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#4123月5日(日)10:25~放送
ドイツ・エムスデッテン

 今回の配達先は馬術大国ドイツのエムスデッテン。ここで障害馬術の騎手として奮闘する坂田篤司さん(26)と、兵庫県に住む母・祐紀恵さん(52)をつなぐ。日本で輝かしい成績を残して4年前、単身ドイツに乗り込んだ篤司さん。しかし、実力だけでは生き残れない厳しい世界だけに、母は「本場はそんな甘い物じゃないと思う」と息子の苦労を案じている。
 オリンピックの正式種目でもある障害馬術は、コース上に設けられたバーを跳び越えながらスピードを競う馬術競技。オリンピックで唯一、男女一緒に戦う種目でもある。多くの一流騎手は、自分で購入した馬に騎乗してレースに出るが、篤司さんは厩舎に所属するいわば雇われ騎手。厩舎の馬と個人オーナーの馬など、担当する16頭を日々トレーニングし、それらの馬を借りて試合に臨んでいる。「馬主さんから“篤司に任せたら馬が良くなる”と言ってもらえるような騎手になりたい。技術的にもっと上達し、2020年のオリンピックに日本代表として出たい」と、篤司さんは夢を語る。
 ごく普通の家庭に育った彼が初めて馬に乗ったのは9歳の時。地元の乗馬クラブで乗馬のとりこになった篤司さんは、中学卒業後、15歳で親元を離れ、奈良県の名門乗馬クラブへ。めきめきと才能を開花させ、全日本ジュニア選手権で優勝、大学でも全国大会で優勝を果たし、輝かしい実績を引っ提げて、4年前に単身ドイツへ渡った。そんな篤司さんに可能性を見出し、騎手として雇った厩舎の社長は「彼は馬の感情を読み取る力がすごい。オリンピックも決して夢じゃない」と高く評価する。
 しかし、この4年は本場の高い壁に苦しむ日々だった。「昨年は成績が良くなくて、もう限界なのかとずっと悩んできた」と篤司さん。そんな彼が今年の初戦となる大事なレースに挑んだ。ドイツ国内を中心に集まった100組もの人馬がしのぎを削る大会で、馬主らも注目するメインレース。3位以内に入れば、いい馬を持つ馬主への大きなアピールにもなる。長いスランプを抜けられるかどうかがかかった大一番だ。そんな大会で本来の力をいかんなく発揮し、堂々の3位に輝いて自信を取り戻した篤司さん。この調子で今年1年いい成績を取り続ければ、来年のアジア大会、世界選手権大会へと可能性が広がる。オリンピック出場の夢も再び見えてきた。
 篤司さんが今こうして夢を追うことができるのは、母のお陰だという。「小学校時代は授業が終わると母が毎日車で迎えに来て、乗馬クラブへ無理やりにでも連れて行ってくれた。お金もずいぶんかかったが、父と母が懸命に働いて頑張ってくれた。感謝している」と篤司さん。特に、必死に働きながら練習や試合にいつも付き添ってくれ、支えてくれた母には恩返しがしたいという。
 そんな母から届けられたのは、篤司さんが子供のころに作った馬のキャラクターの小さな黒板。篤司さんと一緒に夢を追いかけてくれた母が、ずっと大切にしていたものだ。そこには“馬に乗る篤司の姿を見ることが一番の幸せです”と母の思いが綴られていた。篤司さんは「頑張らないと。もっと試合で活躍して、その姿を生で見せてあげたい」と語り、応援してくれる母を想うのだった。