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#39410月2日(日)10:25~放送
シンガポール

 今回の配達先はシンガポール。家族で飲食店を営む栗原みどりさん(45)と、群馬県に住む父・一二三さん(77)、母・けい子さん(75)をつなぐ。元々大手企業のサラリーマンの妻だったみどりさんが、夫の転勤でシンガポールへ渡ったのは15年前。両親は「心配で心配で、2人で大泣きした。行かせたくなかった」と、当時の思いを語る。
 多くの団地が立ち並ぶ郊外の街・クレメンティ。この街でみどりさん一家が営むのは、黄色い平麺をタレに絡めて食べるシンガポールのローカル麺料理「ミーポック」専門店。国内には3000軒以上ものミーポック店があるが、エビのワタのうま味が効いた深みのあるこの店の味は大評判。夫の直次さん(48)が地元の人気店に弟子入りし、さらに独自の工夫を加えてたどり着いた味だという。手間暇かけて作られるその味は、地元の客をすっかり魅了し、いつも行列が絶えない。
 店をオープンしたのは2年前。毎日多くの客が訪れて捌ききれなくなったため、1年前に2号店をオープンした。1号店は直次さんと、長女の励奈さん(19)、婚約者のシンガポール人・デリックさん(24)が、一方、2号店はみどりさんと長男の侑暉さん(23)が切り盛りし、どちらも大繁盛している。
 かつては同じ大手家電メーカーに勤務していたみどりさんと直次さん。社内恋愛で結ばれ、15年前に直次さんの転勤に伴い、家族でこの地へ移住した。みどりさんは専業主婦となったが、10年後、直次さんが脱サラしてこの国で飲食店を始めることを決意。先の保証が何もない夫の決断だったが、意外にもみどりさんは大賛成。「私は働く方が好き。働ける場所を作ってもらって嬉しかった」とみどりさん。若いころから働いてきた彼女にとって、専業主婦の生活は退屈でしかたがなかったのだ。今はほとんど休むことなく、毎日12時間以上も働いているが、「一度も後悔したことはない」という。
 みどりさんがひたすら働き続ける原動力は日本の両親にある。「自営業だったので、朝から晩まで働いている姿をずっと見てきた。今でも働いていて、私も頑張らなくてはと思います」。思い描く家族の将来については、「娘が結婚して1号店をやり、2号店は息子が結婚して夫婦でやってもらうのが理想。私たちはそれをサポートしてやっていけたら…」と夢を語る。
 実は直次さんが安定した会社勤めを辞めて、この仕事を始めたのは、ある思いがあったからだ。「子供たちが将来、この国で自立して生きていけるように、店の仕事を与えてやりたかった。あとは本人たちが頑張ってくれれば」と直次さん。みどりさんに対しては「妻がいなければできなかった。彼女は大変だったろうが、感謝の気持ちでいっぱい」と、思いを明かす。
 懸命に働く両親の背中を見て育ち、いま自分も子供たちの未来のためにひたすら働き続けるみどりさん。両親からのお届け物は、日本の家族がみどりさんを応援する思いをつづった色紙。父からは“頑張れ”、母からは“お店に食べに行くよ”という言葉が綴られていた。みどりさんは「こうして私のことを思ってくれる気持ちがとてもうれしい。これは宝物です。明日からも頑張れます」と、両親を思い、涙をこぼすのだった。