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#2957月27日(日)10:25~放送
スペイン/セビリア

今回の配達先はスペイン・セビリア。本場でフラメンコを極めようと奮闘するダンサーの西内佐知子さん(42)と、大阪に住む父・巳敏さん(71)、母・喜美子さん(70)をつなぐ。アメリカの大学院で教育学を学び、卒業後はプロのフラメンコダンサーの道へ進んだ佐知子さん。両親は「先生になって日本に戻ってくるだろうと思っていた。まさかフラメンコにハマるとは…。将来どうしていきたいのか聞きたい」という。

 セビリアで生まれたといわれるフラメンコは、元々ジプシーともいわれる流浪の民ヒターノが生み出したといわれている。その踊りには長い歴史の中で抑圧されてきた民族の強い思いが込められているのだ。「普通の人たちが生まれたときからごく自然にフラメンコに触れ、彼らの身体の一部であるということが、ここに来て自分の目で見て初めて理解できました」。佐知子さんはそんなヒターノの血を受けつぐ師匠・ファラオナ先生(54)に師事し、その真髄を学ぶべく、フラメンコ漬けの日々を送っている。

 23歳でフラメンコを始めた佐知子さん。アメリカの大学院に進学してからもフラメンコを続け、ますますその魅力にはまり、卒業を機にアメリカの舞踊団のオーディションを受けてプロデビューを果たした。その後6年間プロのダンサーとして踊り続けたが、「毎日同じ踊りの繰り返しで、踊りへの愛着がどんどん薄れていった。生活のために踊るみたいな感じになって、何のために踊るのか自分でもわからなくなってしまった」と振り返る。

 フラメンコを始めた時に感じた純粋な喜びみたいなところに戻りたい――そんな思いから佐知子さんは37歳で本場セビリアへ。そこで目の当たりにしたのがヒターノの踊りだった。「フラメンコの奥深さを知り、底はないんだということがわかって、どんどんハマっていった」。気がつけばあっという間に4年が過ぎた。2年前に結婚した夫のボビーさん(55)をアメリカに残しての留学生活。夫は元々、プロとして活躍していた佐知子さんのファンだったそうで、この生活にも理解があり、金銭的にも支援してくれているという。

 大学院を卒業したら日本へ帰るつもりがもう14年。いつも応援してくれる両親には伝えたい思いがあるという。「アメリカのフラメンコ舞踏団に受かった時は気まずかったことを覚えている。母が本心では日本に帰って来てほしがっているのはわかっていた。でも自分が好きだから選んだ道。大変だけどすごく幸せ。そこを本当の意味で解ってくれたら…」と佐知子さんは願う。

 セビリアにいられる時間も限られてきた。「できる限り吸収して、アメリカに戻ったら、フラメンコという素晴らしい芸術に恥ずかしくない踊りを精一杯踊り続けていきたい」と佐知子さん。そんな彼女に日本の両親から届けられたのは、母手作りのぜんざい。幼いころ、幾度となく母にねだった佐知子さんの大好物だ。「たまには家族で過ごした懐かしい日々を思い出して、心安らぐ時間も持ってほしい」。そんな母の思いが込められていた。佐知子さんは「母の味がする。懐かしい…」と涙ぐみ、「両親には心配させている。私は大丈夫。心配しないで、2人が元気でいてくれたら私は幸せ」と両親へ語りかけるのだった。