コーヒーブレイク18
辛坊 治郎
読売テレビ・報道局局次長兼解説委員
いやあ、ショックでした。何がショックかは、ともかくとして、
勘違いシリーズを続けましょう。
白系ロシア
この間、日本を代表する、とある週刊誌の政治関係の記事を読んでいて、ちょ
っと、愕然としました。記事の中に何度も何度も「白系ロシア」という言葉が出て
きたのですが、どうも筆者は「白系ロシア」を「白人のロシア人」という意味で使
っているようなのです。私は、旧ソ連の頃から、何度もロシアに足を運んでいて、
白人のロシア人美少女にクラクラ来たことは何度もあります。この記事の中で
も、その「白系ロシア人」美少女にクラクラしてしまった日本の政治家、というよ
うな内容でこの言葉が使われていたんです。何が愕然としたかというと、若い
ライターなら「白系ロシア」を「白人のロシア人」と勘違いすることはあるでしょう。
ただ、これだけの発売部数を誇る週刊誌ですから、編集長や校正者など何人
もの目や手を経ているはずなのに、それでもこんな文章がノーチェックで出てし
まうことに愕然としたのです。
ちなみに「白系ロシア人」とは、ソビエト政権が革命で生まれた後に、共産主義
を嫌ってロシアを出た人達の事を言います。日本で戦前からある有名なロシア
料理店や、高級洋菓子店などの中には、この本当の意味での「白系ロシア人」
をルーツに持つ店は少なくありません。ちなみにうちの会社で、「俺ってロシア
人のクオーターなのよ」が口癖の先輩がいますが、この人は、「白系ロシア人」
つまり亡命ロシア人を祖父に持っているわけですね。しかし、白人のロシア人
女性はあんなにきれいなのに、どうして男は!って、まあ、そんなことはどうで
もいいです。
要するに「白」系ロシアの「白」とは、共産主義の「赤」に対する「白」であって、
透き通るように白いロシア美少女の肌とは何の関係もない言葉なのです。
ところで、私がショックを受けたのは、この話ではありません。しかし、原因は、
同じ週刊誌の最近のコラムにありました。
ウサギは美味しい?
今まで延々勘違いネタを並べてきて、一番最後にこのネタ、と決めていたエピ
ソードがありました。それは、歌にまつわる勘違い話です。歌の場合、いつも歌
詞カードを見ながら聞くという人はたぶん少数派でしょう。特に童謡のように、
まず耳に音として言葉が飛び込んでくるケースに、この勘違いが多発します。
日本で一番勘違いしている人が多い歌は、多分童謡の「ふるさと」です。さあ、
ちょっと歌ってみましょう。
「ウサギおいしかのやま~、こぶなつりしかのかわ~」
後ろに小鮒が来ているところが勘違いの元です。小鮒、釣り、てんぷらにして
食う!と、なんとなく思いますから、当然対になっているウサギも食べられる運
命に陥ります。
「そうか、昔は野うさぎ食ってたし、フランス料理にだってウサギ料理はあるも
んな」というわけです。はい、違いますね。ウサギが美味しい訳ではありません。
ウサギを追いし、つまりウサギを追ったあの山というのが正解です。
ただ、私も大きなことは言えません。私は、「ウサギが美味しい」とは思ってい
ませんでしたが、田舎では「ウサギを背いし」つまりウサギを背負って遊ぶんだ
と長い間思っていました。ほんとに馬鹿です。
という風に、まず耳で言葉を把握する歌では、この種の勘違いが頻発するんで
す。
ほかにも私は、大漁節という有名な民謡で、「まつしま~の、さよ~ずいがんじ
ほどの」という冒頭部分の寺の名前は「さよずいがんじ」なんだとずいぶん長い
間思っていました。これは「さよ」の部分が接頭語で寺の名前が「ずいがんじ」
です。
またも登場H君
で、本題です。私のアナウンス時代の後輩にH君がいるのですが、彼がある日
言うんです。
「昔はテニスコートを均すのに、『こんだら』使ったもんですが、最近ではアン
ツーカーになってずいぶん楽になりましたよね。」
「ん?『こんだら』って何よ。」
「『こんだら』っていったら、『こんだら」』ですよ。ほら、グラウンド均すのに引っ
張る巨大なローラーみたいなもの。」
「ふーん、あれって、『こんだら』って言うんだ。」
「いや、ぼくも巨人の星のアニメで知ったんですけどね。」
「巨人の星にそんな言葉出てきたっけ?」
「ほら、テーマ曲の始めのところですよ。『おもい~こんだら』っていうところで
星飛雄馬が『こんだら』引っ張ってるじゃないですか!」
「あの、萩原君、それは『重いこんだら』、じゃなくて、『思い込んだら』じゃない
のか?」
「え~!!!!じゃあ、あの『こんだら』はなんていうんですか?」
「だから、あれは『こんだら』じゃなくて、ローラーでしょがあ!!」
「う~ん、ショック~」
ショックなのはこっちです。
最大のネタが!
という話を、勘違いシリーズの落ちで使おうと思っていたのに、それなのにで
す。
例の白系ロシアで間違っていた週刊誌の三月十五日号の連載コラムで、某
「SM」さんが、まったく同じネタで一文をしたためているじゃあないですか。ショ
ックでした。半年暖めたネタの結末に、こんな不幸が待っているとは!くそ、椎
名誠!どうしてくれるんだ!!!
ところで巨人の星といえば、当時星飛雄馬の声を担当していた声優の古谷徹
さんと知り合う機会がごく最近ありました。ウチの会社で数少ない、他社でも通
用する名物プロデューサーのS氏にパーティで紹介されたんですが、本当に感
激しました。感激しただけじゃなくて古谷さんの歳を聞いてまたびっくり。現在、
五十三歳なんですって。だって、巨人の星って、もう四十年近く前のアニメです
よ。で、聞いてみたんです。
「あのころ、いったいお幾つだったんですか?」
「星飛雄馬の声を始めたころは、中三でした。」
「きょえー!!何たる早熟の天才!」
ちなみに見かけは、とても五十三歳じゃあありません。三十歳後半って言っ
ても十分通用する若さです。
名探偵コナンの新作でも、なぞの登場人物役の声を担当されてるそうですの
で、是非ご覧ください。
なんてことを、だらだら書いているうちに、年度が変わります。
来年度こそ、いよいよ「ボインのムセイカ!」です。うそじゃありません。もう勘
違いシリーズも、ネタが尽きてきましたしね。ほんとだよ~。
とうわけで、四月になったら心機一転!のつもりで今はいます。今はね。








