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2006年11月10日

政治家の言霊はどこへ?

坂 泰知のプロフィール坂 泰知
読売テレビ放送報道局解説委員


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 人には人それぞれの「生き様」や「美学」というものがありますから、他人が
とやかく言うことではないかもしれませんが、私自身の尺度に合わせて言わせて
もらうならば、これぞ「格好悪い」ことの典型といったところです。

 ・・・・って、いったい何事かと思われるかもしれませんが、これ、和歌山県の木
村良樹知事の話です。和歌山県発注の公共工事をめぐる談合事件で、知事側近の
出納長が逮捕されたことを受け、知事は今月1日、「任命権者としての道義的責任
をとる」として、向こう1年間にわたり給与の半分を返上することと、退職金を
受け取らないことを明らかにしました。しかし、その翌日、内外の批判に耐え切
れず、知事は遂に辞職を表明。その後、知事公舎にこもり続けているわけですが、
このままでは、世間に約束した「給与と退職金の返上」という話が反故になって
しまいそうなのです。
 というのは、知事が退職金などを返上する行為は「政治家の寄付行為」とみな
され、公職選挙法に抵触する恐れがあります。このため、実際に返上するために
は議会での議決が必要で、知事が「返上する」と言っただけという今の状態がこ
のまま続くとしたら、退職金は満額支給されることになるのです。その額、何と
2889万6000円。

 ではなぜ、議会の開会を要求しないのかということになるわけですが、聞こえ
てきたのは「知事を辞めるにあたって、引越し費用もかかるし、家族のこともあ
るし・・・・」というような話。まぁ、知事の名誉のために付け加えておきますと、
あくまでもこれは知事側近の人間が、知事の心中を忖度して述べた話なのですが、
実際に議会を開く意思を示そうとしないわけですから、勘繰られても仕方がない
状況ではあるわけです。ちなみに、このままでは退職金だけでなく、冬のボーナ
ス335万円と11月の給与121万円も満額支給されることになりそうです。
これも法律の規定によるものなのですが、知事の辞職は申し出から30日後と定
められていて、木村さんの場合は来月2日付け。それまでの中途半端な期間は、
たとえ県庁に出勤しなくとも現職知事としての地位が保証されているのです。一
度は大見得切って「返上」と言っておきながら、いざ辞めることが決まったら「満
額受領」・・・・これを「格好悪い」と言わずにおられましょうか。

 と、何だか悪口を並べ立てているようですが、実は木村知事とは、南海地震に
関するシンポジウムなどで実際に議論したこともあり、自他共に認める「改革派」
としての仕事ぶりに少なからず共感する部分があったため、こんな事態になって、
文句の一つも言いたくなる心境なのです。私は何も、金を受け取るか受け取らな
いかという瑣末なことをあげつらっているのではありません。「政治家としての発
言の軽重」「行政に対する信頼度」・・・・そんな大きな部分で申し上げているのです。
案の定、このニュースが伝わると、世間からは「どうせ、政治家なんて変わり身
が早いんだし、嘘をつくのが仕事みたいなものだからね」というような反応も出
てきています。談合事件そのものだけでなく、政治家や行政全般に対する信頼を
失わせているとしたら、その罪は大きいと言わざるを得ません。

 木村知事はこれまで一貫して「事件には関与していない」と表明しています。
そして、この原稿を書いている今日11月9日、大阪地検特捜部は、知事公舎へ
の強制捜査に着手。木村知事の関与について、本格的な捜査が始まりました。身
の潔白を訴え続けたその言葉まで「嘘」だったというような事態にならなければ
いいのですが・・・・。

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