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#4981月20日(日)10:25~放送
カンボジア・プノンペン

 今回の配達先はカンボジア。首都・プノンペンでお菓子作りに奮闘する福原明さん(34)へ、神奈川県に住む父・大智さん(64)、母・友美さん(60)の思いを届ける。大智さんと友美さんは、40年前に難民として日本に逃れてきたカンボジア人。明さん自身は日本で生まれ、初めてカンボジアに渡ったのは6年前だった。友美さんは、息子からカンボジアに行くと最初に聞いた時「驚き過ぎて頭が真っ白になった」という。辛い経験を持つ母は大変さを訴えて渡航に反対したが、明さんは自分の目で現地を見ないと納得しなかったのだった。
 長い内戦の果てに、カンボジア中が焼け野原と化してから25年、ようやく復興を遂げた街の一角に明さんの自宅兼工房がある。現在のカンボジアで社会問題となっているのが栄養失調で、特に子どもの30%は慢性的な栄養失調状態なのだという。カンボジアの学校には給食がなく、一方で子どもたちは休み時間に売店のお菓子をよく食べていることから、明さんはお菓子を通して栄養に関する知識を広めたいと考え、2018年4月に菓子製造販売会社「NUM POPOK(ナム・ポポー)」を設立。製菓の経験はなかったものの試行錯誤を重ね、カルシウムが豊富な地元産の野菜を練り込んだ焼き菓子などを作っている。当初は、地元で食べる習慣がない食材を使用していたこともあり、全く売れなかったという。そこで母にカンボジア人の味の好みについて相談。今では徐々に買い手も見つかり、保育園や小学校に配達している。保存料を使わず作り置きができないお菓子がほとんどなのでこの半年間休みは1日もないが、味の問題はクリアできたので、今後は栄養面について子どもや親の理解を得ることが課題。最近ではお菓子の配達がてら、小学生たちに栄養の大切さを伝える講習も行っている。
 日本で生まれ育った明さんは幼い頃、自分はどこか他の子と違うことに気付き、母に尋ねて初めて自分がカンボジア人だったことを知った。学校でも難民の子どもというだけで特別扱いされるため、28年間なるべく隠れるように生きていたという。しかし、戦争がなければ生まれるはずだった国の言葉や文化も知らないうえ、行ったことすらなく「このままではだめだ」と感じるように。父にクメール語の教科書をもらったことから明さんは勉強を始め、6年前カンボジアへ語学留学。その後、NGOのボランティア団体で活動を続ける中で移住を決意した。そして幼少の頃の両親がいかに大変だったか、現地に来て初めて理解できたのだった。
 起業して半年。学校への配達販売のほか、ホテルや土産物店にもお菓子を置いてもらえるようになり、広報活動にも力を入れ始めている明さん。お菓子でカンボジアの子どもたちの未来を作りたいと奮闘する息子へ、カンボジア行きを強く反対していた母が届ける想いとは。