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2006年12月14日

魂の殺人 ―社会の理解を得るためにー

横須賀 ゆきの横須賀 ゆきの
読売テレビ放送 編成局アナウンス部・報道局


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11月下旬に出された2006年の犯罪白書は、
国民が身近に不安を感じ、社会的にも関心が高いとして
「性犯罪」を特集テーマに取り上げています。
それによると凶悪犯罪である強制わいせつ、強姦罪の認知件数は
2003年に1万件を突破。
ここ2年間は減少していますが、今だに高い数字。
検挙率は、以前低水準が続いています。
しかも内閣府の調査では性犯罪被害者の95%は警察に届け出ないとの結果も出ています。

魂の殺人と言われる性犯罪。
死に直面するような体験がきっかけで起こる精神障害・いわゆるPTSDの発症率は
あらゆる犯罪被害者の中でも性犯罪の被害者が最も高いと言われています。
犯罪そのものでさえ、心身ともに深い傷を負うのに、
その後も、苦しみは続きます。
「逃げられたのではないか?被害を受けたのは自分が悪かった」
被害者なのに自分を責めてしまう。
誰にも相談できず、自分ひとりで思いつめてしまう・・・・


【被害者を取り巻く環境】
今回は成人の被害者のケースを中心に考えてみたいと思います。
「そんな時間に歩くから・・・」「ふしだらな・・」「被害者の態度に日頃から問題があるんじゃない?」
それからよく言われる「女も悪いでしょう」。
周囲の人も安易に被害者を責める風潮・・・
被害にあったのに言われもない中傷を受ける、
被害者がより深く傷つけられる一因がここにあります。
私も社会人になるまで、
被害者も悪いと考えた事はありませんが、
注意していたら避けられた可能性もあるのでは?と、
事情をきちんと調べもしないのに思っていたこともありました。
取材を通じて被害にあった方々に直接話を聞くと、
その考えが大きな間違いであることに気づかされます。

例えば、
1.会社から帰宅途中、突然車に引きずり込まれた。
2.玄関の鍵を開けた瞬間、後ろから部屋の中に突き飛ばされた。

両方とも、午後7時~9時くらいまでの出来事。
他に、裁判傍聴の中でも上記の様な事件はいくつもありました。
浪速姉妹殺害事件も 2 のケースでした。
被害者の不注意でも何でもありません。

ごくごく日常の延長線上で起きてしまった犯罪なのです。
そして、上記を含む全ての性犯罪の事案を考える上で最も大事なこと。
例えばそれが夜の深い時間帯であったとしても、警戒が足りなかったとしても、
大前提として、悪いのは加害者であって、被害者ではないです。
罪を犯したのは「加害者」なのです。
特に性犯罪においてはこの大前提が薄れがち、また、すっ飛ばして話を進めるがゆえ
被害者を責める風潮が生まれやすくなっています。

{被害者の切実な思い 話すべきか、話さぬべきか}
近年、誰にも相談できずにいた被害者が声を上げやすくなる体制が
徐々に整えられてきています。
ある被害者の会のメンバーは

「死なないとニュースにもならない。死ぬまでのことをしないといけないの?」
「一番わかってもらいたいのに一番誰にも話せないんですよ。
でもここはみんな最初からわかってるから」と話します。

とは言え、性被害は話せば必ず楽になるとは言えない側面もあります。
「二次被害」、話すことによって受ける中傷です。
15年に亘り性被害者の心の傷に向き合ってきた臨床心理士の先生は、
人に話すことを必ずしも勧めないと言います。
「身近な人に打ち明けて不適切な対応をされた場合、
何も話さなかった場合より、もっと大きな影響を受けますよね。
人に話せて適切に受け止めてもらえたら一番。
でも二次被害を受けるくらいなら、誰にもいわない方が懸命だと思います」。


