コーヒーブレイク16
辛坊 治郎
読売テレビ・報道局局次長兼解説委員
さあ、ボインのムセイカです。
鼻濁音にも戸惑いましたが、このボインのムセイカにはもっと戸惑いました。
それにしても、会社員をやっていると戸惑うことには事欠きません。つい先だって
もこんなことがあったんです。
新しい事務のアシスタントさんが東京支社に来てくれることになり、彼女が私のパ
ソコンを使えるように設定し直す作業が行われたのです。支社総務のパソコン保
守を担当する若い女性が、私のパソコンを開いて設定作業しているちょうどそのと
き、私が出社したんです。
彼女は私の席に座っています。隣に私の新しいアシスタントさんが立っています。
新しいアシスタントさんは、私の顔を見て、ちょっと戸惑ったような笑顔を浮かべ、
「おはようございます」と軽く頭を下げました。
私も、いつもの素敵な笑顔で彼女に微笑みを返して、横の総務の女性にも同じ笑
顔を向けたそのときでした。
あろうことか、彼女は私から目をそむけたのです。そして、カチャカチャと私のパソ
コンを触っていた彼女は、やがて、パタンとパソコンの蓋を閉めました。
「設定終わりました。新しいアシスタントさんも、これで辛坊さんのパソコンを使えま
す。それでは。」と言い残してそそくさと帰って行くではありませんか。
「ななな、なんでー!!俺があんたの気分を害するようなことを何かしたのかああ
ああ!」と叫びだしたいのをぐっとこらえて、作り笑顔で
「ご、ご苦労様です、、、」
と言いました。
僕って大人です。
で、分かったんです。いったい何を彼女が怒っていたかが。
彼女は、私のメールボックスの設定を変える作業をしていたのです。
で、私のメールボックスを見てしまったのです。
私のメールボックスは、今大変なことになっているんです。
それは去年の夏くらいのことでした。
ある日、こんなメールが会社の私のアドレスに送りつけられてきたのです。
「沢尻エリカ様が、あなた様を選びました」
ん?沢尻エリカ?何で沢尻エリカ様が私を選んだのかしら?沢尻様はいいけれど、
木村カエラ様ならもっといいのに!なんてアホなことを考えながらメールを開いて
びっくり仰天、それから悪夢の日々が始まったのです。
そうです。スパムメールです。
その日から、私の会社のパソコンには、綾瀬はるか様やら、藤原のりか様やら、木
村よしの様やら、暇でエッチな人妻やら、全開女学生やらが連日訪れるようになっ
たのです。
なにせ忙しくて、週一回くらいしか会社のパソコンは見られませんので、それ以来、
パソコンを開けるたびに数百通のスパムメールを削除するという情けない作業に
追われることになりました。
誓って言いますが、私が何かの折に、不埒なホームページに行ったなんてことも
無ければ、私のメルアドを知っている人から激しく恨まれる覚えもありません。でも、
スパムメールの津波に、私の受信箱は飲み込まれてしまったのです。
で、数ヶ月前、恥ずかしいのをこらえて、本社のパソコン担当の男性エキスパート
に頼みました。
「このスパムメール何とかならんの?」
「ああ、それですか。問題のあるファイルを含むメールは自動で削除されているは
ずですが、それをかいくぐってくるメールはどうにもなりません。」
「どうにもならないって、どういうこと?」
「根気よく削除するしか無いってことです」
「はああ~」
思わず大きなため息が出ました。
その後、長澤まさみ様や佐藤えりこ様や山本モナ様も差出人に加わり、私のメー
ルボックスはとっても華やかなことになっています。どうせなら、憧れの秋吉久美
子様にも参入してほしいものです。なんだったら、ヘップバーン様でもかまいませ
ん。
で、何が起きたかというと、要するに、支社のパソコン担当のうら若い女性は、そ
んな私のメールボックスを見てしまったということなのです。
開けた瞬間、彼女の目に飛び込んできた「全開女学生」らからのメールの洪水に、
こう思ったに違いありません。
「わ!このオヤジの受信箱は何これ?エッチメールのオンパレードじゃないの。こ
ういうメールを何百通も削除せずに放置してるなんて、なんていやらしい人なのか
しら。辛坊さんて、見かけや話し方はさわやかで、まるでオダギリジョーみたいって
思っていたし、近づくといい匂いがするし、頭もとってもよさそうだし、着ているもの
の趣味もいいのに、何かしら!このメールボックスは!!これじゃあ、ただのスケ
ベオヤジじゃないの。ショック~」
とこう考えたに違いありません。
はっきり言います。冤罪です。お願いです。僕をウエクサを見るような目で見ない
でください。
それにしてもボインのムセイカはいったいどうなったんでしょうか?
ということでまた次回。






