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#4194月23日(日)10:25~放送
アメリカ・サンフランシスコ

 今回の配達先は世界に名だたるIT企業の本社が軒を連ねるアメリカ・サンフランシスコ。国内外で数々の賞を受賞している人気のゲーム会社で働く3Dアニメーターの幸リチャードソンさん(30)と、東京で音楽スタジオを営む父・好彦さん(58)、母・真理さん(56)をつなぐ。
 3Dアニメーターとは、絵は描かず、コンピューターを使って動画でキャラクターの動きを作る人のこと。動きを付けることでキャラクターが生き生きと動き出し、命が吹き込まれていくという。幸さんは自らさまざまな動きを試してスマートフォンで撮影。その動画をパソコンに取り込み、それを観察しながらキャラクターに細かな動きを付けていく。例えば腕を上げる動作も、単に腕を動かすだけではなく、肩も一緒に動かすことで、より人に近い動きになるという。そんな細かな積み重ねで、キャラクターはより自然に、ダイナミックに動き出すのだ。
 現在、彼女が手掛けている作品はバーチャルリアリティーゲーム。プレーヤーの頭の動きや目線に合わせて、画面が動く。しかも360度どの方向から見ても大丈夫なように対応が必要で、わずか1秒のシーンを完成させるのに、なんと8時間はかかるという。だが「大変だけど、こういうところが楽しい」と幸さん。大好きな仕事ができる毎日が楽しくて仕方がないようだ。
 小さいころからディズニーアニメが大好きで、高校生の時、夢だったアニメーションを学ぶため、最先端のアメリカに留学しようと決意。しかし、当時は両親が離婚したばかり。金銭的余裕もまったくなかったという。父は音楽スタジオの経営が苦しかったため、母が本来の仕事にアルバイトを2つ掛け持ちし、必死に働いて留学資金をすべて工面してくれた。当初は金銭的理由で留学には反対していた母だったが「でも、やっぱり子供がやりたいということは、やらせてあげたかった」と、当時の思いを明かす。幸さんは「母には感謝してもしきれない。父も音楽をやってきた人だったので、芸術的な感性を育ててくれたと感謝している」と話す。
 母の頑張りのお陰で夢だったアメリカ留学が実現。だが、アルバイトをしながら学校に通う生活はとても苦しいものだったという。そんな苦労の末、幸さんは7年かけて学校を卒業。晴れて念願のアニメーターになったのだ。
 現在はIT系の会社に勤める夫のフォンテインさん(32)と二人暮らし。幸さんは休日も自宅でパソコンに向かい、3Dアニメーションの練習を欠かさない。「常に上を目指し続けないと、どんどん後から入って来た若い人が巧くなっていくので怠けていられない。腕を磨き続けないと置いて行かれる」と、業界の競争の厳しさを語る。
 365日、ほとんどの時間をアニメーションのために費やしている幸さん。さらなる目標は、長編映画のアニメーションでアニメーターをやること。「同じ長さのものをやるにしても、長編映画だと5倍10倍の時間を使って仕事ができる。もっとこだわってみたい」という。そんな夢に向けて、日々たゆまぬ努力を重ねる幸さんに、日本の両親から届けられたのは、小さいころから大好きだった漫画「ガラスの仮面」。かつて幸さんが繰り返し読んでいたものに加え、新しく出たものを買い足して送ってくれたのだ。主人公がさまざまな困難にもめげず、夢を叶えていく物語で、幸さんは「これを読んだら、どんなつらいことも乗り越えられる。父も母もこんなに応援してくれてうれしい」と言い、両親に感謝するのだった。