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#4695月20日(日)10:25~放送
ドイツ・フロイデンシュタット

 ドイツの南部に位置するフロイデンシュタット。穏やかな風景が広がる小さな街で整形靴職人として奮闘する四之宮玄騎さん(38)へ、大分県に住む父・昌弘さん(70)と母・春美さん(66)の思いを届ける。
 「整形靴」とは、病気や事故などで足の一部を失ったり変形した人のために、足を矯正してスムーズな歩行ができるようサポートする靴のこと。日本人では数少ない「マイスター」の資格を持つ玄騎さんは、整形靴の分野ではドイツ全土で知られる店「テュルク」の工房長として弟子を指導しながらチームを統括。患者の足の形状を見て型を取り、一人一人の細かい要望も受けながら最適な靴を仕上げている。また、病院の中にある工房の出張所に出向き、医療機関と連携して整形靴の注文を受けたり相談にのることも。医師と整形靴師が互いに意見を交換し合って患者さんの歩行ケアができるドイツのシステムを、いつか日本に持ち込みたいと玄騎さんは考えている。
 小さいころからサッカーに打ち込んできた玄騎さん。高校、大学と全国大会に出場し、Jリーガーを目指していたが、大学3年生の時、左足の靭帯を断裂。このケガにより、プロになる夢も選手生命も断たれてしまう。第二の人生を考えた玄騎さんは、当時ケガのために使用していた整形靴に興味を持ち、職人を目指すように。15年前に整形靴の本場・ドイツに渡った後は、ルーマニアやウィーンなどでも経験を積み、難関とされる国家資格・マイスターの試験に一発合格。整形靴マイスターとして順調にキャリアを積んでいく。しかし2年前、日本で自分の店を持つことも視野に入れ始めていた矢先、趣味のバイクでツーリング中に転倒。右足の膝から下を切断するという大事故に見舞われる。「五体満足で産んでくれたのに申し訳ない」という思いから、足を切断したことをなかなか日本の両親に切り出せなかった玄騎さん。後に聞かされた母は「家族みんなで泣いた」と当時を振り返る。一方で玄騎さんは「足は無くなってしまったけどタダでは転ばない」と、この事故をきっかけに、新たな目標を持つ。義足を製作する「義肢装具士」としての勉強を開始したのだ。「体の一部を失うという患者さんの気持ちを、自分はよく理解できる」と、2つめのマイスター資格の取得を目指す。
 整形靴職人としても患者に寄り添い、大きな夢に向かって歩み続ける玄騎さんに、家族からの届け物が。そこには、脳梗塞で倒れ利き手が不自由になった父の渾身の想いと、父をそばで支えてきた母の愛情があふれていた…。