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#45012月24日(日)10:25~放送
メキシコ・メキシコシティ

 今回の配達先はメキシコの首都、メキシコシティ。パティシエとして奮闘する見上歌奈子さんと、神奈川県に住む父・富美男さん(67)、母・照子さん(66)をつなぐ。10年前にメキシコへ渡った歌奈子さん。両親は「最近、新しいお店を開いたそうなので、どんな様子か見てみたい」と話す。
 オシャレなカフェやレストランが立ち並ぶエリアにある歌奈子さんの工房「Tsubomi」は、メキシコ人アシスタント2人、日本人パン職人・正野崎朗子さん(40)と4人で切り盛り。今年4月に開業したばかりで、まだ店舗はなく、現在はケーキとパンの予約販売のみを行っている。ケーキはレストランやカフェで出されるものから個人のバースデーケーキまで、オーダーに合わせて製作。メキシコでケーキといえば、シロップやチョコをふんだんに使った甘味の強いものがほとんどだが、この半年、地道な売り込みを続け、歌奈子さんが作る控え目で優しい甘さのケーキは、少しずつ受け入れられてきているという。
 元々、日本でパティシエとして働いていた歌奈子さん。10年前、知人の日本人が経営するカフェの立ち上げスタッフとしてメキシコへ。そこで出会ったのが朗子さんだった。2人はすぐに意気投合。いつしか一緒に店をやりたいと思うようになり、5年前、念願のベーカリーをオープンさせた。
 店は地元で人気を集めて大繁盛。「軌道に乗って来たのもあって、私たちは作る方に専念しようと、メキシコ人スタッフをひとり入れて経営を任せていたんです。でもそれが良くなかったみたいで…」。そのメキシコ人女性経営者と経営方針で対立し、最後は実質的に経営権を奪われ、店舗から機材に至るまで、2人で築き上げてきたすべてを手放すことになったのだ。「トラブルを抱えていることが嫌だった。悔しさはあったけど、負の感情を持ち続けても意味はないし、だったらもう1回自分たちでやり直そうと…」。2人はゼロからの再出発に賭けたのだ。
 以前はとても性能のいい高価なオーブンを使っていたが、今使っているオーブンは、廉価なものを2週間前に仕入れたばかり。温度管理が難しいため試行錯誤しながら使っている状態だ。パンのスライサーもないため、朗子さんが定規で測りながら手切りするなど、今あるもので何とかやりくりする毎日。大きな困難に見舞われながらも、2人はいつか工房の隣に店舗を構えることを夢見て、ひたすら前を見据えて努力を続けている。
 歌奈子さは現在、メキシコ人の夫・ホセさん(42)と2歳の長男の3人暮らし。休日もなく毎日朝5時から休憩なしで働きづめだが、日中はシステムエンジニアをしているホセさんが自宅で仕事をしながら、長男の面倒をみてくれているという。「家族がいるからこそ、つらいことも乗り越えられる」と歌奈子さんは言う。
 そんな歌奈子さんに日本から届けられたのは、母手作りのミートパイ。歌奈子さんが小学生の頃によく作ってくれたという母の味だ。そこには“走り続ける日々の中、これを食べてちょっと一休みしてほしい”という母の思いが込められていた。歌奈子さんはひと口ほおばると、「すごくうれしい!昔と変わらない味。とてもおいしい!」と感激し、母の優しさに涙をこぼすのだった。