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#4829月16日(日)10:25~放送
フランス・ニース

 今回の配達先はフランス。ヨーロッパ屈指のリゾート地と知られるニースで、オーナーシェフとして奮闘する静岡県富士市出身の植田祐加さん(37)に、父・欣弥さん(70)、母・園美さん(65)、妹・麻友さん(33)ら家族の思いを届ける。
 19歳でフランスに渡った祐加さんは、2つ星レストランなどで修業を重ねた後、2006年にカンヌの5つ星ホテルで和食部門のシェフに就任。そこで、フレンチと和食を融合させた人気メニューを次々と考案する。そして7年前、それまでの経験を活かして自分の実力で勝負したいと、世界中からセレブが集まるニースに、和食ビストロ「Ma yucca」(まゆっか)をオープンした。フランス人の意見を否定して『これが“和食”だ』と押し通すよりも、1つのきっかけになってほしい、との思いを持つ祐加さんは、郷土料理の野菜煮込み・ラタトゥイユを味噌を使ってアレンジするなど、フランス人の味覚に合わせた和食を提供。その感覚が評判を呼び、店には地元の人々が絶えず訪れ、バカンスにやってきた観光客にはリピーターもいるほど。そんな店で一番の人気メニューが「まゆっか特製肉寿司」。軽くあぶったサーロインにフォアグラを乗せ、照り焼きソースをかけた一品で、甘辛い味付けがフランス人には新鮮なのだとか。ランチタイムはもちろん、35席ある店内がほぼ満席となった夜の営業でも、オーダーのほとんどが肉寿司。味に自信を持つ一方で、「いろいろなメニューを用意しているのに、他の料理を注文してくれない」とジレンマも感じている。
 祐加さんが料理人の道を決めたのは高校時代。進学校に進んだものの周りについて行けず、やがて勉強嫌いになった祐加さんは、目指すものもなく、生きていく意味すらわからなくなってしまい人生の挫折を味わう。ある時、様子を見かねた母が祐加さんを料理学校の体験学習へと連れ出す。祐加さんが小さい頃お菓子作りが大好きだったこと、禁止しても隠れて作っていたことを思い出してのことだった。そして、実習で初めてコックコートを着てコック帽を被った祐加さんの姿を見た瞬間、母は「これで決まりだね」と直感。祐加さんにとっても暗いトンネルを抜け、進むべき道が決まった瞬間だったという。
 現在、祐加さんは肉寿司を超える料理を作りたいと、新たな勝負メニューの開発に取り組んでいる。具材や味付けの試行錯誤を繰り返し、ようやく完成したのがマグロの寿司をベースに、地元の定番料理・ニース風サラダの素材を掛け合わせアレンジした「ニース風寿司」。果たして、肉寿司と並ぶ店の看板メニューとなるのか。
 こうして大好きな料理に邁進し幸せな日々をおくる祐加さんだったが、2年前、転機のきっかけを与えてくれた母にガンが見つかる…。「今はもう大丈夫」という母の園美さんは当時を振り返り、「(祐加さんが)いろいろな治療法を一生懸命調べてくれたおかげで、私の今がある」と感謝するが、これまでは挫折しても母がいたから立ち直れたという祐加さんは、「一番怖いのは母がいなくなること」と不安を抱いている。遠いフランスで挑戦を続けながらも、「母は自分自身」とまでに母を想う祐加さん。そんな彼女の元へ、娘のことを誰よりも理解する母の気持ちが届く。