対イラクに転換期がくるか
岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)
アメリカも認めるイラク戦略の間違い
『アメリカ議会』が作った超党派の『イラク研究グループ』が提出し
た『報告書・前進への道』が、“世界の新しい動き”になりそうです。
この「報告書」は「イラク開戦以来の数々の過ち」を指摘し、ブッシュ
大統領に「全面的な政策の転換」を提言しています。
具体的には……「来年3月までに大部分の米戦闘部隊の撤退が可能」
「イラクな影響力を持つイラン・シリアとの対話を再開する」「イラク
安定化のためにパレスチナなど中東の包括和平に外交努力を注ぐ」な
どを“柱”に79項目の提言を連ねています。
この「報告書」に、これまで反米的だった『フランス』や『ドイツ』も
賛意を示しています。
「中間選挙」で大敗したブッシュ政権としては、ラムズフェルト国防
長官を更迭し、ボルトン国連大使が辞任しましたが、『米軍の統合参謀
本部』や『国家安全保障会議』でも「イラク政策の見直し作業」を続
けています。
ブッシュ大統領は、これらを纏めて早ければ今年末までと期限を切っ
て「新たな外交攻勢」を仕掛けることになりそうです。
今でも『イラク』で暗躍するのは、オサマ・ビン・ラディンを指導者
とする国際テロ組織『アルカイダ』と思っている人も多いようですが、
「今のイラクの暴力」の主な原因は「宗教対立」です。
かつてフセインを頂点としていた『イスラム教スンニ派』の武装勢力
が、『シーア派』のイラク市民や『クルド族』「中流アメリカ兵」など
に「自爆テロ」「自動車爆弾」「地雷」などで、イラク人だけでも一日に
平均120人もの死者が出る「内線」のような事態です。
これに対し、研究グループの一人・ベーカー元国務長官が「魔法のよ
うな解決策は存在しない」のでしょうが、何とかしなければならない
時期にきているのは確かです。
『イラク』でのアメリカ兵の死者は3000人に達しようとしていて、
それが“アメリカの厭戦気分”を高めています。
「ベトナム戦争の時と同じようだ」という人もいます。
いずれにしても、この年末に「対イラク戦略に転換期がきたことは望
ましいことだ」と思います。
対イラク戦略の転換は、日本にどう影響するか
『報告書・前進への道』は、「来年3月までに大部分のアメリカ戦闘部
隊の撤退が可能」としています。
今、「イラクに駐留するアメリカ兵」は14万人。
一部は「復興支援」などで残ることになるのでしょうが、どれだけが
撤退するのでしょう。
『北朝鮮』にとっては、これは想定外な出来事のように思えます。
これまで『北朝鮮』は、「アメリカ軍にはイラクと北朝鮮の2正面作戦
は出来ない」と高を括っていた感じがありました。
しかし、撤退した兵の大部分が『韓国や沖縄』などに派遣されてきた
ら、どうするのでしょうか。
これが強いプレッシャーになり、「核廃棄」に進む勢いが生まれること
も考えられます。
また、「イラク戦略」の見直しが進む中で、政府は「イラク派遣の航空
自衛隊の駐留延期」を来年7月末までと閣議決定しましたが、これ以
上の延期はなくなるでしょう。
そして、『イラク』が安定すれば、「原油の値段が下がる」ことが見込
めます。
「アメリカの対イラク戦略の転換」は、日本にとっても望ましいこと
だと思います。
「楽観的過ぎる」という批判もあるでしょうか。






