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#4276月25日(日)10:25~放送
イタリア・クレモナ

今回の配達先は、名だたるヴァイオリンの名器を数多く生み出してきた聖地・イタリアのクレモナ。ヴァイオリニストとして活躍する横山令奈さん(30)と、大阪・箕面市に住む妹・亜美さん(28)、父・莞五さん(85)をつなぐ。ヴァイオリン教室を営んでいた両親の元、幼いころからヴァイオリンを始めた姉妹。18歳でクレモナに留学した令奈さんを追って、亜美さんも高校卒業後クレモナへ。ずっと令奈さんを追ってきた亜美さんだったが、5年前、母の死をきっかけにイタリアと日本で別々の音楽活動をすることに。亜美さんは「姉が今どんな仕事をしているのか知りたい」と話す。
 令奈さんは現在、クレモナにある「ヴァイオリン博物館」で演奏するヴァイオリニストとして活動している。この博物館は、クレモナのヴァイオリン製作技術がユネスコの無形文化遺産に認定されたことを受け、4年前に開設された。展示・保存されているヴァイオリンは、ストラディバリウスをはじめ、どれも300年以上前に作られた、数億円はくだらない価値がある名器ばかりだ。
 令奈さんはこの博物館で、そんな貴重なヴァイオリンを演奏するコンサートを任されている。普段は触れる事すらできない貴重なヴァイオリンだが、演奏会の時だけは博物館の責任者から厳重な手続きを経て、令奈さんへ手渡される。ここで演奏を許されているヴァイオリニストはわずか3人。令奈さんは唯一の外国人だ。日本人が権威ある本場のヴァイオリン博物館で演奏しているニュースは驚きを持ってイタリアのメディアでも報じられた。
 7歳で本格的にヴァイオリンを始めた令奈さん。その1年後には2歳下の亜美さんも後を追うように習い始めた。高校卒業後は両親の勧めもあってクレモナの音楽院に留学。その2年後、同じ学校に留学した亜美さんだったが、姉とは別々に暮らすことを選んだ。令奈さんは「姉妹でライバル意識もあったと思う。妹は私より1年早くヴァイオリンを始めたので、妹が上達するにつれ、私ももっと頑張らなければという思いは強かった」と振り返る。
 一流のヴァイオリニストを目指して、互いに刺激し合いながら努力を続けていた姉妹。だが5年前、闘病中だった母が亡くなったのを機に、亜美さんは母が残したヴァイオリン教室を継ぐため日本に帰国することを決意。一方、イタリアに残った令奈さんは、イタリア人の恋人でピアニストのディエゴさん(35)と共に「トリオカノン」という音楽グループを結成。ヴァイオリニストとしてさらにステップアップするための新たな挑戦だった。現在はヴァイオリン博物館の演奏者として活動する傍ら、5つのオーケストラを掛け持ちし、フリーランスのヴァイオリ二ストとして活躍している令奈さん。実力がありながら志半ばで帰国した亜美さんに対しては、複雑な思いを抱いている。「彼女の方が苦労は大きかったと思う。自分も日本に帰るべきだったのかと、妹に対しては罪悪感やいろんな思いがある。どうしたらよかったのか、今も分からない」と、胸の内を明かす。
 そんな令奈さんへ届けられたのは、亜美さんがヴァイオリニストとして初めてレコーディングしたCD。亜美さんは「イタリアで頑張る令奈に勇気をもらって、私も日本で頑張ってこられた。この5年間やって来たことを姉に伝えたかった」と話す。添えられた手紙には、「令奈の音楽人生をイタリアでやってほしかったからこそ、日本に戻ることを決めた」と綴られていた。令奈さんはCDを聴き、「うれしい!姉として感無量」と喜び、「“妹を日本に帰してまでイタリアに残ったのだから”という思いで私も頑張れた。妹に恩返しをしなければ」と、涙で語るのだった。