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#127「エクアドル/カヤンベ」 11月14日(日) 午前10:25〜10:55


 今回のお届け先は南米エクアドル・カヤンベ。ここで花やイチゴの新しい品種作りに人生をかける育種家の西川公一郎さん(38)と、岡山県に住む父・政次郎さん(68)、母・華子さん(65)をつなぐ。代々続く植木屋の跡取り息子だったが、父とは違う育種家の道を歩み、さらなる夢を叶えるため、3年前に妻と幼い娘を連れてカヤンベへ。父は「反対はしなかった。日本の花の業界は狭い。日本で一番になってもダメなんです。野心があったのではないか」と、息子の決意に想いを馳せる。

 公一郎さんは「サイカ」という娘の名を冠したカヤンベの農場で、10人の現地スタッフと共に花とイチゴの品種改良を中心とした農業を行っている。特にイチゴは、数え切れないほどの品種改良を繰り返し、世界一の甘さを誇るという糖度20の「はるかルビー」を作り上げた。エクアドルのイチゴは農薬が問題視されている上、固くて酸っぱい。そんな中で公一郎さんのイチゴは評判が高く、生産が追いつかない状態だという。今後は、糖度8〜9のイチゴが一般的なアメリカにも、この甘いイチゴを輸出する計画だという。

 日本でも品種改良をしていた公一郎さんは、赤道直下で1年中気候が変わらず、農作物を育てるのに適したカヤンベでさらなる挑戦をしたいと、移住を決意。2年前にはキンセンカの花の新色を作り出し、品評会で最優秀賞も受賞した。「日本では交配による品種改良は1年に1回しかできないが、ここは年中同じ気候なので2.5回できる。僕の育種にかけられる時間が30年だとすると、それが60年分進められるなら、生き残れるかもしれない、と考えたんです。でも育種では大きく儲けられない。好きだから、チャレンジしたいという想いがあるからやっている」と公一郎さんは語る。

 難しい品種の接ぎ木にこだわっていた父の姿を見て育った公一郎さんは「植物を作る父の仕事にとても憧れた。でも自分は父とは違うところで生きたいと思った。それが品種改良だった」という。特にこだわっているのが化学合成された肥料や農薬を使わない有機栽培。カヤンベ周辺には多くの薬草が自生しており、公一郎さんと同じ農大出身の妻・路さん(35)が、現地スタッフからその効能を教えてもらい、オリジナルの殺虫剤を手作りしているのだ。家族やスタッフと力を合わせ、大切に育て上げてきた公一郎さんのイチゴ。移住した当初は苦労も多かったというが、3年を経て農場経営もやっと軌道に乗ってきた。エクアドルに渡るとき、一番心配だった長女の颯香(さいか)ちゃんも、8才になった今では逞しく成長し、公一郎さんを支える大きな存在になってくれているという。

 「父は大きな目標。超えられないと思うが、精一杯やっている姿を見せたい」。父の背中を追いかけ、家族の支えを力に、自らが信じる農業の道を一歩ずつ歩き続ける公一郎さん。そんな息子に父から、公一郎さんの農場の名前を刻んだ、立派な手作りの看板が届けられる。"これからもエクアドルで、自分の農場をしっかりと守り続けて欲しい"と、息子の夢を応援する想いが込められていた。感激する公一郎さんは「この看板を毎日見ながら、エクアドルで農業を続けていきます」と父に感謝。さっそく農場の入り口に看板を掲げると、大いに気に入った様子で「本当にいい贈り物です。本当にうれしい」と、しみじみと語る。