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#3438月9日(日)10:25~放送
中東・ドバイ

 今回の配達先は、世界中から人々が集まる中東随一の大都会・ドバイ首長国。この国で美容室のオーナー兼美容師として奮闘する薬師神友美さん(39)と、広島県に住む母・佳子さん(67)をつなぐ。5年前にドバイへ渡った友美さん。母は「親には一切、迷惑をかけない子だった。私が女手一つで3人の子供を育ててきたので、心配をかけてはいけないと思うのか…ドバイへ行くことも事後報告だった」と振り返る。
 敬虔なイスラム教徒が暮らすドバイ。友美さんの店は、外資系企業が数多く集まる金融特区にある。イスラム教は、女性が外で髪を見せてはいけないため、美容室は男女別々と法律で決められている。だが、友美さんのサロンは、ホテルや特区内だけで許されている、男女両方に施術できる特別なライセンスを取得しているのだ。
 お客の半分はドバイに住む日本人。あとは、さまざまな国から多種多様な人種がやってくる。この国では、さまざまな髪質、文化、そして宗教にも対応できなくてはいけないのだ。そんな中でお客さんたちの厚い信頼を得ている友美さん。彼女を支えているのは、日本のサロンで叩き込まれた、確かな技術と豊富な知識だという。
 愛媛県の小さな田舎町で生まれ育った友美さんは、松山市の美容専門学校に入学し、美容師の道へ。だが、そこは想像以上に厳しい世界だったという。「練習は毎日で、遊ぶ時間も寝る時間もなかった。シャンプーで手がボロボロになっても、美容師を辞めるか、頑張ってシャンプーをしないでいいポジションに行くか、2択しかなかった」。負けず嫌いの友美さんは、がむしゃらに腕を磨き、愛媛県のスタイリングコンテストで優勝。その後、大阪で店長として店を任されるまでになった。
 しかし、「自分の力を世界で試したい」と、5年前にドバイへ。中東No.1美容師のタイトルを獲得したオーナーが経営する超高級サロンで働き、雑誌やイベントなどでヘアメイクアーティストとしても活躍。2013年に独立して自分のサロンを構えた。今は人を雇う立場になり、「人をどう使い、どう育てていくか」が目下の課題だ。「将来は人を増やしたい。日本の美容師に経験を積んでもらって、日本の技術をここでアピールしてもらえたら。今は日本に帰るという選択肢はない」と友美さんはいう。
 母については「たまに病気をして入院したりしているみたいですが…兄弟には話しても、私には言ってくれない。元気かどうか心配になる。教えてほしい」と、寂しそうだ。お互いに心配をかけまいと気遣うあまり、気持ちの行き違いが生まれてしまったようだ。
 そんな母から届けられたのは、ハンドクリーム。添えられた手紙には、友美さんが修業時代、手が荒れてあかぎれのようになっていたのを思い出すと、今でも涙が出る…と綴られていた。ハンドクリームは、その頃に母が友美さんにプレゼントしたのと同じものだ。“つらい修業を乗り越えてきたことを思い出して頑張ってほしい”…そんな母の思いが込められていた。友美さんは涙があふれ「うれしいですね。母はずっと孫の顔を見たいと言っていましたが、私はまだ独身。せめて仕事で頑張って、立派にやっているところを見せたい。子供がいてよかったと母が喜んでくれるような結果を残したい」と語るのだった。