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#39710月23日(日)10:25~放送
イギリス・ロンドン

 今回の配達先はイギリス・ロンドン。新進気鋭のトップヘアスタイリストとして活躍する森元拓也さん(33)と、大阪に住む母・八重子さん(81)、兄・宗昭さん(58)をつなぐ。9年前、ロンドンの一流サロンで働くことを夢見て、何のつてもなく海を渡った拓也さん。同じ美容師でもある兄は「現実を見てすぐに帰って来ると思っていた」と当時を振り返る。
 拓也さんが働く「ブルックス&ブルックス」は、ロンドンの年間最優秀美容師に輝いたオーナー2人が経営するセレブ御用達の超一流サロン。ここで働くのは、ロンドンでは名の知れたトップスタイリストばかりで、拓也さんもそんな予約が取れない人気スタイリストの一人だ。顧客の要望を聞きながら、個性を引き出す新しいスタイルを積極的に提案する拓也さんだが、「こっちに来たときはABCも完璧に言えないぐらい英語ができなかった」と笑う。
 3人兄弟の末っ子で、両親が50歳近くで授かった子供だった拓也さん。美容師の道に進んだのは、25歳離れた兄の美容室でアルバイトをしたのがきっかけだった。その後、大阪のサロンで2年間働き、9年前、ロンドンの一流サロンで働くことを夢見て、イギリスへ渡ることを決意した。だが、一時はその夢を諦めかけたことがあったという。「日本を発つ1週間前、お父さんがガンだと聞かされて…。自分は日本に居るべきなのかと思い悩んだけど、お父さんが“行っておいで”と」。そう話す拓也さんを見て、母は「あの時、なぜ今、行かなければならいのかと思いましたが、今となれば、あの子が一番つらかったと思います」と、その心中を思いやる。
 父の言葉に背中を押されてロンドンへ渡ったものの、英語が全く話せなかった拓也さんは不安もあり、本来目指していたサロンではなく、日本人経営のサロンで働き始めた。しかし半年後、父の容体が急変し、急きょ帰国。父の最期の姿を目にした時、彼の中にある決意が生まれたという。「俺は日系の美容室で何をしてるんやろうと。何で自分が一番行きたいところへ行かないのかと」。拓也さんはロンドンへ戻るとすぐに、何のつてもないまま『ブルックス&ブルックス』に飛び込み、雇ってほしいと頼み込んだのだ。
 その後、英語に苦労しながらも技術を習得し、努力の末、全英で30歳未満のトップヘアドレッサーにも輝いた。4年前には日本に留学経験もあるジョーさん(28)と結婚。公私ともに充実した毎日を送っている。
 現在はサロンの仕事だけでなく、雑誌撮影のヘアスタイリストの仕事もこなす。手掛けた作品を見て、新たな仕事の発注が来ることも多いという。有名雑誌や広告など、拓也さんはさらにステップアップした世界へ進もうとしているのだ。「ロンドンに来られたのは父が背中を押してくれたおかげ。どこまでできるのか、成長した僕を父に見てもらいたい」。そう語る拓也さんの逞しい姿に、母と兄は「甘えん坊やったのに…大したもんや。父も喜んでいると思います」と安心する。
 そんな拓也さんへのお届け物は、地元泉州の水ナスを使った母手作りの糠漬け。子供のころから母がよく作ってくれた拓也さんの大好物だ。添えられた母の手紙には「パパが今のあなたを見たらどんなに喜んだでしょう。きっと見ていると私は思っています」と綴られていた。拓也さんは「今よりもっと頑張らなアカンなと思いますね」としみじみ語り、懐かしい母の味を味わうのだった。