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#3376月21日(日)10:25~放送
ドイツ・ミュンヘン

 今回の配達先はドイツ・ミュンヘン。牛丼店店長として奮闘する田中健太さん(34)と、兵庫県・尼崎市に住む父・庭三さん(69)、母・博美さん(66)をつなぐ。9年前にドイツへ渡った健太さんとは、これまでほとんど連絡を取り合ってないという両親。「どんな仕事、暮らしをしているのか…」と心配している。
 
ミュンヘンで最大級の規模を誇るデパートの地下食品売り場。そこに健太さんの店がある。一緒に店を切り盛りするのは妻の哲子さん(33)だ。ここは現地で人気の和食レストラングループが2か月前に始めた新展開の店。寿司など日本食のほか、昨年EUで輸入が解禁された和牛をPRするため、宮崎県産の尾崎牛を使った和牛丼を看板メニューとして提供している。

 以前は系列の日本食レストランで店長をしていた健太さん。数年前、「独立したい」と社長の大矢健治さん(43)に申し出たところ、「牛丼店を新規オープンするので、そこをやってみたら?」と店の経営を任されることに。当時、哲子さんはドイツの3つ星レストランでパティシエをしていたが、その話を受けて仕事を辞め、健太さんと共に夢を追うべく、大矢さんの会社に入社したのだ。

 健太さんはこの牛丼店を成功させて、将来の独立への自信にしたいというが、2カ月経った今も店の知名度はまだまだ低く、簡単ではない状況が続いている。これまでは売り上げのある人気店で店長を勤めていただけに、「じっとしていてもお客様が来てくださった。今は正直、自分が何をすればいいのかわからない状態」という。健太さんは今まさに一つの店を経営していくことの難しさに直面しているのだ。

 一方、健太さんに牛丼店を任せることにした社長は、「独立の話があった時、彼にはまだ覚悟が感じられなかった。実際に店を始めてみると、頭の中で思っていたことの1%もできないもの。通用しない世界が目の前に出てくる。牛丼店をやってみることで、それに気づくんじゃないかと…」と、真意を明かす。

 日本ではバーテンダーとして働いていた健太さん。元々海外に憧れがあり、25歳の時、現在の会社の求人を見てドイツへ渡った。昔は我の強い性格だったそうで、ことあるごとに周囲とぶつかっていたというが、あることをきっかけに変わったという。それは母が送ってくれた「礼儀正しさは最大の攻撃力」という内容の新聞記事の切り抜きだった。健太さんは「あんたはこういうことを学びなさい…というメッセージなのかなと。親とは会ってもないのに、僕が悩んでいることを感じ取ってくれたんだなと思った」と感謝する。

 現実との厳しい戦いをしている今、健太さんは「自分に必要なのはまず自立すること。自分の足で立つこと。そうじゃないと自信を持って何かを発言したり行動することもできない。まだまだ独立なんて言ってはいけないレベルだと思う」という。そんな健太さんに、日本の両親から届けられたのは和包丁。そこには「田中組」という文字が刻まれていた。母が息子夫婦に“心は一つ”の願いを込めて名入れをしてもらったのだ。添えられた手紙には「錆びたらアカンで!」の言葉が…。健太さんは「正直、自分には無理なんじゃないかと、諦めかけていた。でも”錆びたらアカン“は”磨かなアカン”ということ。背中を押してもらった」と涙し、両親の励ましに感謝するのだった。