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#070「中国/マカオ」 9月6日(日) 午前10:25〜10:55


 中国・マカオで1年前から小さなケーキ店を営む小崎アンナさん(26)と、三重県・三重郡に住む母・美千代さん(53)をつなぐ。ケーキ作りから接客まで、たったひとりで切り盛りするアンナさん。「何が心配ですか?」と問う山口に、母は「お客さんとどんな風に接しているのか、お店はうまくいっているのか…」と、遠い地でひとり奮闘する娘を案じる。

 ケーキ店「星空ケーキ屋」でアンナさんが作るのは丸いホールケーキ。約30種類あるメニューはどれも独創的で、とても可愛らしい。全工程を一人で作るため完全予約制で、1日平均6〜7台を焼き上げるという。その人気の秘密は自家製のなめらかな生クリーム。マカオではケーキは主にパン屋で売られるため、日持ちするクリームが使われ、舌触りも固く、しつこく感じるという。「日本のものに近い味を追求したい」と、アンナさんが作る口溶けのいい生クリームは、マカオの人たちに大好評なのだ。実はケーキ職人としての経験がほとんどないまま店を構えたアンナさん。無謀とも思えるチャレンジだったが、彼女の作るケーキの評判は地元の人に口コミで広がり、今や人気店に成長した。

 食事の時間も惜しんでケーキ作りに情熱を傾けるアンナさん。だが、ここまでの道のりは紆余曲折の連続だった。進学校に通っていたアンナさんは、大学受験のためだけの勉強に疑問を感じ、高校2年で中退。そんなアンナさんを応援し、カナダへの留学を後押ししてくれたのは、今は亡き父だった。

 留学から戻ったアンナさんは自分らしさを表現できる仕事に就きたいと、子供の頃から好きだったお菓子作りの道へ進むことに。製菓学校で学び、一時は地元のケーキ屋に就職したが、"自分の個性を発揮できない"と、9ヵ月で辞めてしまった。またも目標を見失いかけたアンナさんだったが、それを救ってくれたのも、当時病に侵されていた父だった。「入院中もよくケーキを作って持って行きました。父はいつも喜んで食べてくれました」。"人を笑顔にする"という喜びに気づいたアンナさんは、父が亡くなった後、マカオに自分のケーキ店を持つことを決意した。

 そして、"ケーキで自分らしさを表現したい""ケーキで人を笑顔にしたい"…との思いを形にしたのが、この店の人気商品「似顔絵ケーキ」。絵の得意なアンナさんが、お客さんの注文に合わせてイラストを描く個性的なケーキで、今では店の看板になっている。「私が作ったということがパッと見て分かるケーキを目指したい」と語るアンナさん。現在は駆け出しの俳優でもある恋人・トーマスさんと暮しながら、斬新なケーキを作り続ける毎日だ。

 これまで多くの挫折を経験し、ようやく自分の進むべき道を見つけたアンナさん。母は「自分がこうと決めたらとことんやるところは父親譲り」と語る。そんな母から娘へのお届けものは、亡き父がビデオカメラで撮りためていたアンナさんの成長の記録。幼いアンナさんの姿を捉えた映像には、彼女を見守り、応援し続けてくれた父の温かいまなざしがあふれていた。そして添えられた母の手紙には、1年間ひとりで頑張ってきた娘への温かいエールの言葉が…。両親の大きな愛に触れ、アンナさんは「1年を無事に迎えられた今の姿を父と母に見てほしい」と涙をこぼす。