{刑法から}
また、一概に比べることは出来ませんが、
刑法では、人間の尊厳を奪う強姦罪が懲役3年以上なのに対し、
物を奪う強盗罪は懲役5年以上。
背景にあるのはやはり社会の理解不足でしょうか・・・
「被害にあった女性が必死に抵抗したかがどうかが問われていて、
どれだけ身を守ったか。つまり貞操を守る。そういう女性は法律が守りますよ。
そうでなければ犯罪になりませんよ。というのが刑法のもともとの考え方」と指摘する弁護士
もいます。


【私達が出来ること】
今日も性犯罪に関連するニュースが入ってきています。
性的欲求が動機・原因の殺人、暴行、障害、逮捕監禁、略取誘拐。
更に、視点を広げれば、性目的のストーカーや痴漢、セクハラ。
(これらについては周囲の理解不足がより際立ち不用意な言動で被害者を傷つけるケースが目立ちます)
上記の犯罪・事案を少しでも減らす為に・・・・・・・・
やはり被害者に対する社会の理解を深めていくことが何よりの近道です。
他の犯罪被害者の方に対する理解と同じように、
性被害者の方がどのような思いでいるか改めて考えてみて欲しい。
その理解する心が、性犯罪を防ぐ手立てへの原動力となるはずです。

{実感として・・・・}
確かに以前より理解は深まりつつありますが、
取材を重ねる中、生活をする中で「まだまだである」と私は感じています。
性犯罪関連の話題の時、
その人なりの考えがあってなのか。無意識にぽろっとしゃべってしまうのか。
いずれにしても理解不足だなと感じる局面は多々あります。
真剣に心と言葉を尽くせば分かって貰える人もいます。

一方で、
はなから独断・偏見・思い込みで受け付けない人もいます。
何も男性に限ったことでなく、女性でもいます。
というか女性であるが故により一層無遠慮に発言をしてしまう人も。
そういう人たちの口から漏れる言葉の数々を耳にすると、
重いため息とともに悲しい気持ちが胸に渦を巻き、そして問うてみたくなります。
「事案について詳しく調べた上で何か根拠があっての発言なのでしょうか」
「自分の大切な人が被害にあってもそんな事を言うのでしょうか」
そして、「自分が被害にあってしまったら、どれだけ辛い思いをするか」
この点を踏まえたら安易に『被害者も悪い』と言えるでしょうか。
その言葉を口にする前に、一度飲み込んで考えをめぐらせて欲しい。

「こういう人たち含め広く理解を得る為には
どのような報道をしていけばいいのだろうか」

この視点を改めて自分の中で反芻しニュースを発信するということを心がけています。

{水際対策になりますが}
ここでは例として、凶悪犯罪の強姦、強制わいせつのデーターあげます。
発生時間は深夜が多く、
発生場所は、強姦は住宅比が屋外比(道路、駐車場、空き地、公園等)より高く、
強制わいせつは屋外比が高くなっています。
被害者と被疑者の関係については「面識なし」の比率は強姦70%、強制わいせつ90%近く。
(最近は「面識あり」の比率が上昇傾向にあります)

大前提として、悪いのは加害者ですが、
犯罪がなくならない以上、
犯罪にあわないようリスクを減らす努力を私達自身もせざるを得ない状況です。
そういう意味で、
例えば、人通りのない夜道を避ける、なるべく深夜に一人歩きをしないとか、
防犯グッズを常に携帯する。玄関のドアを開けるとき辺りを注意する。
戸締りはしっかりと(夏とか寝苦しくて窓を開けたくなりますが)等々。
また、面識ありが上昇傾向であることも踏まえ、
局面局面での想像力、判断力、瞬発力を働かせる為にも、
日頃から思いつく限りの様々な警戒対策を怠らないということが大切になってきますね。

私が書くことによって、声を発することによって、
知らぬうちに被害者の誰かを傷つけてしまっている場合があるかも知れません。
そう思うととても怖いですが、
淡々と、現状と考えられる対策を伝えていくのが今出来る精一杯のことです。
今回は、誤解を恐れずに書かせて頂きました。

年内は横須賀の担当はこれで最後です。
2007年もどうぞよろしくお願いします。
では!よいお年をお迎えくださーい。

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