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#40011月27日(日)10:25~放送
ポルトガル・アヴェイロ

 今回の配達先はポルトガルのアヴェイロ。親友と共にチョコレート店を営む菅知子さん(49)と、京都に住む母・紀子さん(76)をつなぐ。33歳でポルトガルへ渡り、紆余曲折の人生を経て昨年12月、女2人でまったく経験のないチョコレート店を立ち上げた知子さん。母は「小さい時からおとなしく、言いたいことも言わずにジッと我慢する子だった。元々体も弱かったので心配」と案じている。
 知子さんの店兼工房「フェイトリア・ド・カカオ」で作られるのは“Bean to Bar”というカテゴリのチョコレート。カカオ豆の焙煎から板チョコになるまでのすべてを一つの工房で行うもので、専門店はポルトガルで初という。豆の個性を最大限に生かすことができる“Bean to Bar”は完成まで5日以上もかかり、価格は1枚およそ600円。スーパーに並ぶ一般的なチョコの5倍以上だという。チョコレート作りを担当するのは親友のスザーナさん(38)。知子さんは営業や経営を担当している。現在、国内9店舗に商品を置いてもらっており、噂を聞きつけて遠方からやってくるお客も増えたという。
 2人がチョコレート作りを始めたのは2年前。以前は知子さんが翻訳や執筆活動、スザーナさんは通信会社の内部監査と、チョコレートとはまったく無縁の仕事をしていた。ところが3年前、スザーナさんが失業。仕事を探している時にスザーナさんがチョコレートを作っている夢を見、知子さんもお菓子屋で商品を売りながらたくさんのお金を受け取っている夢を見たという。そんな不思議な偶然から運命を感じた2人は、すぐさま西アフリカのカカオの産地に飛び、一からチョコレート作りを学んだのだ。
 現在はスザーナさんと共に暮らす知子さん。母は知子さんが結婚しないのか心配しているが、彼女は「必要性を感じない」という。実は、知子さんのこれまでの人生は紆余曲折の連続だった。子供のころから体が弱かったせいもあって、仕事を転々としてきたが、24歳の時、趣味でシャンソンを習い始めたことが人生を大きく変えることに。その声がポルトガルの伝統音楽・ファドに合っていると言われたことから、ポルトガルに興味を抱いてこの国を旅し、すっかり魅了されてしまったのだ。すぐに仕事を辞めてポルトガルへ留学。33歳の時だった。翌年には27歳年上の男性と恋に落ちて結婚。しかしその後、夫が事業に失敗。10年以上も職を転々としながら食いつなぐ苦労の日々を送った末、4年前に夫とは離婚した。
 そんな中で運命的に出会ったのがスザーナさんだった。親しくなって間もなく、彼女が重い病気であることを打ち明けられ、「この人を死なせるわけにはいかない」と、知子さんは食事の世話など献身的に生活をサポート。すると奇跡的にスザーナさんの病気は回復したのだ。以来、お互いにかけがえのない存在になったという。
 「人生で今が一番幸せ」。そう語る知子さんに母から届けられたのは、実家の喫茶店で長年使ってきた懐かしいコーヒーカップとポット。ビリヤードのプロだった父の収入では食べていけず、生活のために朝早くから夜中まで働いて家族を支えた母。手紙には「当時は店が忙しく、イライラしておとなしいあなたに八つ当たりして可哀そうなことをした」と詫びる言葉が綴られていた。知子さんは「そんな風には思っていない。あの頃の母が大変だったのはよく分かっていた。そんな中で育ててくれて感謝している」と思いを語り、大粒の涙をこぼすのだった。