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#4246月4日(日)10:25~放送
アメリカ・シアトル

今回の配達先はアメリカ・シアトル。クリエイターとして奮闘する太田翔伍さん(33)と、岐阜県に住む父・修さん(66)、母・五月さん(66)をつなぐ。普段は妻子と暮らす自宅兼事務所でポスターやウェブデザインを手掛けている翔伍さん。その一方で、シアトルに本社を置くスターバックスの依頼を受け、店舗に絵を描く仕事も請け負っている。両親は「昔から器用な子でしたが、特別絵がうまかったわけでもないので驚いている。今はスタバの仕事をさせてもらっていますが、いつまで続くのか…」と、将来を案じている。
 このほどシカゴに10日間出張し、スターバックスの新規店舗で新たな仕事を手掛けた翔伍さん。これまでで最も巨大な高さ4m、幅20mの壁一面に、多くの人々の手を経て1杯のコーヒーができるまでを描いた。スバタスタッフと何十回も打ち合わせた末に、直前になって作風の変更を要求された難しい作業だった。自身の得意とする“ひと筆描き”ではなく、墨と筆を使った初めて試みるスタイルだったが、翔伍さんはなんとかオープンに間に合うよう完成させた。スタバスタッフもその仕上がりと彼のプロ意識には大いに満足したようだ。
 今や仕事は順調だが、実はアメリカに来るまで、翔伍さんには何の目標もなかったという。18歳で日本の大学にすべて落ち、失意の中にあった時、背中を押してアメリカ留学を勧めてくれたのは母だった。母のアドバイスでアイダホ大学の経済学部に進学し、半年後には友人の勧めでアート学部に転部した。それまでアートとは無縁の人生だったが、在学中に手掛けたデザインが雑誌の表紙に採用されたのだ。それを機に「自分の好きなことを仕事にしよう」と決意し、卒業後デザイン会社に就職。3年前に独立し、自分の会社を立ち上げた。
 独立早々、知り合いのツテで大きなチャンスが訪れる。翔伍さんのホームページを見たスターバックスからポスターのデザインを依頼されたのだ。そのとき制作したのが、あらゆる人種の人々の顔を“ひと筆描き”で描いた作品だった。「これまで人生の転機で必ず誰かが助けてくれた」。その感謝の思いを込めて描いたモチーフだった。スターバックスの心を掴んだ翔伍さんは、ニューヨークの店舗のペインティングを任され、以来仕事はつながり続け、昨年スターバックスで提供されたアメリカ国内限定のグリーンカップにも作品が採用された。これが全米中に彼の名前を知れ渡らせる代表作となった。
 今や日本のスターバックスからも依頼があり、世界へ活躍の場を広げつつある翔伍さん。そんな彼には渡米以来、心がけている日課がある。特に用がなくてもクライアントに顔を出すこと、つまりコミュニケーションだ。アメリカに渡って14年。その努力が“人とのつながり”を積み上げてきた。
 そんな翔伍さんに日本から届けられたのは、18歳まで毎年端午の節句に両親が欠かさず飾ってくれていた「鎧兜」。添えられていた両親からの手紙には「これからも過信することなく、友達や出先の人を大切に、努力を重ねてください」と綴られていた。鎧兜を一目見るなり「懐かしい!」と感激する翔伍さん。「これからも初心を忘れず、頑張って行きたい!」と両親に誓うのだった。