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#4644月15日(日)10:25~放送
アフリカ・ケニア共和国

 赤道直下のアフリカ・ケニア共和国。電気も水道もない自然豊かなこの大地に、理想の宿をゼロから手作りする乾和哉さん(49)へ、“人生の師” 佐藤留美子さん(66)と横田勇さん(65)の思いを届ける。
 周囲になじめずグレていた中学時代、佐藤さんたちが営むロック・バーに惹かれ、恐々その扉を開けた和哉さん。2人は「お酒を飲まないならいいよ」と、彼を店内へと招き、いつしか和哉さんを理解してくれる唯一の存在になっていた。佐藤さんは「学校でも家でも抑圧されていたものがあったのではないか。当時はいろんな相談を受けた」と、出会ったころを振り返る。
 ケニアの首都ナイロビから車で3時間のエブル村。和哉さんは建設中の宿の敷地に泊り込み、開業準備を進めている。およそ2500坪の敷地に建つ宿の売りは、彼が「誰もまだやっていない。アフリカ初」というスチームサウナ。この辺り一帯は火山地帯で、地下熱によって生じる蒸気がいたるところから噴き出しているのだ。テント持参で3ヶ月かけて探し歩き、ようやく見つけた理想の土地だった。
 大学卒業後、JICAの職員としてアフリカを転々とする中でケニアに赴任し、この国の自然の美しさに魅せられた和哉さん。そして10年前、ケニア人女性のエスターさんと出会い、結婚。この地で生きていくことを決意したのだ。
 仕事を退職し、宿作りに打ち込んで2年。コストを抑えるため業者には頼まず、普段は農業をしている現地の村人を雇い、試行錯誤を繰り返しながら手作りで建設作業を進めてきた。村人に教わりながら、近くで拾ってきた石を積み上げセメントで固め、土と水を練って壁を作り、屋根には草を敷き詰める。すべてこの土地の材料で作るのが彼のこだわりだ。
 しかし、建設に関してはまったく素人の和哉さん。土地の購入や契約、建設許可や営業許可、すべてにおいて勝手が違い、ここまで思うようには進まなかった。人生をかけ、すべてをつぎ込んで宿作りを始めたものの、この2年間収入はなく、1500万円あった貯金は残り500万円になってしまった。和哉さんは「せっかく生まれてきて、自分のやりたいと思ったことをやれるチャンスも得られて、ここまで来れた。後戻りはできない。死ぬまでやる覚悟」といい、決意は固い。
 1カ月ぶりにナイロビの自宅に戻った和哉さん。初めて自分の手で建てた思い入れの深い家がそこにはあった。部屋の本棚には一枚の写真が飾られている。妻・レスターさんの写真だ。「このプロジェクトが成功する」夢を見たと和哉さんに語ったレスターさんは去年、病のため突然この世を去った。「亡き妻のためにも、宿を成功させることが何よりの供養になると思う」と和哉さんはいう。
 中学時代にロック・バーの扉を開けた当時、「光を見た気がした」と和哉さんは振り返る。2人がかつて自分を受け入れ理解してくれたように、人生に迷いながら旅する人たちをこの宿に迎えたい…。開業を目指し奮闘する和哉さんに、“日本の恩師”から届けられた想いとは。彼の胸に、今また新たな光が宿る。