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#17412月4日(日)10:25~放送
ポーランド

 今回の配達先はポーランド。ヨーロッパで2番目に大きい舞台をもつウッジ大劇場のバレエ団に所属するただ一人の日本人ダンサー・四柳育子さん(32)と、京都に住む父・英明さん(67)、母・君子さん(61)をつなぐ。日本を離れてバレエ一筋に7年。ダンサーとして決して若くない娘に、両親は「主役の座を求めなくても、そろそろ家庭を持ってくれれば…」と望んでいる。

 ウッジ大劇場バレエ団は国の援助を受けて市が運営する公立のバレエ団。ダンサーは公務員のような存在で、下は19歳から、上は40歳を越えて現役のダンサーもいる。育子さんら50名に及ぶ専属ダンサーは、明日に迫った年末恒例の大舞台「くるみ割り人形」の最終調整に余念がない。育子さんは今回、その中でももっとも華やかといわれる「花のワルツ」のソリストを務める。だがその配役は、すんなりと決まったものではなかった。

 実は3ヶ月前に新しく就任した演出家が当初、育子さんの踊りも見ず、その他大勢の脇役に決めてしまったのだ。「“なぜ自分が踊れないのか”と聞いたら、“身長が小さいから”と。踊っているところも見ないで、どうやって決められるのか」。育子さんは演出家に抗議をし、目の前で踊って見せて考えを撤回させ、この役を勝ち取ったのだ。欧米のダンサーに比べて体格が劣る育子さんが活躍するのは、それだけ容易なことではないのだ。

 育子さんがバレエを始めたのは15歳で、ダンサーとしてはかなり遅いスタートだった。プロを目指す気はなかったが、ある時、来日したロシアのバレエ団の公演を見て感動。すぐに楽屋へ行き、ディレクターに「バレエ団に入りたい」と直談判した。ディレクターは「履歴書とビデオを送るように」と名刺をくれたそうで、「すごいチャンスだと思った!」という育子さんは、そのチャンスを見事に掴んでプロの扉を開いたのだ。その後ロシア、エジプトのバレエ団を渡り歩き、4年前にポーランドへやってきた。

 本番当日。バレエはこの街の数少ない娯楽だけに、1年間待ちに待った「くるみ割り人形」を見るため、劇場にはたくさんのお客さんが詰めかけた。育子さんはかつて「花のワルツ」のソリストを踊るはずだった本番当日の朝、じん帯を傷めて降板した苦い経験があった。今回、再び踊るチャンスを掴んだ育子さんは、小さな体に溜め込んだエネルギーを解き放つかのように最高のパフォーマンスを披露した。

 日本を離れて7年。数々のバレエ団を渡り歩き、今は最良の環境の中で充実した毎日を送る育子さん。「バレエ界では年齢的に若くはないけど、体力が続く限り踊り続けたい」。そんな覚悟でバレエの道を歩み続ける育子さんに、日本の家族から届けられたのは四柳家の連絡帳。共働きで留守がちだった両親と、4人の子供たちをつないだ思い出深いノートだ。そこには長女だった育子さんが覚えたての文字で、弟たちを寝かしつけたことや、母のご飯がおいしかったことなど、日々の報告がつづられていた。そして最後のページには、23年ぶりに母から、いつも幼い兄弟の面倒を見てくれたことへの感謝と、「これからの人生、大きく羽ばたいてください」というメッセージが書き加えられていた。育子さんは「うれしいです。愛情をいっぱい受けて育ってきたんだと感じます」と母の想いに涙をこぼす。