 10:25~放送
イタリア・トスカーナ州

 今回の配達先は、イタリア。トスカーナ州で自給自足生活をおくるブドウ農家の池田華依さん(32)へ、神奈川に住む父・智道さん(67)、母・幸江さん(65)の思いを届ける。幸江さんは「大都会で育ったので、何もない田舎で生活していくのは大変だと思うが、今は特に妊娠中。来年出産予定なので、どうしているのか毎日心配です」と娘の暮らしを気遣う。住職である智道さんも、「あんなところでよくやっているなと思う」と様子を気に掛ける。
 なだらかな丘陵がどこまでも続くトスカーナの美しい田舎町・モンタルチーノは、イタリアでも有数のワインの産地として知られ、世界中から愛好家が訪れる。市街地から車で30分ほどの場所にある「サンタ・ジュリア農園」は、華依さんの夫・ジャンルカさんの祖父が開いた農園で、広さは東京ドームおよそ2個分。家族と従業員2人で切り盛りし、ブドウの栽培から醸造、瓶詰めまですべてを自分たちで行っている。このワイナリーで生産しているのが、イタリア三大ワインの一つに数えられ「ワインの女王」と称される高級ワイン「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。モンタルチーノにあるおよそ250の農家だけが生産できる銘柄だ。ワイナリーでは一年で最も忙しい収穫の季節を迎え、3人目の子どもの出産を控える華依さんも時間の許す限りワイン造りを手伝っている。そんなモンタルチーノの農家では、代々自給自足生活が受け継がれており、義母が腕を振るう料理の食材もすべて自宅で採れたものばかり。生ハムを作るために豚を、卵と食用のために鶏を飼育している。華依さんが自らの手で絞めた鶏の肉は、自家栽培の香草で味付けしてグリルに。いつも家族全員が揃って、夕食の食卓を囲む。
 横浜のお寺の末っ子として生まれた華依さんは、幼いころから田舎暮らしに興味を持っていたという。やがて海外での生活に憧れを抱くようになり、25歳でイタリアへ。ツアーガイドとして働く中で出会ったのが、今の夫とモンタルチーノの美しい風景。「このぐらい綺麗な田舎って、世界でも探すのは難しいと思う。不便だけど、不便なんてどうでもいいぐらいもっと豊かなものがある」と魅了されたのだった。
 アメリカの有名ガイド本に掲載されたことで、ワイナリーには多くの観光客が訪れるようになった。華依さんがガイドとセールスを担当し、ワインの魅力を丁寧に伝える。ある日は、過去最高の40人もの団体客が来園。テイスティングをしてもらうだけでも一苦労だが、華依さんは空のグラスを見つけるとすかさず注いで回り、さらに義母の手料理を楽しんでもらうため、厨房と客のテーブルを何度も往復。そんな絶え間ないサービスのかいもあってツアーは大いに盛り上がり、ほぼすべての客がワインを購入していった。農作業、ワイナリーのガイド、家事に育児と何役もこなす華依さん。振り返れば自身の母も同じだったという。住職である父を陰でずっと支え続け、3人の子どもを一生懸命育ててくれた母。今も「母親のような母親になりたい。パーフェクトなお母さん像が自分の母親」と話す。トスカーナの田舎町に嫁いで5年。環境や家族、そのすべてが好きだという場所で忙しくも充実した日々をおくる娘へ、日本の母が届ける想いとは。